73.しんがっきもじっけん
春が来て、俺たちは新学年になった。何年になったのかって?もちろん3年だよ。俺とアリスは仲良く飛び級だ。ちゃんと飛び級した時のことも描写しろよ。
そしてなんとエリック先輩も飛び級だ。元々できた勉強に加えて魔法陣の研究を重ねているうちに戦闘でもなかなかの成績を残すようになり、いつの間にか高校でもトップクラスに強くなってしまっていたらしい。末恐ろしい人だ。
ていうか勉強はできたのな。魔法陣ばっか研究しててあんましてないもんだと思ってたよ。
まあ正直エリック先輩が後輩になったらややこしいなと思ってたからまだ同学年で都合が良かった。
そしてジェームズたちも無事入学してきた。アリスの手回しでマクロフリン家のどデカイ馬車にみんなで乗って高校まで来た彼らはかなり注目の的になっていた。
ハンナは目立つのが好きではないが、ジェームズ、コーディ、メイヴィス、シルヴィアの4人はプロ野球の優勝パレードの如く手を振っていたらしい。呑気なやつらだ。
そういえばシルヴィアは受験の時国語と数学に苦労したらしい。彼女は勉強があまり得意ではなく小学校でも苦戦していたが、魔術のポテンシャルが開花。入試では戦闘試験で大型魔獣を次々と岩弾で撃ち抜き、好成績を残したそうだ。確かに前から岩を射出するスピードはえげつなかったからな......。物になったのなら、俺もアドバイスをした甲斐があるというものだ。
魔法が出なくて補習を受けていたあの頃のシルヴィアが懐かしい。もう2年も前になるのかあ。
「やっほールーシャスくん!来たよー!」
「ルーシャス、何か考え事、してた?」
「ああいや、なんでもないよ。じゃあ今日からよろしくな」
俺がシルヴィアの思い出にふけっている間に、そのシルヴィアとメイヴィスがやってきた。
彼女たちを呼んだ理由は、もちろん魔法陣の研究を手伝ってもらうためだ。
魔力量の多い2人に手伝ってもらうことで、実験の効率が物凄く良くなる。
今までは大きな魔法の発動に必要な魔力量を持っているのが俺だけだったが、彼女たちがいれば同時に3つ発動させられる。俺の負担も減るしな。
ということで入学早々メイヴィスとシルヴィアを魔術室に連れて行くことになっていたのである。
「ルーシャス様、待っておりましたわ!メイヴィス、シルヴィアもお久しぶりですの!」
2人を連れて魔術室に着くと、先に着いていたアリスが出迎えてくれる。その表情は心做しかいつもより嬉しそうだ。
やはり同年代で同性の友達がいるのが嬉しいのだろう。
「やあやあ諸君、よく来てくれた!この研究を主導しているエリック・ハリソンだ!気軽に博士と呼んでくれたまえ!」
中に入ると相変わらずテンションの高いエリック先輩が自己紹介をする。そういやここ面識無かったんだな。
てかまだ博士って呼ばせようとしてんのかよ。俺もうエリック先輩が自称博士って言ってるの忘れてたよ。誰が呼ぶんだよ。
「はじめまして、博士。私、メイヴィス・ランドン。魔術には、自信がある。よろしく」
「やっほー博士!私はシルヴィア・マクブライド!土魔術なら任せといて!」
ええ、呼ぶんだ......。まあこの子たちは素直だからなあ。俺はずっと先輩って呼んでるから違和感が凄い。
「研究を手伝ってくれるということだったね。今はルーシャスくん、アリスくんと一緒に転移魔法陣の研究をしているのだが、とりあえず君たちにも魔力を流す役割をお願いしたい!」
そう言ってエリック先輩が取り出したのは魔法陣が描かれた2枚の紙。
これは、人物に照準を合わせる転移魔法陣がある程度形になってきたのでついでに研究し始めた入れ替えの転移魔法陣だ。
一方が持っている魔法陣に魔力を流すと、対応するもう片方の魔法陣を持った人と場所を入れ替わることができるというものだ。
今のところどう使うか考え中ではあるが、戦闘中に使えるのでは無いかと思っている。
研究中ではあるがリスクの少ない転移魔法陣なので彼女たちに手伝ってもらう最初のものとして選んだのだろう。
流石エリック先輩、そういうところはきっちりしてるな。
「よし、では魔力を流してくれたまえ!」
魔法陣を渡された2人は少し離れたところに立ち、メイヴィスが魔力を流し始める。
するとメイヴィスの姿がパッと消え、彼女がいたところに光り輝く半球体が出現した。
......いやハゲ頭じゃねえか!!
「おっと失礼、渡す魔法陣を間違えていたようだ」
「エリックさん、あなた魔法陣を描きすぎですわよ?ちゃんと整理しておかないと」
うんもっともだ。ハゲ頭と入れ替えられたメイヴィスの気持ち考えろよ!
あと何が起こったかわからずずっと同じ場所に立ってるシルヴィアの気持ちもだよ!
「えっとー、私これで良かったの?」
「うん良くないね。悪いのは先輩だけど。てかハゲ頭ちゃんとしまっといてくださいよ!増え続けてるんですけど!」
「いやー、眺めているとなかなか神々しく見えてきてね。寮の部屋にもいくつか飾ってるんだが、この輝きが素晴らしい!」
もうダメだこの人......。なんかフェチが特殊すぎて着いていけないわ。
「ちょっと、これは、どういうこと?」
魔法陣の描かれた紙の山から不満そうなメイヴィスが顔を出す。
確かにその量は描きすぎだわ。ていうかどこにハゲ頭置いてあんだよ。この中のどっかに「光魔法ハゲ頭」の魔法陣があるな?
ぷんすかと怒っているがゆっくりとした口調が逆に怖く感じるメイヴィスをなだめ、改めて実験に戻る俺たちだった。
ルーシャス「可哀想なメイヴィス......」
アリス「というよりこの作者がハゲ頭を好きすぎるんですわ。ギャグが古いんですの」
ルーシャス「ハゲ頭初登場の時も言ったんだけどなそれ。まあ作者のセンスが古いってことで」
ボロクソに言うやん......?泣くよ......?




