27話 南方都市へ
港町ポートで数日過ごした一行は、もっと情報を集めるために南方都市へと向かう事にした。
マーカスの支店が協力してくれた事もあり、スムーズに準備は整った。
あとは海路を行くか陸路を行くかである。
港町ポートから南方都市までは、海路なら2日で陸路なら倍の5日である。
急ぎの旅なので海路で向かう。
今回はダイラス船長のヒーロコック号ではなく、マーカスの商会所有の中型船である。
それに乗り南方都市へ向かう。
幸い今回は魔物に襲われずにすみ無事に南方都市辿り着いた。
「港町ポートがだいぶ小さく感じるな」
「ホッホ、それはそうでしょうね。南方都市はアルカランス王国随一の交易都市でもありますから。それに他国からもたくさん船が来ますので、港もそれに合わせて大きくする必要があります。何せ他国の船は大方が大型船ですからね」
マーカスが色々と説明してくれる。
話している間にもケイン達の乗る中型船は港に近付いて行く。
港での停泊料を払い港に停泊すると、早速船から降りる。
その際に船長にはお礼を忘れずに言っておく。
「さて、先ずは私の商会に行きましょう。そこで情報を仕入れた後に宿に向かいましょう。それで南方伯様にはお会いになりますか?なるのでしたら面会の予約を入れておきますが」
「そうだな。どうしますか?」
「予約を頼みます。後手後手に回ってしまったので、ここいらで何としても巻き返しを図りましょう。それにもし南方伯までもが、敵側に与したりしていれば、私共の勝ち筋はほぼ潰えたと言えますので」
「畏まりました」
軽く今後の予定を決めて、マーカスの商店に向かう。
その途中密偵らしき者の姿を見たケインは「先に行っててくれ」とだけ言い離れる。
影を操作して黒い外套にして、目深くローブを被る。
そして密偵の真後ろへ移動して、物陰へ引き摺り込む。
「ぐぅ、な、なんだ」
頭に手を置いて、直接記憶を盗み見る。
力加減が繊細で失敗すると、廃人にしてしまうがケインは気にせずに使う。
「なるほど、第三王女マーリア・エルッセイ・アルカランスの手先か。他の仲間は……ふむ、結構な数がいるな。だが、南方伯の方が上手か」
どうやら何度となく、この密偵達は南方伯の居城に侵入しようとしたが、今のところ全て防がれているらしい。
「さて、邪魔な密偵を全て狩るか」
ケインは自然な動きで密偵達に近付いては、一人、また一人と狩って行きその都度記憶を盗み見る。
時折、隊長格の者を捕らえられたので良い情報も仕入れられた。
因みに、密偵達の記憶を弄ってケインの事は記憶から消しており、何を見ても異常なしとしか送れない様に、暗示も掛けておいた。
ある程度狩った後、ケインはマーカスの商店に向かう。
既にマーカス達は店に着いていた。
「待たせたな」
「野暮用は済んだの?」
ルーラの問いに頷いて答える。
「そう、なら良かった」
マーカスは店員と何やら話していた。
そして話が終わったのか、此方へ向かって来る。
「皆さん。話が纏まりましたよ。先ずは宿に行ってゆっくりと旅の疲れを落としましょう」
マーカスに案内されて一軒の宿に到着する。
「ここは私がこの南方都市に来ると、必ず寄る店の一つですよ。殆どは商店で寝泊まりするのですけど、時々此方の宿へお世話になる事もあるんです」
宿屋の看板には、踊る猫亭と書いてある。
「あら、マーカスさん。お久しぶりですね」
宿屋の中に入ると、給仕の女性が話しかけて来た。
「こんにちは。女将さんはいるかな?」
「はい、ただいま。女将さーん!」
給仕の女性が呼ぶと奥から、猫族(獣人の一種)の女性が現れた。
「おお、マーカスさんニャ。久しぶりだニャ」
「ええ、お久しぶりです。タバサさん」
「今日は泊まって行くニャ?」
「ええ、そのつもりです」
「わかったニャ」
丁度空き部屋があり、問題なく泊まれた。
南方伯と面会するにあたり、それ用の服を持っていなかったので、急いで服飾店に行き採寸をして、服の作成を依頼する。
古着以外は基本オーダーメイドである。
作るのに平均2週間は掛かるので、急がないと行けない。
今回は特急料金を払い、1週間で作成して貰う事になった。
それに合わせて、南方伯へもアポイントメントを
オルベラン商会の会頭マーカスとして、取ってもらう。
本当にマーカスには世話になりっぱなしの、エミリア達である。
それにしても、エミリア達の容姿を見て、服飾店の気合の入り用は凄まじまかった。
ケインは疑問に思ったが、マーカスが皆さんお綺麗ですから。と言われたが、確かに綺麗ではあるが、そこまで騒ぐ程か?と思った。
これは彼が育って来た環境による。
ケインは何処のギャルゲーの主人公だって、くらいに周りの女性は綺麗どころばかりであり、ケインが顔出しせずに超能力で、億万長者になれば色々な女性が言い寄って来たのである。
その為にケインの価値観は一般とは異なる。
その態度にマーカスは、ケインの素性を勘繰る。
だが、変に詮索して関係を悪くしたくないので、詮索することを直ぐにやめた。
そして、踊る猫亭で一週間過ごした。




