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返事が無い、ただの勇者のようだ

「救国の勇者よ、よくぞ来た!」


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!


 僕は心の中で叫び声を上げていた。身体がブルブルと震えてすらいる。動揺を隠し切れていないがそんな自分を客観的に見る余裕など皆無で、出来る限り身体を縮こまらせて気配を消そうとするが、そんなことは悪あがきにすらならない。

 巨大な支柱が立ち並ぶ中、学校の体育館ほどもある大広間の中心に、僕とバローネさんとオルヴィスさんが並んでひざまずいている。そして僕の目の前には五段の階段があり、その先には玉座と呼ばれる座具がある。

 座具にはその主となる人物が座っている。そう、つまり、この国の王様だ。


「異世界からはるばる、この世界を救いに来てくれたのだな。予言の勇者殿よ」


 あれ、僕に話しかけてる?

 いやいや、僕は世間に溢れているごく一般的なニートだ。王様ともあろう者が話しかけて良いモノではない。えぇきっと、僕の他に勇者って名前のお客さんが遠方より見えられたんだわ、きっと。


「私の言葉が伝わっているかね、勇者ナルコ殿」


 いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!

 僕だった! 僕の事だった!

 オルヴィスさんコラァ! 会わせたい人がいるっていうからノコノコ付いてくれば一国の王様じゃねぇか!

 くそぅ! 世の中でいう仕事場の上司とか学校の先輩とかそういうコミュニティーと無縁に過ごしてきた僕が、国のトップと面談なんて酷過ぎる!

 ひのきの棒一つで魔王に挑むようなものじゃないですか。


「今我々は危機的状況にある。魔王と呼ばれる存在が現れたからだ」


 王様の言葉により、壁際にいた兵士たちが窓を覆っていた暗幕を開く。

 大きな窓の向こうには、禍々しく黒雲が立ち込めており、雲を地上から貫くようにそびえ立つ鋭利な建物、ドラキュラ城のイメージがぴったり合う。

 え、アレ? 魔王の居城アレ? 近くないですか?


「魔王は我が同盟国であり隣国であるセレール王国の城を攻め落とし居城としておる。魔王が従える魔物達の軍勢は瞬く間に世界の要所を侵略した」


 いきなり本題に入りだした! 僕まだ一言も発していないのに!


「我々クオリア王国は表向き魔王軍に従属する形となっておるが、あくまで表向きの話しである……!」


 王様、濃い! 黄金の冠に赤いマントのいでたちの王様は彫りが深く、照明の関係から、目元が暗い影により見えない。興奮し立ち上がった王様を周りの兵たちがなだめる。


「陛下、また血圧が上がりますぞ」


「いま国王に倒れられては困ります」


「いのちをだいじに」


 詰め寄る兵たちを手で制し、王は続ける。


「言わせてほしいのだ。我々は、いや、私の判断によりこの国は真っ先に魔王軍の手に堕ちた。死にも勝る屈辱恥辱を受け入れてきたのも、耐えてきたのも何の為か! それは、然るべき時に反撃の狼煙を上げるためである! こうして予言の勇者が現れたのも、きっと運命が私達に味方してくれているのだ! 今が! その時なのである!!」


 おおおおお!! と兵や家臣たちの雄叫びが鳴り、僕は更に縮こまる。なんだか勝手に盛り上がっているようだけど、勝手に僕をダシにするのはやめてほしい。僕は勇者なんて大それたものじゃないし、魔王を倒すかどうかは正直、乗り気ではないというか常識的に考えて僕には無理でしょう。その辺のところバローネさんの方からもなにか言ってくれないだろうか! 


「おっほん」


 僕にとっては大変都合の良いタイミングでバローネさんの咳払いが聞こえた。……僕の心情をいち早く察してくれたのかもしれない。流石は神の作りだした美人アシスタント! 出来る女だ!

 バローネさんは咳払いにより周囲の注目を集めると、無表情に告げた。


「くぉりぁあ大変だ」


 …………。


「「…………」」


「…………?」


 瞬間的に降りた沈黙の間に、バローネさんは首を傾げる。傾げた上で、再び続ける。


「……くぉりぁあ大変だ」


「聞こえてる! 聞こえてるよバローネさん!」


 聞こえてるけど皆反応に困っているだけ!

