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2話 いざEクラスへ

 部屋には沈黙が流れてる。

 やっぱりだ。

 私がこの事実を伝えるとみんなこういう反応をするんだ。

 治癒魔法なんて誰も必要としてないんだから。


 技術の発達により、回復は治癒魔導士が行うよりも回復系のポーションなどを使った方が便利だし楽になった。

 それに、戦場の最前線では戦うことのできない治癒魔導士はお荷物的な扱いを受けることもある。

 だからこそ、治癒魔法しか使えない者の需要はないのだ。

 治癒魔導士は戦う力も求められる時代なのである。

 もちろん、戦場全域に回復を行き届かせるような力があれば話は別だろうけど。

 残念ながら、私にはそんな聖女様のような力はない。

 ごく一般的な治癒魔法しか使えないのだ。


 私のことを知ったエレナさんは失望しただろうな。

 静かになった部屋の中で、エレナさんが改めて口を開いた。


「治癒魔法、素敵な力じゃない!」

「え……? でも、私は治癒魔法しか使えないんですよ? それも低級の治癒魔法です」

「フフフッ」


 私の予想とは違って、エレナさんは笑顔だ。

 そして、何かを納得したようにウンウンと頷いている。

 無理に笑っているようには見えないし、こんな反応初めてだから、少し困惑してしまう。


「治癒魔法は傷つけるためじゃなく、誰かを護るために使うことができる魔法よ。とても優しい力なの。確かに、マリーちゃんは周りの人とは違うかもしれない。だけどね、こんな殺伐とした世界の中で、治癒魔法だけを使えるマリーちゃんはとても優しい心を持ってるってことなのよ」

「で、でも、私は、私の魔法は誰の助けにもならないです」

「そうかな? 私にはマリーちゃんがいろんな人の助けになっている姿が目に浮かぶわよ。自分に自信を持って! あなたは素敵な魔導士なんだから」

「で、でも……」


 なんでだろう。

 エレナさんの言葉を聞いてたら、目頭が熱くなってきた。

 頬を何かが伝っているのが分かる。

 涙が溢れて止まらなかった。

 お母さんとお父さん以外からこんなに優しい言葉をかけられることなんて今までなかった。

 初めて私のことを理解してくれる人に出会えた気がしたんだ。


 エレナさんは泣きじゃくる私の側に来て、優しく頭を撫でてくれた。


「ここでいっぱい泣いていきなさい。これから先、辛いことはきっとあると思う。でもね、自分らしさを見失っちゃダメよ? あなたはあなたなの、他の何者でもないわ。周囲の声に惑わされないでね」

「……はい」


 それから、暫く私は泣き続けた。

 結構長い時間だったと思う。

 他の人に迷惑かけちゃったかな。


 私が泣き止んだ後、私のクラスが告げられた。

 Eクラス。

 こればかりはどうしようもない事実なのだろう。

 エレナさんも申し訳なさそうにしていた。

 でも、私にはクラス分けなんて些細なことだった。

 だって、自分らしく生きていくことが大切だって知ったから。


「今日はありがとうございました!」


 エレナさんに感謝を伝えて、部屋を後にする。

 部屋を出ようとしたとき、エレナさんが私の背中に声を掛けてくれた。


「いつでも私のところに来ていいからね! 職員室にいるから!」

「はい!」


 私はEクラスへと向かって歩いていく。

 その足取りは軽かった。

 まるで羽が生えたみたいだ。


 これからの学院生活は自分らしく過ごしていこうと思う。

 私は私なのだから。

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