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樹属性魔法の使い手  作者: 深海 和尚
王都魔法学校入学編
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パーリー申請

ブックマーク&評価ありがとうございます。


 昼飯を済ました俺は待ち合わせの場所へと向かうことにした。

 待ち合わせの時間はお昼を過ぎ、日が最高高度に達した頃だ。


 外は今日も人で溢れていた。

 いたるところから陽気な音楽が流れ、多くの笑い声や商売人の活気に満ちた声が聞こえてくる。


 どこもかしこも楽しそうだ。そりゃそうだ。

 なんたって毎日フェスティバルだからさ。


 しかし俺は脇目も振らずに真っ直ぐギルドを目指す。

 一度誘惑に負けてしまったならば、きっと今日はギルドへ辿り着くことはできなくなってしまうからだ。

 俺は遊びたいのだ。

  遊びまくりたいのだ。

  前世で何もできなかった分を取り返したい。

  倍返しだ。

  いや、それはちょっと分からない。


 心が折れそうになるのを何度も耐えながら、何とかギルドへと俺は到着した。

 まだ見慣れない入口をくぐり抜け中へと入ると、外とは全然違う空気が漂っていた。

 外はフェスティバル。もちろん雰囲気が違うのは当たり前なのだが、それでもいつもと違う。なんだか暗い雰囲気だ。

 なんだ?


 俺は視線走らせる。

どうやらマホンはまだ来てないようだ。


「すいません。どうかしたんですか?」


 俺は近くにいたガチムチ系のおねぇさんへ話しかけた。

 イスに腰を下ろし、指でテーブルをトントンと叩いている。


「ああ? ガキがこんなところで何してんだ?帰れ帰れ」

「あ、すいません。僕はこういう者です」


 俺はギルドカードを取りだし見せる。


「チッ、冒険者かよ。 子供のくせに。……まあいい。あのな、レッドオークの件は知ってるか?」 

「はい」

 子供のくせにってなんだよ。

 ガチムチ系のくせに。


「そうか。でだ、なんでそんな奴が突然現れたのか調査が入ったわけだ。それに誰があれを倒したのかも含めてな。第一発見者の"黄昏せんべい"のメンバーが誰も何も見てないからな」

「黄昏せんべい?」

「ああ。男女五人でパーティーランク『鉄』の連中さ」


 ピュール達のことだな。

 ランクは鉄か。というか、個人ランクだけじゃなく、パーティーランクも存在するんだな。


「まあ誰が倒したかはこの際どうでもいいんだが、その調査の結果、森の南西奥深くに新たなダンジョンが発生しているのがわかったんだ」

「ダンジョン?ですか……」

「そう。 それでギルド側はそのダンジョンが怪しいとふんだんだ。 まあ誰が見ても怪しいよな。 そして国へ報告し、国からギルドを通して正式に調査依頼が入った。

 報酬はあそこに貼ってあるのを見れば分かるが、結果次第では破格といえるものだったから、すぐに数名の冒険者といくつかのパーティーが依頼受注して向かったわけだ」

「ふむふむ。 でも何でこんな雰囲気なんです? みなさん何だか静かですよね」


 こうして話をしている今も、ギルド内には陽気な雰囲気などはなく、特に受付嬢なんてバタバタしているように見える。

 見たところ、ダンジョン依頼の受注作業に追われて忙しいということはないようだし。というか並んでいる冒険者なんて一人もいないしね。


「……戻ってこないんだ……一人も。 全員消息不明になっちまった。 それで…焦ったギルドは、国からの依頼とは別に探索に出た冒険者の捜索依頼を出したんだ。指名依頼もだしているんだが誰もいなくてな。高ランクの奴らはみんな出払ってるんだよ。まあどうしようもない状況だな」

「そうですか……それは心配ですね…話を聞かせてくれてありがとうございました」

「ああ。 お前はダンジョンには近づくなよ」


 シッシッと手を振るガチムチ系。

 態度はちょっとあれだが、根は優しい人だな。


 俺はダンジョンの依頼内容が気になり、それを見に行こうと一歩踏み出したその時、ちょうどマホンが入ってきた。


「ヴェル、悪いっ! お待たせ!」

「お、おう! 俺も今さっき来たとこだ」


 なんだこれ。恋人の待ち合わせか。


「そうか。ならよかった。 しかし何だか静かだね…いつもと雰囲気が違う…? 人が少ないのか」


 すぐにマホンも気がついたようだ。

 まあこれだけ人が少ないならすぐ分かるか。

 俺とマホン以外にはガチムチ系のおねえさんと、他に数名の冒険者しかいない。

 あ、あと受付嬢が二名だ。


「ああ。実は━━━」


 俺はガチムチ姐さんに聞いたことをマホンに教えた。

 ダンジョンが発生したこと、冒険者が消息不明であることをざっと話し、聞き終えたマホンは沈痛な面持ちに、……はならなかった。

 逆に目をキラキラさせ、少し興奮?しているようだ。

 プレゼントを貰って、早く封を開けたがっている子供のようである。と、いうことは?