 って言おうとしたところで僕は、はたと気付く。いままで沈黙を貫いていた僕が突然大きな声を上げたものだから、その場にいる人間全員の視線が全て僕に集中したことに。

 夢なら覚めて欲しい。なんだか王様と家臣が期待を込めた目で見つめてくるのだが、これは僕が魔王討伐を宣言する流れだろうか。

 いやいや、流されませんよ? 僕は。

 額の汗を拭うと僕はお口にチャックで再びだんまりを決め込む。というか存在を消すように、息を潜めた。


「――はぁ」


 王様の明らかな失望のため息を聞いた。

 いや分かるけどさ、分かってよ。僕は今まで何の変哲もない社会の一部にすらなりきれずにドロップアウトしていた存在なんだから。人からの期待とはもっとも縁遠い存在だと言い切れる。そんな自己否定を思考の中で繰り返していると、


「うむぅ。さすがに無条件というわけにはいかぬな」


 王様は決心したような頷きを見せる。




「勇者よ。見事、魔王を討ち取ったあかつきには、我が最愛の娘・サーニャ姫を妻にする権利を与えよう」




「は――?」


 思わず漏れた間抜けな声に、僕は慌てて口を押さえるが、周囲の人間も大体似たような反応だった。室内が一斉にどよめきだし、全体の動揺がヒシヒシと伝わってくる。この空気を作りだした当の本人は力強い目でこちらをじっと見つめるばかりだ。いや、影になっていて実際は見えていないが、そんな空気感だ。

 しかし、この場で王の提案に納得できる人間はいなかった。

 頭のサイド部分を除いて禿げ上がった小太りな大臣風の男が、慌てた様子で王の前にひざまずき、声を上げた。


「王! それはいかがなものかと思いますぞ! 姫様の意思を無視していますし、この者は素性が知れませぬ! その者に王位継承の権利を与えるなど――」


「黙れ! エヴァンス・フレデリック!」


 名前、無駄に格好良いな……。


「素性の知れた者の中ではたかが知れている。我々が今までに調べ上げた中で魔王に対抗できる存在が今までにいたか!? 我々は運命により決断を迫られているのだ! 大きな賭けに乗るほか無いのだよ!」


「王……!」


「それに、あくまで魔王討伐に成功した場合の話しだ。予言者ユミルの言もある。不安材料ばかりではないのだ」


 王の意思は固く、それを覆すのは容易ではないだろう。

 神様にしてもこの国の王様にしても、偉い人っていうのはなんでこう、誰かを差し出す事を条件としてしまうのか。……釣られてノコノコとこの世界に来た僕が批判できることではないのだが。

 どよめいていた場は静まり、気まずい沈黙が支配した。

 しかし、エヴァンス大臣(大臣だと思う)がいうことはもっともで、この人達からしたら僕は所詮どこぞの馬の骨で、実際には馬のフンぐらいの存在であるのだが、突然一国の姫をくれてやるなどとトチ狂っているとしか思えない。もっと全力で抗議してほしい。僕に代わって。


「……王がそこまで申すなら仕方ありますまい」


 引き下がった!?

 エヴァンス弱過ぎない? もっと自分の意思を持とうよ! ガンガンいこうぜ!?


「ナルコとやら、姫様のため、いや、この国の為にも、どうか、魔王討伐を成し遂げて下され」


 額を地面に押し付けるように頭を下げるエヴァンスの姿に僕はたじろいだ。

 そんなに簡単に頭を下げる人間を、僕は信用しない!

 なにか、なにかこの状況を逃れる手は無いか。ボクが全力で目を泳がせていると、救いの手は思わぬところから来た。


 ――!!


 玉座の奥。右手のドアが力強く開け放たれたと同時。

 張りのある少女の声が響いた。


「お父様! お父様はまた! 軽々しく私を差し出そうとして!」 


ふぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!

更新が! 遅くなりました!

って、後書きを言い訳にしか使っていない気がします!


仕事が! 大会が! ポケモンが!

いろいろあったのです……orz

残業で白目剥きながらデスクワークした後ですと、なかなか、ね……。家でパソコンに向かえないといいますか……。ポケモンサンムーン? 面白かったです……。はい。しっかりやりました。

身体が鈍ってきているのでしばらくトレーニングを頑張りつつ、まったり小説の方を進めていきたいと思います。


小説はだいぶ先まで構想が出来上がっているのですがねぇ。

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