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その15:開かれし封印

 誰も知らない城の地下の地下。

 光が全く射し込まない深く暗い部屋の中。

 その何の飾り気の無い質素な部屋の真ん中にポツンと佇んでいる大きな木箱がカタカタッと小さく、でも何度も動いている。


 『カタカタッ』が『カタカタカタカタッ』に変わり、『カタカタカタカタッ』が『ガタガタガタガタッ』へと変わっていく。


 木箱の揺れは激しくなり、ガタンッという大きな音と共に木箱の蓋が吹き飛んだ。


 蓋の無くなった木箱の中から腕が伸びてきて、縁に手を掛けた。

 ゆっくりと箱の中からナニかが出てくる。ナニかは立ち上がると足を上げて箱の中から出てくる。


「フフ………」


 完全に箱から出てきたナニかは小さく笑う。そして暗く、何も見えない筈の部屋を見渡す。


「フフフ………ハハハハハ!」


 ナニかは部屋を見渡し終えると嬉しそうに、楽しそうに、愉しそうに、快さそうに、心地良さそうに、喜びの、悦びの、歓びの、慶びの声を、笑い声を上げる。


「ハハハハハ! 懐かしきかな、我が城よ! (オレ)は再び舞い戻ってきたぞ! 忌々しき封印を打ち破り、(オレ)は返って来たのだ! フハハハハ!!」


 高らかに宣言するように笑い叫ぶナニか。


「ん?」


 他の場所に何か自分に似たモノを感じ、突然笑うことを止め、真剣な顔に変わる。そして右手を前に出し、掌を上に向ける。


「……………」


 とても小さな声でぼそぼそと呟く。すると一瞬、そう、ほんの一瞬だけ部屋に光が満ちた。光が収まると掌の上に黒い水晶玉が現れていた。

 ナニかは黒水晶(それ)を覗き込む。


 黒水晶(そこ)には床に並べられた四つの簀巻きとそれらを見下すように椅子に座った少年が映っていた。


「ククク……成る程。そういう事か」


 ナニかが掌を閉じると黒水晶は砕け散った。


「目覚めていきなり楽しめるとは、(オレ)も運が良い…………ククククク」


 暗く、何も見えない筈の部屋なのに迷わずに扉へと一直線に歩を進め、開け放った。

 ナニかは嬉しそうに部屋を後にした。


「待っていろよ、同族。今からそちらに行ってやるから。そして(オレ)を楽しませてくれよ………フフフフフ……フハハハハ!!」


 と、言葉を残して。




「ふ……ふぁ……ぶわっくしょん!! チキショー」


 クシャミの出る瞬間、何とか顔を横に向け、前に居る―――いや、転がっている四人への直撃を回避した。

 直撃してたら後々が大変な事になるからな。


「汚いなぁ」

「チキショーってオッサン臭いよ、お兄ちゃん」

「ちょっと見苦しかったです」

「……ボク達にかからない様にしてくれたのはありがとう。でも、手を使って欲しかったな」


 …………クー以外はかけたら良かったか。

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