ペペロンチーノとゲームと人生
日記も書いたことがないのにエッセイが書けるかと思いながら書きました。
ペペロンチーノを作った。
最初はひどいものだった。オリーブオイルの分量が素人目にも多かったし、加熱の時間が長すぎて唐辛子が焦げ付いてしまった。更にはパスタの茹で時間が短く、粉っぽいのを食う羽目になった。
家で出すのと店で出すので評価が二分されるだろう、そんな狭間の出来のペペロンチーノに、私は珍しくも気持ちを挫かれることがなかった。寧ろ「次こそはもっと美味いものを作ってやるぞ」という勢いを得たのである。久しぶりのことだった。
そうして今日、二度目の挑戦に臨んだのである。
劇的勝利であった。材料の分量はほぼ完璧といって差し支えなかった――敢えて言うならニンニクが少なかったが、好みの範疇だった――し、唐辛子を焦がすこともなかった。パスタも完璧な茹で具合で、味付けも絶妙の域に達していた。(これは個人の感想であり、実際の味を保証するものではありません)
私はそのペペロンチーノと共に、見事勝利の祝杯を挙げたのである。
ペペロンチーノを啜りながら、こう考えた。ここに、ゲームと人生の違いがあるのではないかと。
ゲーム――中でも特に解りやすいロールプレイングゲーム――においては、経験値は敵を倒すことによって手に入る。弱い敵を沢山倒してレベルを上げれば、強い敵にも打ち勝てるようになる。これは言い換えれば、小さな成功を重ねて大きな成功を掴むということになるだろう。
では人生においてはどうか。確かに、このゲーム的やり方も成り立つように思えるが、もう一つの方法がある。それは、失敗から経験値を得るというやり方である。私は失敗から経験を得て、美味いペペロンチーノを作ることができたわけだ。
これは殆どのロールプレイングゲームではできない手法である。なぜなら、ゲームでは戦闘中に死ぬと、その戦いにおける経験値は手に入らないからだ。死ねば最後のセーブ地点にリセットされ、そこから先で得た経験値は破棄される。ここがゲームと人生の異なる点である。
私はこの、ゲーム的手法に慣れ過ぎていたのかもしれない。失敗を恐れ、小さな成功を重ねる快感に酔っていたのだ。これからは、積極的に挑戦し、失敗を重ねていこうと思う――ダークソウルシリーズのように。
読んでくださり、ありがとうございます。
もし興味があれば、他の作品も読んでいただけると大変励みになります。