プロローグ
俺は息をのんだ、目の前には何もない草原が広がる、俺はなぜこんなところにいるのだろうか…記憶が曖昧だが、確か俺は近所の図書館で本を読んでいて…
そうだ、たしか俺は見たことのない文字で書かれた小さな本を本棚の奥で見つけて…
「起きましたか西城 登也さん、いや、マスター、気分はどうですか?」
突然声をかけられて振り返るとそこには白いワンピースを着た、腰まである長い青い髪の少女が立っていた。
「マスター?それになぜ俺の名前を知っているんだ?君は…何者なんだ?俺はなぜこんなとこにいるんだ?」
「はいマスター、マスターの事なら何でも知っています、私はグリモワールシリーズの一つアルマンダルそしてここは私の作り出した空間です」
「グリモワールシリーズ?アルマンダル?なんの話だ?」
「はい、私はグリモワールシリーズの一つ、アルマンダルの原本、つまり私は魔導書ですよマスター」
魔導書?ということは本なのか?しかしどう見ても少女にしか見えない、それに契約とかマスターとか何の事だかさっぱり分からない。
そんなことを考えながら、ぼーっと少女を見つめていると、少女は俺の考えていることに気づいたのか、説明を続け始めた。
「この姿は仮の姿、マスターとの会話を円滑にするためのものですから特に意味はありません、なので言ってくだされば、マスターのお望みの姿になれますよ」
「契約とはどういうことだ?俺は何かした覚えはないが?」
「私と契約したためマスターは魔導士になりました、それに魔導士が魔導書を選ぶのではなく、魔導書が魔導士を選ぶのです、端的に言えば、私が…その…マスターに…一目ぼれしたのです…」
少女は恥ずかしそうにもじもじしながら、頬を赤らめている。そんな顔をされるとこっちまで恥ずかしくなってくる…
「とはいえマスターは正規のルートで魔導士になったわけではないので、これがバレると魔導書は剥奪されてしまいます…」
「なんだと?!それってまさか…命を狙われたりとかするのか?」
「まあ…どうしても魔導書を手放さない場合は…その可能性も…」
おいおい、これはまずいんじゃないか?知らないうちに魔導士にさせられ、そのうえ命を狙われるだと?冗談じゃ———
「迷惑でしたか?…私の気持ちは…私との契約は…マスターにとって、迷惑でしたか?…」
少女は涙をこらえながら、必死に笑っていた…その顔はとても可愛らしく、そしてとても悲しかった。はぁ…仕方ない…か…
「そうだな、勝手に魔導士にさせられて、そのうえ命まで狙われる、そりゃ迷惑だな…でも…お前の気持ちは…迷惑じゃない…と思う…」
「しかし、命を狙われるのはごめんだ、だから一つ聞きたい」
「なんでしょうマスター、なんでもお答えしますよ」
「さっきお前は正規の方法じゃないと言ったな?じゃあ正規の方法とはなんだ?」
「はい、正規の方法とは魔導学院に入学し魔導士になるという方法です」
「それは、俺も入学可能か?」
「それは———」
「よかろう!入学させてやる。いやぁ~魔導書の不正利用を見つけたから来てみれば、なかなかの逸材じゃないか」
突然目の前が光り気づいた時にはどこかの部屋の中だった、そして目の前には椅子に座った女性が一人、顔立ちは整っていて赤い髪の毛は大きくはだけた白いシャツの胸元あたりまで伸びている。
「なっ!私とマスターの世界に邪魔が入るとは…どうやって私の空間に、割り込んだのです!」
「簡単さ、私の魔導書もグリモワールシリーズの一つホノリウスの原本だからな」
「ホノリウス!?お気を付けくださいマスター!この女…かなり強そうです…」
「なに!そんなに強いのか!ところでアルマンダル、まだグリモワールだの魔導書だの言われても、まだ説明されてないぞ?」
『え?』
さっきまで言い争っていた二人が同時にこちらを振り返る。
「あぁ!そうでした!申し訳ありませんマスター!」
あたふたしているアルマンダルをみて赤い髪の女性が笑い出した。
「はっはっは!なんだお前さんまだ何も知らんのか!まあいいさ、それも含めて学ぶのがうちだからな!」
「学ぶ?なんのことだ?そういえばさっきも、入学がどうとか言ってたな」
「そうだ、ここはエレノワール学園、世界一の魔導学院で、今日からお前さんが通う学校、そして私がここの学園長だ!」
こうして、俺の学園生活が始まった———