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【完結】からふるわーるど  作者: 仮面大将G
高校生編

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68.けついとおもわく

 夜が明け日が昇る中、俺たちは青年の案内で彼が住む村に来ていた。


 近くに森があるにも関わらず、石を積み上げて出来た石窯のような家々が並ぶ。

 やっぱりあの森には誰も近づかないらしい。この村には、魔獣と戦う術が全くないようだ。



「ヌタラを助けていただき本当にありがとうございました。心より感謝いたしますじゃ」



 俺たちに深々と頭を下げる老婆。彼女がこの村の村長らしい。

 ヌタラ、というのは俺たちを救世主と呼んだあの青年の名前だ。なんか俺たちの時代と名前のテイストが随分違うな。



「いえ、俺たちは魔獣が出てきたから倒しただけで......」



「それでもですじゃ。ヌタラは魔獣が出てきたら村に知らせる見回りの役目。もしあのまま魔獣に食われていたら、この村は全滅だったじゃろう」



 そうだったのか......。図らずも村を救ったことになったようだ。そりゃあ救世主扱いもされるか。


 しかし気になるのは伝説に残っている「暁の剣士」の存在だ。

 この村に魔獣と戦う術が無いとしたら、暁の剣士とその仲間たちはどこから現れたのだろうか?


 疑問を浮かべる俺を気に止めることなく、村長は話を続ける。



「実は、儂には予言の力があってのう......先日の予言では、近いうちに森より多くの魔獣が現れ暴れ回るが、救世主が危機を救ってくれると出ておるんじゃ。お前さん方がその救世主なのかもしれんと思っておる。どうか、儂らを助けてはくれんじゃろうか?」



「そんなはずは無いと思うんですが......ねえ先生?」



「その通りだ!我々はただのマッスル3人組!筋肉に従って森を調査しに来ただけだ!」



「勝手に俺たちもマッスルにしないでもらえます!?」



 通常運転のブラウン先生に呆れていると、今まで黙っていたアリスが口を開いた。



「いい加減にして欲しいですの!私たちは森を調べに来ただけと何度も言っていますわ!それを救世主だなんだと持ち上げて......自分で戦おうとは思わないんですの?」



「ア、アリス......この人たちは......」



「そんなことは何度も考えましたじゃ!!」



 アリスに彼らが武術を使えないことを説明しようとすると、村長が突然声を荒らげた。



「それでも、儂らには何もできんかった......!戦おうとした勇敢な若者たちは、みんな魔獣に食われて死んでいった!槍を作っても弓を作ってもヤツらには何も効かんかった!死んでいく村の若者たちを何度も見てきた!村の若者を食った魔獣は満腹になって森へと帰って行った!そんな中で現れたお前さん方は、儂らにとっては救世主なんじゃ!」



 はあはあと息を切らす村長。そうか......彼らは戦おうとはしていたんだな。

 魔獣に武器が効かなかったのは、恐らく戦いに臨んだ若者たちの適正武術と違った武器を使っていたからだろう。もちろん武術自体が発達していないのもあるだろうが。


 この時代には、武術という概念そのものが無かった。適正なんてのもわからないまま、ただみんな同じ武器を取って戦いに臨んだのだろう。そして多くの命が散っていった。


 それを1番見てきたであろう目の前の老婆は、藁にもすがる思いで俺たちに「助けてくれ」と頼んでいるのだ。

 これは、助けないわけにも行くまい。



「アリス、ブラウン先生、俺たちも戦いましょう。彼らには戦う術が無い。同じ人間として、戦う力がある者として、彼らを見捨てるわけにはいきません。それに、魔獣を倒してしまえば森の奥にも入れます。調査の近道になるかもしれません」



「ルーシャス様......なんてお優しいのでしょう!わかりましたわ!ルーシャス様がそう仰るのなら、私も力を貸しますわ!」



「本来ならあまり生徒を危険な目には合わせられないんだが、お前らの実力なら大丈夫だろう!この大腿筋に誓って最後まで戦い抜こう!」



 そう言うと太ももの筋肉をピクピクさせ始める先生。いや何に誓ってんだよ。俺の真面目な話を台無しにすんじゃないよ。


 ブラウン先生のマイペースに苦笑しつつ、俺は気合いを入れ直す。

 今にも森から魔獣が走り出てくるかもしれない。いつでも戦えるよう、準備しておかないと。



「予言では、満月の夜に魔獣が現れると出ておる。今夜は満月。ヌタラが襲われたのは前触れだったのやもしれん。十分、お気をつけてくだされ」



「ありがとうございます。俺たちも全力を尽くします」



「心配はないぞ!見てみろ!この見事な大胸筋を!」



「筋肉はもういいわ!何回やるんだこのくだり!!あと地味に毎回部位が違うのが細かくて腹立つわ!!」



 この人は本当に......。この誰にでも筋肉自慢をし出すところはどうにかして治せないだろうか。もう次から無視しようかな。


 まあそんなことは置いといて、俺にはもう1つ目的がある。

 それは、俺たちが前線で戦うことで暁の剣士とその仲間たちに接触することだ。


『英雄列伝』の挿絵には人間の魔獣の姿があり、暁の剣士たちはそれを倒したはずだ。

 闇の魔力を操る人間の魔獣。父さんと母さんの話によると、貴族と一般市民の仲間割れを起こさせて潰し合いに発展させるらしいが......この時代にはそんな身分制度は無い。

 もしかすると、その後の時代にも何度か人間の魔獣が現れたが、話が混じって伝わってしまったのかもしれない。


 まあ何にせよ、暁の剣士に直接話を聞くことができれば人間の魔獣対策に役立つ。

 俺の本来の目的は、人間の魔獣を倒すこと。元々は森の中にある魔力の根源を見つけ人間の魔獣にのみ接触する予定で、俺たちが表立って戦う予定は無かった。が、暁の剣士に接触できるならむしろ都合がいい。もうこの時代の魔獣は倒してしまってから根掘り葉掘り倒し方を聞いておこう。


 未だに大胸筋をピクピクさせている先生を尻目に、俺は暁の剣士が現れることを祈って夜を待つのだった。

ルーシャス「日常系コメディって話だったよな?どこいった?」


アリス「最近はコメディ要素が筋肉に委ねられてますわね」


ルーシャス「タイムトラベルで村の救世主になるとかめちゃくちゃ非日常なんだが!小学生の頃ののんびりした日々を返して欲しいわ」


アリス「まあでも、本筋が進むのはいいことですわ。多分これから高校生活も描写してくれますわよ!」


なんとか話進めるから頑張って!

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