ひとりめ
一人目です。イケメンです。
「こんにちは 」
「こんにちは」
まずは第一村人(村人?)発見。
ここはゲームを始めたばかりの人が降り立つ場所のようだ。
他のユーザーは、いマサラこのタウンにいる訳がないので、つまりここにいるユーザーは私と同じ初心者と言うことになる。
「どうしましょうか? 」
とりあえず話しかけてみた。
すると、第一村人さんは私の表示されている名前をみて少し考えた後にこう返してきた
「…別にそういうのは求めてないですね」
「そうですか、残念です。
ちなみに、あなたがはじめての人なんですよ?」
「わろたwww
ネカマ宣言は新しいですね、それはそれで需要ありそうで…」
需要ってなんだ?お?BLか?
「まぁとにかく、一回やってみようかなと思いましてね、需要、ですか?」
「いや、だいぶ隙間産業感あるけど」
そんなつもりはないんだけどな。
ちなみに私はこの、第一村だんすぃーと(名前は確かトール…さんかなんか)と近くのカフェに行ってお茶をしながら話をしていたりする。
そう、このネットゲーム、「 ねくすと・ゆあ・らいふ 」はゲーム内通貨を使っていろいろなことが遊べたり、体験できたりできるオープンワールド系のゲームなのだ。
ゲーム内でお店屋さんごっこをしているのも実はプレイヤーとNPCが混ざっている状態だったりする。
本当に色々な事ができるので役割を演じるという意味では正にRPGなのだろう。
ネカマを演じている私が言うんだから間違いない。
閑話休題。
「でもこう、本気僕のことをで要望してくれる人を心のどこかで期待してしまいますよね?」
そう、そのためにわざわざゲームまで買ったのだから要望してくる人がいないと困る。のだ。
「いいですね、バーチャルな世界というのは」
ほんとね。
「自ら騙されに行くというのも乙だったりする…しません?」
「そうですね、まぁこういっとけば大抵の人は男だと思いますよね」
「そういうのもアリですね」
「そういう手を使っている女性は何人かいましたね」
なんと!?先駆者がいたのですか。
これは詳しく聞かなくては…
「大変参考になりますね。そういう人は何の意図で演じていたんですかね?」
「出会い厨をふるいにかける的な?」
あー。
「なるほど…
まぁ、普通に話しているだけなのに口説かれるのとかはマヂ簡便ですもんね」
私は口説かれたことなどないんだけど…
「ほんとですね」
そういいながら実はさわやかイケメンなだんすぃーことトールさんは優雅に紅茶を飲んでいた。
私はパティシエールなプレイヤーさんから「面白そうなこと話しているね?盗み聞きしちゃったお詫びにこちらをどーぞ」と、いただいたティラミスを男らしく口いっぱいに頬張る。
うおお、猛禽類を甘く見るなよー…甘っ!ウマッ!?
なかなか素敵なティータイムだったが目的を見失ってはいけないので再び、トールさんに話しかけてみる。
「さて、どうしましょうか?」
「どうしたいですか」
質問を質問で返された!?
「…そのきりかえしには驚きました」
「どうしましょうか、という質問もなかなか・・・」
なかなか…なかなか難しいということなんだろうか?
まぁ会話が進まないので、私は最初の目的を反芻するようにはっきりと返事をした。
「そうですかね?…まぁ、私はネカマを演じてみたいです」
「じゃぁ、あなたが一番なってみたいタイプのネカマでどうでしょうか」
「ないですね。正直ネカマにはなりたくないです。」
潜入調査の私がわざわざなってみたいネカマなんてないだろ?
なに言ってんだこの人?
「では、需要も供給もここにはありませんよw」
なんだと!?需要ないの!?
「まぁ、シュールな笑いならありますけどね」
よく分からないことを言われたので、とりあえず「イーーーーヒッヒッ」と笑っておいて、こんな感じですか?と聞いてみた。
「ドヤ顔www面白い人ですね、貴女は」
「…驚きました」
「なぜです?」
だってこの人、笑った時の顔がすごい眩しいんだもの。
テラスでティーカップを片手に背中をゾクゾクさせるハスキーボイスで「面白い人ですね」とかいわれるとか…
「いや、口説かれているもんだと。つい…」
「どこを斜めに読んだらそうなるんですか?」
ああ!そんな刺さるようなジト目しないで!?
とりあえず、私はぽーかーふぇいすをキメながら
「これはネットゲームの所謂、チャットですよ?何を言っているんですか?」
といったら「確かにそうだねww」とはじけるイケメンヴォイスで笑ってもらえた。
もう、こういうゲームってことでいいんじゃないかな?
◇◆◇◆◇◆
それから私とトールさんはスタート地点からほとんど移動することなくお洒落なオープンテラスで気の済むまでチャット(お話?)をしていたりした。
フレンド登録も終わって辺りが夕焼けになっているころ、リアルの時間では深夜0時を示していた。
「おっと、どうやら12時を過ぎたようですね」
そろそろログアウトしますと別れを告げ、テラスをたったのだが、なんか別れが惜しくなってしまったので振り返って
「これがホントのシンデレラ・ボーイ?」
と一言、言ってみたらトールさんは「はーぁ」と軽くため息をついてやれやれといった体で
「探しませんよ?」
と返してきた。
なんで!?
こんな感じであげていこうと思います。
次回は明日投稿します。