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私は女勇者を倒さないといけないらしい!  作者: 榊原つむり
始まり
1/3

第1話 異世界転移

百合バトルものを書いてみました。よろしければ読んでいってください。

 

 皆さんお疲れ様です。私の名前は前川(まえかわ)(かえで)。女子高生やってます。


 そんな私は現在、精巧な文字や図が描かれた魔法陣の上にペタリと座っていました。

 目の前にはこの世のものとは思えない異形の姿をした化物。


「我は魔王。お前を召喚した者だ。お前は魔族のために勇者を倒してもらう。」


 呆然としていると目の前にいる魔王様から勇者を倒せと命令されました。

 意味がわかりません。



 これは夢でしょうか。

 何故こうなったのか私はさっきの出来事を思い返すのだった。



 ****



 時は遡って1時間前。


 一週間後に期末テストを控えている私は友達と図書館で勉強していた。

 普段はノー勉でテストを受けるのだが前回それで赤点を取ってしまったので今回は避けたい。

 そのため学年でトップクラスの学力をもつ親友に勉強を見てもらうことにしたのだ。


「楓ちゃん、そこはこの公式を使うんだよ。」


「なるほど。それでこの公式はどうやって使うの?」


「それはこの数字を代入して………。」


 おバカな私に呆れることなくちゃんと教えてくれる大親友。


 彼女の名前は天野(あまの)(さくら)

