お嬢様視点
私はエリザベート、エリザベート・シュウェルディ。シュウェルディ伯爵家の一人娘。金の髪に黒い目の五歳。
でも、ただの五歳児ではない。私は前世の記憶があるのだ!そしてここは乙女ゲームの世界だということも知っている。もう、ここまで言えばわかるよね?私は悪役令嬢なの!
だがしかし、攻略対象に興味はない。
てか、恋で婚約破棄ってどうなの?貴族として。
ま、それはおいといて。私には友達がいる。奴隷、なんだけど。
白い髪に青い目。片方の目は金ががっててとっても綺麗。まるで氷に月を閉じ込めたみたい。
家の前で倒れてたのを拾って父に頼み込んだ。
名前はライカ。メイド長が影で誉めてたのを聞いたことがある。優秀な奴隷だって。この世界では奴隷に教養があればあるほど良いから酷い扱いはされない……はず。
それはともかく、ライカとはよく話す。いろんな所へつれていったりしていた。ずっとそれが続く、とおもっていた。いつも通りライカを庭に呼んだ。
「ライカ!来て! 」
「ああ、ベビースライムですね」
なにあれ可愛い!へえ、ベビースライムっていうんだ!
「お嬢様! 」
え?ライカの腕に、矢が刺さっている。なんで
「らいか、血が……」
なにかライカがいってる。私の手をつかんで走り出した。誰か黒ずくめのひとがでてきた。そのときはもう、息がきれていた。
「すいません、お嬢様」
「え、ライカ? 」
ライカに突き飛ばされた。え?なんで、なんで、ライカ!
ライカも来ないと!
「走れっ。早くしろ! 」
その声を聞いて私は走り出した。そうだ。狙いは私なんだ。それに、誰か呼びにいかなくちゃ。屋敷のなかに転がり込む。
「はっはっ……」
「お嬢様、どうなさいまし……」
「はやく!ライカが、外に!黒ずくめが!」
「ライカ?黒ずくめ?まさか……。わかりました。お嬢様、こちらに」
ライカ、どうか無事でいて。
その宛がわれた部屋でじっとうずくまる。
どれ程の時間がたったのか分からない。にわかに外が騒がしい。
「――は―ライ――」
ライ?ライカ?ライカに何かあったの?
そっと扉を押し開けて廊下に出る。そのまま庭へ向かう。ライカが心配だ。私と同じくらいの年なのに、怖くないわけがない。怪我もしていた。治してあげないと。庭に飛び出した先にあったのは
ちらり、と見えた白色の髪。
そこには紅い、紅いナニかがついていた。
信じたくない、そんなわけがない。ライカが、そんな……
「ライカッ」
そこにいた……いや、そこにあったのは、紅に染まった地面、そこに倒れこむライカの姿だった。
「ライ……カ?ライカ?ねえ、目を覚ましてよ!」
「お嬢様?!部屋にいてくださいと……」
「ねぇ、ライカ!私の命令がきけないの?目を覚ましなさい!ライ……お願い、さましてよぉ」
その願いは叶えられず、あの綺麗な目を開けることは二度となかった。
そして私は思い出した。この悪役令嬢、ゲームのシナリオにあった過去の記憶を。これは、決まっていた事だったと。