私は男を頼りません!
なろう初投稿です。
なんとなく思いついたものを、なんとなく文章にしただけです。
このまま終わるか、連載するかも未定の見切り発車です。
勢いで書いたので至らない点があるかもしれませんので、ご了承ください。
ふと、以前の人生について思い返す。
私、カエデ・ツイルバリー ――綾小路 楓――は、前世ではそれなりに古い家に産まれた。
黒の髪に黒の瞳という、如何にも日本人だと主張する容姿。
髪は腰辺りまで伸ばし、邪魔にならないよう毛先の方で一纏めにした。
少々目つきがキツイ事が悩みではあったが、大好きな母に似ていると言われれば悪い気はしなかった。
身長も女子の平均よりは高いが、男子の平均よりは低いという理想型。
出ている所は出ているし、引っ込む所は引っ込んだモデル並のスタイル。
外面が良すぎて、仲の良い友人には冗談半分(ここ重要!)に妬まれていたのは懐かしい思い出だ。
性格に関しても、周りに悪く言われた事はない。
……まあ、たまに『その辺の男よりも男らしい』などと不名誉な事は言われたが。
旧家ならではの習い事も完璧で、特に茶道に関しては先生から絶賛されたのが密かな自慢だ。
所謂花嫁修業も母から厳しく教わり、炊事洗濯に礼儀作法も万事完璧。
創作ではありがちな許嫁などは居なかったが、いつ嫁いでも心配ないとまで言われた。
暴漢対策に、家に代々伝わる古武術も父から教わった。
一般レベルでの不届き者を撃退する方法から、使い所を誤ると危ないレベルまで。
まあ、教わったのが『武道』ではなく『武術』だった事からお察しだろう。
その辺の不良が束になって襲ってきても、問題なく撃退できた(過去形)。
……思えば、これがいけなかったのだろう。
「ごめん、他に好きな人が出来たんだ」
付き合い初めてもうすぐ半年になる彼から言われたのは、不良撃退事件から半月ほど経ってからだった。
彼とは所謂幼なじみなで、家柄を気にせず接してくれた良い人だった。
『私』を見てくれる人と一緒になりたいと考えている私にとっては、一番理想に近い異性『だった』。
――私と関わりがあると、不良たちに日々睨まれる生活に耐え切れなかったのだろう。
元々異性とはほとんど付き合いがなかった自分にとっては、唯一と言えるほど代え難い人だった。
親元を離れ一人暮らしをしていた彼は、自分に別れを告げた2日後に違う学校へ行ってしまった。
「別れた直後よりも、あいつが転校した後の方が、楓の表情が怖った」とは、
親友で幼なじみのりっちゃんからの言葉だった。
良くも悪くも古風な私からしてみたら、逃げる様に転校した方が許せなかったのだから仕方ない。
俗に言う『清く正しいお付き合い』をしていた以上は別れるなんて時間の問題だ、
と周りからは常々言われていたが。
いや、それを言い出したのは私ではなくうちの両親なので、そう言われても困るのだけれど。
それでも、仮にも彼女を捨てて逃げてしまうような軟弱者に色々と許さなくて良かった。
初めは不満だったけれど、言い出した両親には感謝したい。
ともかく、この不良撃退から元カレの逃亡までの流れで軽く男性不信になった私。
それからは異性を傍に寄せ付けず、同性とばかり過ごすようになってしまった。
変化はすぐに現れ、他の女子諸君が私を見る目が一変した。
うろ覚えだけど、男性同士が薔薇ならば、女性同士は百合だったか。
困ってる女の子を助けている内に、何故かそんな事態になってしまった。
「リアル百合キターッ!!」と何故かものすごく盛り上がっていたのは、
私に(要らない知識も)色々教えてくれたしーちゃんだ。
なお、本人曰く「蚊帳の外から見るから楽しいのであって、わたし自身はノーサンキュー」とのこと。
私の事を「お姉さま」や「姉御」と呼んで慕ってくれてる娘らを盛大に煽ってくれたのは誰だったか、
その清く静かな名前に反してトラブルメーカーな所は相変わらずだ。
……まあ、慕われるのは嫌いではないけど。
そんなこんなで「男は信用できない」とばかりの生活をし続け気付けば高校3年の夏。
既に志望校はA判定をもらい、久しぶりに親友2人と遊びに行こうと駅へ向かう途中。
大型のトラックに轢かれそうになっていた、他校の制服を着た女子生徒が目に入ってしまった。
多分、予備校にでも行く途中なんだろうなと、少しボーッと見てしまったため反応が遅れた。
間に合わないという直感をかなぐり捨ててカバンを放り出し、その子を突き飛ばした瞬間の強い衝撃。
それを最後に私の意識は途切れ――気付けば、私はとある施設に居た。
……3、4歳くらいの見た目に戻って。
もちろん、最初は戸惑った。
創作でよくある転生モノかと思ったが、正直に言って情報が皆無の状況は本当に怖かった。
カミサマとやらが事前説明してくれる設定が、如何に親切か思い知った。
幸い、と言っていいのかわからないけど、日本語ではないこっちの言語は理解できた。
私としての意識はなかったとはいえ、数年間の生活は無事に吸収できてたのは大きい。
時間の流れは地球とほぼ同じで、気候なんかの環境も大きく変わらなかったのは有難い。
魔法があったのには驚いたけれど、科学の代わりだと思えばそれほど違和感なく受け入れられた。
エルフやドワーフなんかも実際にいたが、前世で言う外国人とそれほど変わらない。
――ここまでお膳立てされて、ただ普通に過ごすなんて勿体無い。
