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その14:光は何処へ?

「今日は何をしようか?」


 部屋の中でポツリと呟く。

 やることが無い上に、テレビやゲーム、マンガや小説、更にはパソコンも何も無い。現代の若者である俺には辛いものがある。

 ……そういえば俺と同じ現代っ子の(ひかり)はどうしているんだろうか?


 ちょっと観察してみるか。


「あれ? 光は何処に行ったんだ?」


 光の部屋まで行ったが、気配が無かった。


 はて? 昼までまだ時間があるのに……

 やれやれ、ここは俺が探すしかないのか。折角愛しの御兄様が観察してやろうと思ってたのに…手の掛かる妹だな。


 そして俺は光の捜索を始めた。




「光を見たか?」


 偶々遭遇したクーに聞いてみた。


「……ううん、見てないよ。何かあったの?」


 クーが心配そうな眼差しで逆に問い掛けてきた。


「いや、別に何も無いよ。ちょっと用事があるだけだから」


 ポンポンと頭を軽く撫でる。


「……そう? ならいいけど」


 合成魔法の研究の合間の休憩中だったクーと別れる。


 さて、手掛かりはまだ無し。まぁ、始まったばっかりだからそこまで気にすることはないな。


 特に落ち込むこと無く歩き出した。



「ん? あれは……」


 廊下を歩いていると、目の前に揺れる紅いポニーテールが現れた。


「リファ」


 足早に近寄り、肩に手を置くと同時に声をかけた。


「何してんだ? って聞くまでもないか」


 リファの右手には木剣が握られていた。


「一緒にやる? それならもう一本取ってくるけど」


 やる? って聞きながら木剣の切っ先を顔に向けるな。


「悪いけど今はちょっと無理だな。用事があるから」


 本当はその用事すら暇潰しなんだけどな。


「そっか。じゃあまた今度頼むから」

「うぃ〜ッス」


 リファはそのまま中庭へと歩いていった。




「あっ! リファに光を見たかどうか聞くの忘れた!」


 リファと別れて結構経ってから突然思い出した。


「しくったなぁ……」


 大きな溜め息を一つ吐き、それから意識を前向きにする。



「何処に居るんだよ?」


 頭の中で次々と光が居そうな場所を挙げていく。そして実際に調べた場所を次々に消していく。それから居なさそうでも調べた場所を挙げていく。


 あれ? 調べてない場所無くね?

 いや、トイレとか厨房とかは見てないけどさ。


 う〜ん……どうしようか?


「ティアに聞くのを最後にしよう」


 知らないって返ってきたらリファの相手にでもなるか。


 魔王部屋目指して速度を上げた。



「ん?」


 部屋の前に着いて気配を感じた。


「んん〜?」


 扉に耳をくっつけて、中の様子を探る。


 だが、余り物音がしない。

 俺は扉を少しだけ開けて部屋の中を見た。


「―――っ!!」


 驚愕した。余りの衝撃的な光景を目の当たりにして一瞬目を離した。

 まったくもって意味はないがキョロキョロと周りを確認する。そしてもう一度覗き見る。


「……………」


 いやいやいやいや、ないないないない。


 何があったんだ? 何故あんなことに?


 部屋の中ではティア、リファ、クー、光の四人が俺のベッドで枕を奪い合っていた。


 つーか研究と鍛練はどうした?


 あ、おいっ! 畳んでた俺の寝間着をぐちゃぐちゃにするな。

 ………何? その顔。畳まれてた寝間着がまだ未使用で俺の匂いがないからってそんな顔するな。それよりポイ捨てした寝間着を綺麗に畳んで元の位置に直せや。


 なぁ、これって怒っていいんだよな? いや、駄目だとしても俺は怒る。


 ククククク。今の俺は誰にも止められない。

 右手を素早く動かす。視線は四人に向いたまま。


「『“スランバーフォグ”』」


 部屋の中が徐々に霧に包まれていく。

 四人はその場に倒れて動かなくなる。


「ククククク」


 霧が晴れると同時に中に入り、順番に簀巻きにしていく。出来上がった四つの簀巻きを横に並べて頭の方に椅子を持ってきて座る。


「さて、どんな反応を見せてくれるのかな?」



 ククククク、と黒く妖しい笑みを浮かべてまだ寝ている四つの簀巻きを眺める。



 厨房で昼飯が出来上がった頃に三つの悲鳴が城中に響き渡った。

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