 高校に入ってからできた友達だが相性がよいのか長年付き添ってきた幼馴染のごとく仲が良い。


 あまりの仲の良さに周囲から付き合ってるの?と疑われているくらいだ。


 他の女の子だったらその疑問を訂正するだろうけど、桜なら別にいい。

 私は女の子が好きな人間というわけではないけれど彼女となら付き合ってもいいと思っている。

 そのくらい大好きだ。


「楓ちゃん、ちゃんと聞いてる?」


「ああ、ごめんごめん。聞いてるよ。」


 いけない、いけない。慣れない勉強をしたせいか別のことをぼんやり考えてしまった。

 私は彼女から教えてもらっている立場だし集中しないと。


「もしかして疲れちゃったかな。結構長い時間勉強したし、そろそろ休憩にしよっか。」


 ボケーっとしていた私を見て、気を使った彼女は休憩を提案してきた。

 確かに結構勉強したし少しくらい休んでもいいだろう。

 私はその提案に乗ることにした。



「今日は勉強を見てくれてありがとう。正直一人だと全然分からなくて困ってたの。桜も勉強しないといけないのにごめんね?」


「人に教えるのも勉強になるから気にしないで。それに楓ちゃんの頼みは何でも叶えてあげたいから…。」


 薄っすら赤くなった顔で言ってきた彼女の言葉にドキッとしてしまった。


「へ?そっ、そうなんだ。ありがと…嬉しいな。」


 私だって桜のお願いなら何でも叶えたい。

 まあ彼女が何かお願いすることなんて滅多にないけれど。

 それからお互い照れてしまったせいかしばらく静かに座っていた。


 別の友達だと、この沈黙は苦痛に感じるけれど桜となら嫌じゃない。

 お互い気を使わなくていいこの関係はとても素晴らしいね。


 30分ほど経ちそろそろ勉強を再開しようと声をかけると、彼女の周囲に黄金色の光の粒子が漂っていることに気づいた。


「桜の周りなんか光ってる。」


「楓ちゃんの周りもなんか光ってるよ。」


「ほんとだ…気味が悪いな。」


 桜に指摘され気づいたが私の周りにも光の粒子が漂っていた。だが黄金色ではなく黒と赤の混ざった色だ。


「周りに座っている人は光ってないし私たちだけみたいね。それに私たちが光っていることにも気づいてなさそうだし。」


 普通光の粒子が漂う摩訶不思議な現象が起こっていれば注目を浴びると思うが、特にそんな気配は感じられない。これが見えてるのは私たちだけだろう。


「二人だけにしか見えてないなんて不思議ね。」


「そうだね。んー、勉強のしすぎで私たち疲れてるのかなぁ…ってあれ?」


 気のせいだろうか。桜の姿と景色が歪んで見えた。


「さ、さくら!」


 怖くなった私は彼女に手を伸ばすがその瞬間酷い耳鳴りと頭痛が起こった。


「な、何これ…痛い………うぅっ。」


 思わず膝をつきうずくまる。ぐわんぐわんと揺れる感覚がして周囲が暗くなった。


 こわいこわいこわい。


 突然起こった出来事に私は恐怖した。


「はぁはぁ…痛い、怖い……桜…どこ…助けて!」


 苦痛に耐えながら叫ぶも返事は聞こえない。

 私は治らない痛みに耐えながら叫び続けた。



 ****



 気がつくと冷んやりとした石の上に倒れていた。あまりの痛みにどうやら気絶していたようだ。先ほどの頭痛と耳鳴りは収まっている。


「成功したようだな。」


 頭の上から声をかけられた。聞き覚えのない声。

 顔を上げ声の主を探した楓は絶句した。


 そう目の前にいるのはおぞましい姿をしている化物だったのだ。


「貴様、魔王様に向かってそのような顔つき。不敬であるぞ。」


「えっ、あっ。」


 横から漫画に出てくるサキュバスのような格好をした女に話しかけられた。

 その女の言葉には殺意が込められており私はうまく言葉を話せなくなった。

 なんだこの状況は、頭の中は大いに混乱中。


「よい。其の者は人間ではあるが我が召喚したことにより我々の同胞になった。突然召喚され驚いておるのだろう。その程度のこと気にすることはない。」


「ハッ。失礼しました。」


「うむ。さて、人の子よ。話はできるか?お前の名を我に聞かせよ。」


 夢なら覚めてほしいがどうやら現実のようだ。さっきから感じるこの感覚、夢にしてはリアルすぎる。

 それにしてもこの化物、どうやら私を殺すつもりはないらしい。

 話を振られたので心を落ち着かせて言葉を返す。


「私は楓と申します。……あの、ここはどこなんですか。召喚って言ってましたけど、それはなんですか。帰れるんですか?」


「カエデか。良い名だ。色々と聞きたいことはあるだろうからお前の疑問を順を追って話してやろう。」


 目の前の化物は豪華な装飾がされた椅子から降りると私の元に近づいてきた。怖いから来なくていいのに。


「まず、ここは魔族領にある城の中だ。我は魔族を率いる魔王であり、人間を滅ぼし世界を我が物とするため戦争中だ。」


「あの私も人間なんですが。」


「お前は別の世界の人間だからな、例外だ。」


 私の鋭いツッコミを意に返さず話を続ける。さすが魔王。


「人間は我々と比べて大して強くないが、奴らは魔族に対抗できる切り札がある。」


「切り札…ですか。」


「勇者召喚だ。」


 勇者召喚とは漫画みたいだ。どうやら異なる世界から勇者を召喚して魔族にぶつけさせるらしい。勇者は他の人間と違い絶大な力を持っているそうだ。


「歴代の魔王は今までことごとく勇者に敗れてきた。我は負けるつもりはないが敗北する可能性は無いとは言い切れない。そこで我らも勇者に対抗できる者を召喚することになったのだ。」


「それが私ですか。でもただの女子高生ですよ?」


「女子高生というものが何か分からぬが、心配する必要はない。お前は神から祝福(ギフト)を貰っているはずだ。」


祝福(ギフト)?」


「異なった世界から来たものは弱い。その救済処置として神から強力なスキルが与えられるのだ。」


 まじですか。異世界に飛ばされたと思ったら最強になってました、なんて。


「さっき勇者に対抗するために私を召喚したと言ってましたけど、具体的に何をすればいいんですか?」


「簡単なことだ。お前に勇者を倒してもらう。同じ人間なら油断を誘えるだろうしな。」


「…………………。」


 全力でお断りしたかったが魔王様を怒らせたら殺されそうなので黙っておいた。


「勇者を倒せば元の世界に戻してやる。なに、力の使い方は教えてやろう。お前には勇者並の力を手にすることができる可能性を秘めている。何も心配することはない。」


 そういう問題じゃないような。

 嗚呼、これからどうなるの。


 とりあえず桜に会いたい私だった。


読んでいただきありがとうございます。

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