「ヴェル! 行こう!」


 左様でございますか。

 ……まじか。


「えっ、行くの??」

「あったり前だろうがっ。 ダンジョンだぞっ!冒険者になったからには、行きたいランキング第一位の場所だろ!」


 しらねーよ。そんなランキング知らねーし、そもそも、あなたはそんなに冒険者冒険者してねーでしょ。冒険者になったきっかけはいざこざのせいなのに。


「そんなランキングは知らないけど、危ないんじゃないの?」

「…あのなヴェル。 冒険者には危険がつきものなんだよ!さあ、パーリー申請してさっさと行こうぜっ!パーリー!パーリー!パーリーナイッ!」

「……はあ。 わかったよ…けど、危なかったら帰るからな。それに明日から学校だから、少しだけな」

「おっけいっ!ささ、早く」


 そう言って俺の腕をひっぱるマホン。

 この状況でウキウキしてるのは一人だけだ。


「すいません。 パーリー…パーティー申請したいんですけど」


 マホンは忙しなくしている受付嬢へカードを差し出した。

 マホンもまだ銅ランクのままだ。


「あ、はい。 パーティー申請ですね。 では、こちらの用紙にパーティーに入るメンバーの名前と、パーティー名を記入してください」

「わかりました」

 パーティー申請書と書かれた紙を受けとるマホン。

 すると、スラスラと自分と俺の名前、パーティー名も相談なしに書き込んでいき、すぐに提出してしまう。


「お願いします」

「はい。 お間違いないですね?」 

「大丈夫です」

「かしこまりました。では、マホン・トンプソン様とヴェルデ・ブルノーブル様のカードを一度預かりますので、ご用意をお願いします」

「はい」


 俺は言われるがままにカードを提出した。

 受付嬢は二人分のカードと申請書を受けとると、バックヤードへと姿を消してしまった。


 横のマホンを見れば、鼻歌混じりにずっとニコニコしている。

 そして無言のまま待つこと五分。

 受付嬢が戻ってきた。


「お待たせ致しました。 まずはカードをお返し致します」


 カードを受けとると、表面へ新たに

 パーティー名:樹

 パーティーランク:銅

 という文字が刻まれていた。


「では、これでお二人はパーティーとなりました。おめでとうございます。 パーティーランクはメンバーの一番トップランクに合わせて決まります。 ですので、パーティーランクになっているメンバーが脱退したときは、次点の方に合わせたランクになりますのでご承知おきください。 なお、依頼はパーティーランク以下のものを受注できますので。それでは、手続きは以上となりますがご質問はありますか?」

「ありません」「大丈夫です」 


 なんと個人のランクだけでなく、パーティーランク以下の依頼も受けることができるようだ。俺達は銅ランク同士だから今のところメリットはないが、メンバーに銀ランクや金ランクの奴なんかを引き入れれば、いつでも高額報酬ゲットじゃないか。

 まあそんな知り合いはいないんだけどね。


「なあ、マホン。 何でパーティー名は樹にしたんだ? これは"樹(じゅ)"か?」

「ああ、特に意味はないけど学校のクラス名にしたよ。 呼び方は"樹(いつき)"だ。 とりあえずメンバーを増やすつもりもないからさ、これにしとけば誰も入りたがらなそうだろ?それに、今着てるこの支給されたローブの色にも合わせてさ。よりパーリーっぽいじゃん?━━よし、じゃあ依頼書とってくるわ」


 たしかにそうだ。

 不遇属性だし、このクラスになっただけで葬式のような感じになったくらいだしね。

 人こなそうだな。


 となると、メリットが今のところない。

 パーティーにした意味がねーなオイ。



「コレとコレをお願いします」


 マホンは依頼書の内容を確認すると、それを片手に戻っきた。そしてまた、俺には何も告げずにさっさと受付嬢へと提出してしまう。

 しかも二枚。

 ダンジョンに関する依頼書と言えば、国からの探索依頼とギルドからの冒険者捜索依頼で間違いないだろう。

 俺も報酬額の確認だけでもしたかったな。


「……えっと、一応この依頼は全ランク対象となってますが……とても危険ですよ? もう既に数名の冒険者の方が行方不明になってますが……それでもやりますか?」

「もちろん。受理をお願いします」

「……承知いたしました。では、こちらのダンジョン探索とダンジョン周辺の生態系調査の依頼で受理させていただきます」


 ………。

 ……あれ?


「マホン?」

「ん?どうした?」

「あの、生態系調査? 捜索依頼にしなかったのは何でだ?」

「ああ。 捜索依頼は目的がまず違うし、あれは失敗すれば違約金もあるみたい。 見つかるかも分からないのにやらないでしょ」

「そ、そうか。それは…そうだな」


 捜索してほしいならペナルティーなんかつけないほうがいいんじゃねえか。

 と、一瞬思ったがこれはギルド側からの警告というか優しさなのかもしれない。

 何人もの冒険者が帰ってこれないほどの場所だから、それ以上に力のある者しか行って欲しくないのだろう。

 ペナルティーを気にするような奴ではきっと失敗するとふんでいのかもしれない。

 現にギルドからの指名依頼は金ランク以上を対象にしているようだ。

 ちなみに生態系調査とは、ダンジョンの出現によって周辺の動植物たちに何かしらの影響がでたのかを調査するものだ。

 過去には、魔物化した動物や未知なる植物が大量発生したこともあったそうだ。

 ダンジョン出現の影響は計り知れないのだ。


「うん。よーし、じゃあ行こうぜ」


 こうして俺はマホンと初めてのダンジョンへと向けて出発したのだった。

スギの花粉症が治ったかと思ったら、ヒノキの花粉症みたいです。

目と鼻がツラい……

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