10話 村からの依頼(2)
「あちゃー。見つかっちゃった」
ルーラの言う通り後ろを振り返ると、巨大な蜘蛛がこちらを見ていた。
「じゃあ、ボクがサクッと倒して来るから彼らをお願いね」
「わかった」
スラッと腰から細剣を抜いて巨大蜘蛛であるトワルスパイダーに立ち向かう。
まるで一陣の風が吹いた様に、圧倒的なスピードでトワルスパイダーを翻弄しながら、ヒットアンドアウェイで斬り裂いて行く。
トワルスパイダーは必死に脚を動かして、ルーラを捉えようとしているが追い付いて居らず、脚を一本、一本切り取られて行く。
そして戦闘開始から僅か3分程でトワルスパイダーは討伐された。
「さて、終わったわね。早く行きましょう?ビックスパイダーがこの騒ぎに集まって来たわ」
確かに奥の方からワサワサカサカサと音が近付いて来る。
この音から判断するに、少なくとも三桁近くはいそうである。
素早く生き残りと遺体を念力で浮かして運び出す。
その時ルーラが「へぇ、そんなスキルがあるんだ」と呟いていたが無視する。
洞窟から出るとファイアーボール(威力調節済み)を撃ち込んで行く。
すぐに巣に引火して燃え広がって行く。
豪快に燃えて行き中にいたビックスパイダー達が燃えて行く。
「これで依頼は完了だな」
「ええ、さて遺体は身分の分かる物は取って他は埋めてしまおうか」
穴を魔法で掘りそこに8人の遺体を入れて埋葬する。
6人を念力で浮かしながら村へと戻る。
だいぶ衰弱している様だ。
村へと戻ると宿屋に先に行き部屋に6人を寝かせる。
事情を話すと宿の女将が気前よく部屋を貸してくれたので、全員をベッドに寝かせる事が出来た。
6人を宿に置いた後村長の所へ向かう。
「依頼は完了したよ」
「おお!そうですか、ありがとうございます」
「うん、それで捕らえられていた人達が目を覚ますまで暫く厄介になりたいんだけど?」
「それは構いませんよ」
村長からの許可も貰えたので、目を覚ますまではこの村で厄介になる事にした。
その後は依頼料を貰い宿に戻る。
数日間村で滞在して、時折やって来る魔物を暇つぶしがてら退治して、素材を剥ぎ取り残った肉などは村に渡した。
すると漸く一人が目を覚ました。
ポッチャリとした50代ほどの男性である。
「此処は………」
目覚めた男に簡単に事情を説明する。
「それは危ないところを助けて頂きまして、ありがとうございます。自己紹介がまだでしたな。私は商人をしてますマーカスと申します。いやはやまだまだ若い者には負けないと、意気込んで無理するものではありませんな。無事に商会に戻れば会長の座を息子に譲って隠居した方が良さそうだ。本店はアルカランス王国にあるのですが、御二方はどちらへ?」
「丁度ボク達もアルカランス王国に向かうところだよ」
「ほう、ならばお礼をしたいので是非商会によって下さい。ところで私の他に生き残りは?雇った冒険者が居たはずですが?」
「うーん。冒険者っぽい遺体は無かったかな」
「そうですか」
「それで商会ってどの商会なの?」
「オルベラン商会と言います」
「えっ!?オルベラン商会ってあのオルベラン商会?」
ルーラが驚く。
「なんだ?有名なのか?」
この世界の事は全く知らないケインはそうルーラに問い掛ける。
「ケイン知らないの?それに驚きなんだけど、この辺で知らない者は居ないって感じの商会だよ?」
「俺はこの辺の出身ではないからな」
「そうなんだ。えっとね、オルベラン商会はアルカランス王国で一、二を争うほどの大商会でね、アルカランス王国の周辺国にもしっかりと根をはる商会だよ」
「そうなのか」
「ええ、まあ手広くやらせて頂いています。ところで格好から察するにお二人は冒険者で?」
「あっと、自己紹介がまだだったね。その通り。ボク達は冒険者でミスリルランクのルーラとこっちは」
「ケインだ。シルバーランクだ」
「おお!なんと高位の冒険者の方でしたか!それで御礼をお渡ししたいのですが、あいにく手持ちは無いので」
「ああ、別に良いよ。御礼を期待して助けた訳じゃないからね」
「それで厚かましいのは重々承知ですが、オルベラン商会の本店まで護衛をお願い出来ますでしょうか?勿論報酬も店に着き次第お支払いしますので」
「まあ、目的地も一緒だしボクはいいかな」
「別にいいぞ」
「おお!そうですか!ありがとうございます」
「でも出発は待っほしい。他にも助けた人がいるから、その人達が目覚めてからだね」
「ええ、わかりました。では私はそれまで旅の準備をして参ります」
そう言ってマーカスは宿屋から出て行った。
「準備をするって言っても金があるのか?」
「大丈夫じゃない?あの人靴の中とかに少量だけどお金を入れてたっぽいからね」
「ふーん」
興味なさそうにケインはそう言ってベッドに横になる。
「他の5人が目覚めるまでどうする?」
「ボクは周辺を散歩してくるよ。魔物がいたら適宜狩って行くよ」
「親切だな」
「まあね。ボクも昔はこう言った村出身だから、魔物の怖さは知ってるのさ。だからこうやって村に泊まった時は出来るだけ狩る様にしてるんだ」
「手伝おうか?」
「いや、大丈夫さ」
そう言ってルーラも部屋を出て行く。