母視点
お、お久しぶりでございます。
子供達を追払いホッと一息つく。
しかし、まだ油断は出来ない。むしろここからが本番だ。
後ろを見ずに氷の刃を飛ばす。
「おやおや、危ないですよ」
「黙れ。さっさと帰りな。宰相」
「酷いですね。元同僚だったのに」
ギッと睨み付けるも肩をすくめるだけ。本当に鬱陶しい。
「なに、あなたの子供に会わせて欲しいだけですよ」
「ああ、そうだな。会って連れ去るつもりだろう?魔王の子だから」
「連れ去るとは人聞きの悪い。勧誘するだけですよ?魔王の証があれば」
「なくても、だろう」
「貴女方の穴を埋めるのは大変なのですよ?元四天王筆頭紅花の氷狼」
「懐かしいな。だがいまの私はただのフェンリルだ。その名はもう捨てた」
「おや?こちらの方が良かったですか?狼……」
「貴様がその名を呼ぶなぁぁぁ!」
カッと目の前が赤くなり魔力が勝手に動く。
地面から氷の花が咲く。宰相の血で彩らんと
「危ないですね。だから渾名で呼んだのに」
次々と咲く花をヒョイヒョイと避けながら呟く。
ああ、ダメだ、感情に身を任せてはっ。
フッと短く息を吐き頭を振り落ち着かせる。
「おやおや、どうしたのです?」
「出ていけ。今すぐに」
仕方がない、と言わんばかりに頭を左右に振る。
ほんっとうにイラつかせるのが得意なことだ。
まず、我らフェンリルが認めていない者に名で呼ばれることを嫌っていると知っているのにわざとこうする。
それに
「つれないですね。口説きにきたのに」
「黙れ失せろ消えろ」
フェンリルは一生に一人しか番を持たないと知っているのに口説く。
本気では口説いていないと知っているし、仕事の方だと分かっているがやはり腹がたつ。
「ええ、そう言われると思っていましたよ。だから方法を変えます」
「ほう?どうでもいい。帰れ」
「貴女の穴を埋めるのが大変なら貴女に快くしてもらおう、と思っていましたが仕方がない。余りしたくなかったのですが」
「実力行使か?笑わせる」
「ええ、私では無理でしょう。だから……」
指をパチリと鳴らす
そして不敵に嗤うと
「ほかの者を連れてきました」
とくそ丁寧なお辞儀をして召喚する。
「ふうん。竜、か」
「ええ、さすがの貴女でも苦戦はするでしょう?」
はあ、めんどくさい。だが、子供たちへの試練には丁度いい。宰相を追っ払いこの竜だけもらおう。
その場からゆっくりと立ちあがり戦闘モードへと移行する。
『一気に片をつける』
ほんっとうに申し訳ありませんでしたぁ!