人化をしよう
人を、グルースをみてから数ヶ月が過ぎた。最近ふと思う。
私が死んでからお嬢様はどうしているのだろうか、と。お嬢様の心に傷を負わせてしまったかもしれないなと。お嬢様はとても優しい。奴隷だった私を友達だと呼ぶほどに。
そして、寂しがり屋で泣き虫だ。私の前以外では泣かない。泣かなかった。寝る直前まで近くにいないと眠れなかった。大丈夫かな、といまさら不安になってきたのだ。
他のやつら?あいつらはまあ大丈夫だろ。グルースを見ても大丈夫そうだったから。
『子供達!おいで。新しい魔法を教えるよ』
『『『はーい!』』』
新しい魔法?なんだろうか。力を制御する魔法かな?角は本気のときのみ出す。角をなくす方法は後で教えるって言ってたし、
『新しい魔法はこれだ人化という。みていろ』
と母がいうと、母の周りに雪が集まり始めた。今は秋のはずなのに。そして、
―――シャァン
と涼しげな音が鳴り雪が砕けた。そこには
『母?ですよ…ね?』
『すごーい!ニンゲン?になった!』
「ふふふ、どうだ?これが人化といるものだ」
『凄い!僕もできるかな!?面白そう!』
『私もしてみたい!』
『一旦みんな落ち着け。ほら、ぼうっとしてないで母の前に行くよほら!』
真っ白なまるで雪のように白い髪をもち、目は氷のような色、耳は狼の耳。そして、尾があった。服はどこから来たのか分からないが着ている。とても、美しい女性がそこにたっていた。
「そうあせるな。できるようになるさ。いいかい?もう一回するから魔力の動きをよーく見ておくんだよ?」
『『『はーい!』』』
そう言って母はまたフェンリルに戻り、再び人化した。今度はゆっくりと。しかし、魔力の動きがなんだか解りにくい。兄妹達も困惑している。
「まあ、わからんだろう。自分が人間になるイメージでするとできるかもしれんな。」
『えー、難しいよ。母の姿を参考にすればいいってこと?』
「そうだな。ほら、やってみろ。」
以外と簡単そうだ。元は人間だったからな!一応。
えっと前世はどんな姿だっけ。忘れちゃった。えっと
そうこうしているうちに魔力が集まってきた。前足が手に、後ろ足が足に変わってゆく。視界が高くなって…いかなかった。そういや、母も背が変わっていなかったな。
「…っ。は!あれ?出来た?」
「おお!もう成功したのか。うむ!中々に可愛いぞ。」
『凄い!すごーい!もうできたの?いいなぁ。』
『んんーっ。くっそー!妹に先越されたー!』
私の姿を真似してか兄がもう人化した。凄いな、私は元が人間だったからはやくできたのに。
「はっ。で、できたぁ。なんか、変な感じだな。毛がないって。しかも、握れる。しかも、人間の言葉しかしゃべれない」
『兄ちゃんと姉ちゃんはやいー!ぼーくーもー!』
「がんばれ、弟よ。私より兄の姿を参考にするとよいぞ」
『むー!』
結局弟は人化をその日のうちに出来なかった。まあ、魔法が苦手だからな。仕方ないのだが…。
弟がかわいい…。お気に入りです。ちなみに他の妹や弟は生まれたときから死んでいました。なので本編では出てきません。