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その12:ご〜せ〜まほ〜

 あの世へと旅立つボロ雑巾――自称勇者のゴミ野郎――を見送った次の日。朝起きると、目の前にクーがいた。


「………どうした? 何か用か?」


 寝起きで覚醒しきっていない、ぼんやりとした頭のまま、訊ねてみた。


「……何をしたの?」

「何が? もうちっと詳しく言ってくれないと判らないぞ?」

「……昨日、何をしたの?」


 昨日だけだと色々と候補が上がって、どれについて聞いてるのかが判断出来ない。

 あれか? いや、これか? はたまたあれ? ひょっとしてこれ……なのか?

 眉をひそめて思考する俺を見て、クーは更にヒントをくれた。てかほぼ答えを教えてくれた。


「……玉座以外が大惨事。色んな所に広い範囲に焦げてるトコやかなり狭い範囲で焦げてて、なおかつ穴があいてるトコ、更には凍ってるトコまであった。何をしたの?」


 そうなんだよな〜。俺もあそこまで凄いことになるとは思わなかったんだよな〜。ティアに土下座したけど軽くボコられた後に説教された。………コワイ。

 まぁ、それは今は置いといて。


「アレはちょっとした実験の結果なのですよ。クーさんや」

「……実験? どんな?」

「いや、なに、ちょっと魔法を混ぜてみたんですよ」

「……魔法を混ぜる?」


 小首を傾げるクー。

 ちきしょうっ!! やっぱかぁいいぜ! クー!!

 心でそう思いながらも、話を続ける。


「二つ以上の魔法を同時に詠唱して、より高い効果を得られるようにする。それの実験」

「……どうやるの?」


 あ、コレヤバい。クーの瞳がキラキラ輝いてる。

 魔法使いとして、俺がした魔法を混ぜる、という行為に興味津々だ。


「場所的に無理です。はい。」


 魔王部屋(ここ)じゃなくても同じです。大惨事になります。


「……ちょっと待ってて。今用意するから」


 指先に魔力を集めるクー。

 ………スゲー。クーの手が殆んど見えない。はえー。これが経験の差なんだな。


 ちょっと凹む俺。

 うん、今日から秘密特訓だな。


「……出来た。『開け、異次元の扉。“ディメンションルーム”』」


 おおおぉ、いきなり目の前に扉が出現した。


「……この中なら大丈夫。周りに被害が出ないよ」


 扉を開け、中に入っていくクー。

 後を追うように俺も入っていった。




「おおぉぉ、スゲー! 何だよ!? 何だよ此処!! うおぉっ、スゲー!!」


 テンション揚がるわ。

 何、此処。かなり表現しにくいけど、とりあえず言わせて。テンション揚がるぅ!!


「……早く見せて。魔王様」


 テンションが加速度的に上昇してる俺に催促。テンションのアクセルを踏み外し、そのまま元の高さまで落ちてくる。


「あーうん。そうだな」


 そこで気付く。

 寝起き、まだ朝飯食べてない、つーか眠たい。

 でも、クーを見るとそんな戯れ言をほざくわけにはいかない。


「ではいかせていただきます」


 右手で“テンペスト”、左手で“ブリザード”、口で“フレアレイン”を詠唱する。


(中略)


「『“フレアレイン”』」


 詠唱を終えたのに発動しない。それがクーにとっては謎だった。


「まだだぞ、クー。ここからが重要なんだ」


「『降り注ぐは炎の雨、吹き荒れるは猛吹雪、乱れ落ちるは迅雷』」


「『三つの災害が起こる時、合わさり混ざりて更なる大災害へと昇華する』」


「『“トライディザスター”』」


 大惨事再び。って言っても俺とクーは無傷だし、この部屋もなんのダメージを受けていない。

 要はアレだ。大惨事の原因再び。ってことだ。


「……綺麗」


 クーはポツリと呟いた。

 確かに、降り注ぐ真紅の炎に雹混じりの白い旋風、ランダムに発生する閃光。凄く幻想的で綺麗と言えなくもない。


「どうだ?」


 まだ止まない嵐を見ながら聞いてみた。


「……凄い。魔王様、凄い」


 クーは嵐に目を奪われたまま答えた。


「……魔法を混ぜる、なんて思い付かなかった」


 そんなにキラキラ輝いてる瞳で見ないで! 俺だってパクっただけだもん。ゲームとかにある合成魔法使えないかな〜? 的なノリでやってみただけだから!


 純粋な尊敬の眼差しにジワジワとダメージを与えられる俺。


「要は同時に詠唱して、纏める為に更に新しい詠唱をしたらいいんだ。多分」


 多分、と言ったのはもしかしたら合成できない魔法があるかもしれないからだ。


「……ありがとう、魔王様。これで魔法の更なる高みを見れそう」


 クーの顔は無邪気で、嬉しさが溢れる笑顔だった。


「ちなみに新しい詠唱は自分で創らないとダメだぞ?まぁ、クーなら言わなくても解ってると思うけど」




 魔王部屋に戻ってくると同時にクーは何処か――多分自分の部屋だろう――へと駆けていった。


 さて、俺は朝飯でも食うか。

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