お嬢様のためなら
「ライカ!来て」
お日様の光を紡いだかのような暖かな色を持つ髪。クリッとした大きな目。私の仕えている自慢のお嬢様。私と同い年と思えぬほど賢くて、優しくて、可愛らしい方。五歳ながらにもう政治を学んでいらっしゃるお方。
「なんでしょうか。お嬢様」
私はここの家の前で行き倒れていた平民だった。私の母は踊り子?で、知らない男の人とどっかにいって帰ってこなくなった。そこをこのお嬢様に拾っていただいた。さすがにお嬢様のお父様……伯爵様はお許しになられなかったけど、お嬢様が無理を言って仕えさせていただいている。奴隷として、ですが。しかし、奴隷とは思えないほど良い待遇をしていただいている。もちろん、使用人としてのいろいろな作法は厳しいですが、楽しくしております。しかし、このしゃべり方が難しい。三歳の時に拾われましたが。
「ほら、みてみて!かわいい」
「これは、スライムベビーです。誰かが逃がしてしまったのでしょう」
スライムベビーは弱く、何でも食べるのでゴミ箱などとしてうられているもの。野生ではほとんどいないはずですし、ここは伯爵家の庭。誰が逃がしたのでしょう。全く。
「さ、家庭教師が待っております。戻りましょう」
「え~。面白くないもの」
プクッとほほを膨らませるお嬢様。お可愛らしい。ん?私の方を見てどうしたのでしょう?
「お嬢様? 」
「ん、ううん。やっぱり綺麗な色だなぁって」
私の髪の色は白、目の色は青。片方に少し金が混じっている。左右で色が違うのは魔を呼ぶといわれて嫌われるのに、本当に、お優しい。しかし、それでは有耶無耶にはできませんよ?
「有り難うございます。しかし、いきますよ」
「違うのに…本当に綺麗なのに」
全く。なにかぶつぶつ呟いていますね。後でなにか差し入れをしなくては。
カサッ。
…ん?
「お嬢様! 」
とっさに庇う。飛んできたのは矢だった。
「……っ。このっ」
飛んできた方を見る。しかし、素人の私がわかるはずがなく、見つけられない。
「お庭番はなにをしているの!?こんなときにっ」
「らいか…血が…」
ちらっと腕を見る。矢が刺さっていた。でも私は生まれつき痛みを感じない。矢をへし折る。後で抜かないと。
「大丈夫です。それより、お嬢様は逃げましょう。こっちです」
お嬢様の手を引いて走る。こっちは確か…
――――うわあああああっ―――――――
ちっ。こっちにもいたのか。コースを変更する。
「はっはっはっ……」
お嬢様の体力はもうない。
「逃げ足が速いな。だが、お嬢様はもう限界らしい」
黒いヤツがきた。どうすればいいっ。かんがえろ、考えろ。…。
「すいません。お嬢様」
「え?ライカ……? 」
お嬢様を突き飛ばす。そして、
「走れっ。早くしろ!」
「…っ。」
お嬢様に危害を与えたばつとして首がしまる。しかし、お嬢様の命に比べれば。
「おっと、まてよ」
黒男の頭に石を投げる。
「いかせるかよ、黒男」
数秒だけ時間を稼げば良い。そうしたらおそらくお庭番に保護されるだろう。
「お前に構ってる暇はねえんだよ」
プロなのだろうか。それにしては、やけにしゃべるな。ナイフを飛ばされた。避けれず足に刺さるが、無視する。
「ちっ。歩きずらい」
「ほう、痛覚がないのか。なら、殺す。いい暗殺者になっただろうにな」
素早くちかづいてきた。避けれないだろう。これまでの短かった人生だ思いだせれた。最後に思い浮かぶのはあの、日溜まりのような笑顔。
「お嬢様―――」
「死ね」
サックリと首をかっ切られた。