面白い事大好きなしーちゃんの影響でも受けたのか、すぐさまこの世界の事を調べ始めた。
私の居た施設は有力貴族が出資していたらしく、勉強するのには困らない空間だった。
わからない事があれば図書室で本を読みふけ、施設の先生による授業も新鮮で楽しかった。
後の検査で魔力適正があることがわかり、それからは魔術の練習もした。
生前教えられた武術を腐らせないため自己鍛錬も欠かさなかった。
そして、生前の親友を彷彿とさせる、一緒に夢を追いかける親友たちとも出会った。
1人は騎士団に所属し、私や家族たちを守るための力を身に付けに。
1人は高名な魔術師の元に行き、私や家族を後ろで支える力を身に付けに。
そんな2人に触発されて、私はもっと世界を知るために、施設を出て放浪の旅に出た。
そして3年前。
私と、リズと、シズク。
それから、私たち3人を『家族』だと言ってくれた人たちと。
私たちの『家』を作り上げた――。
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「カエデ、ギルドから依頼が来てたぞ。今回は3件だ」
「内容は?」
「キュロプスの群れ討伐、亜竜の素材採取、商人の物品輸送の護衛、とある貴族の護衛だな」
「…それ、4件って言わない?」
「貴族の方は、黒い噂の絶えない男だが?」
「3件ね、おっけー。キュロプスはローズとマリー、護衛はアカシア、アンネ、セレンに任せましょ」
「亜竜は?」
「私が出る。リズは一緒に来て。留守はシズクに任せるから」
「了解だ。残りは各自好きにさせても?」
「うん、いつも通りに」
リズとの会話は、昔から必要な事しか言わないから楽でいい。
もちろん、他愛のない雑談もするけど、こういう事務的なやり取りをするには一番楽だ。
だからこそ、こうしてクランのサブマスターという私の補佐をお願い出来る。
何事も、肩筋張ってばかりだと辛いからね。
「亜竜って事は、セーヌ山脈だね。途中で食べれる物作るから、1時間後に正門集合で」
「ああ。私は、ギルドで依頼の受理を済ませておくよ。残りの依頼は…」
「破棄で」
わかり切った事なので、食い気味に。
案の定リズは苦笑しているけど、こればかりは譲れない。
前世からの、私の持つ教示だ。
「だと思ったよ。まあ、今朝の受付は新しい娘だったから、あまりキツく当たらないように」
「ってことは、マリエさん今日休みか。…まあ、新しい子なら仕方ない」
「私から言っておくよ。それにしても、カエデの男嫌いは変わらないな」
「訂正しておくけど、『男が嫌い』なんじゃなくて『不誠実な人が嫌い』なだけ。
ただ、男の人に不誠実な人間が多いっていうだけの話だよ。重役には就きたくないね」
「同感だな。だからこそ、こうしてクランを立ち上げたんだ。私達なりにやろうじゃないか」
後ろ手に手を振り振りと、部屋を出る。
前世では私をカッコイイと言う子がいたけど、
リズこそカッコイイの代名詞だと声を大にして言いたい。
以前に『種類に限らず、力は人を駄目にする』と物憂げな表情で語った時なんか、
同性ながらもクラッとしたものだ。
さて、時間もないことだし、キッチンで昼食を作るとしよう。
私が作る料理は、クランの中でも評判で結構嬉しい。
……以前、ギルドの知り合いに『愛妻弁当』とか言われた事もあるが気にしない。
クランの子らは、私の家族だ。
愛情込めて悪い事はない。
ふと、私が居座る部屋に飾られた紋章が目に入る。
私の名前でもある楓と、私の故郷である日本の桜が描かれたクランの紋章。
クラン『桜の庭園――セラサスガーデン――』の紋章。
これを見ると、私はやはり日本人だなと思う。
……それはそれで、構わない。
前も今も、両方合わせての『私』だ。
――りっちゃん、しーちゃん、お父さんにお母さん。
楓は、異世界でも男に頼らず生きてます!
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
下に軽い人物設定なんか載せておきます。
今後も投稿するかはわかりませんが、もし次があればよろしくです。m(_ _)m
『カエデ・ツイルバリー』
主人公、前世は「綾小路 楓」。
生前付き合っていた彼氏に捨てられるなどあり、軽い男性不信に。
前世、今世の経験で、人の感情(特に負の感情)には敏感。
色々と設定は考えたけど、それが生きるかは不明。
『リズ』『シズク』
楓の親友、「花園 六花」と
「清澄 静香」の転生体……という設定もあった娘ら。
リズは騎士っぽい感じ、シズクはトラブルメーカー件参謀な感じで。
あとは、カエデと同じ施設出身でクラン創設メンバーくらいしか考えてなかった。
『ローズ』『マリー』
エルフで双子と、色々属性を混ぜたコンビ。
ローズが明るい前衛で、剣士とかよりも罠や道具を効果的に使うハンターとかローグ系。
マリーがおどおど系の後衛で、弓をメインにエルフならではの精霊術とか使う娘。
森とか自然いっぱいな所だとさいつよコンビな感じで。
『アカシア』『アンネ』『セレン』
アカシアは守り特化の騎士で、カエデたちが不在時の司令塔で組織のナンバー3とかな感じ。
護衛とか色んな要素で、なんとなく某花騎士を彷彿と…。どうしてこうなった。
アンネは身軽で明るい女剣士、FEのワユ的な感じを目指すかも?
セレンはお姉さん系の魔法使いで、光とか風とか、水とか得意そう。