67.あらわれたきゅうせいしゅ
「えっと......この森ってこんな感じですか?」
「らしいな。やっぱりお前が住んでるところはおかしいということが証明されたぞ」
今回はどうやらちゃんと200年前に来ることができたようだが......俺が知ってる森よりもかなり禍々しい。
時間帯は夜。どんよりとした曇り空に、ひしゃげたように曲がっている木々。森の入口からはまるで俺たちを呼ぶように風が吹く音がする。
「なんだか気味が悪いですわ......。本当にここはルーシャス様の家があったところなんですの?」
「正確にはこれからできるところだがな。グレイステネスはかなり物好きな先祖に恵まれたらしい」
笑えないジョークだ......。いずれ俺の家が建つであろうところは森の入口にほど近く、人が住んでいるような気配はない。
多分この森には近づかないようにしているのだろう。まあ見るからになんか出そうだもんな。俺だってこんなとこに住むのは嫌だ。
「そこの御三方!そんなところにいては危険だ!」
突然後ろから声をかけられる。振り向いてみると、若い男が焦った様子でこちらへ走ってきていた。
「旅の方ですか......?それにしては荷物が少ないようですが......」
「ああいや、俺たちのことは気にしないでください。少しこの森に調べ物をしに来ただけなので」
不思議そうに俺たちを見る青年に答える。黒髪に黒い目のどこにでもいそうな青年だ。
1つ特徴を挙げるとするなら、髪型が韓国風センターパートなところだ。いやなんでだよ。世界観も時間軸もバグるわ。
「この森に調べ物......?まさか、魔獣についてですか?危険です!やめておいた方が!」
「なーに、俺たちなら問題ない。ほれ見てみろ!この見事な腹斜筋を!」
「初対面の人に筋肉自慢やめてください先生!!あと見せる筋肉が地味だな!!」
着ているTシャツを捲りあげる先生を手で制し、青年に向き直る。「コホン」と咳払いをしてから改めて俺は話し始めた。
「失礼しました。俺はルーシャス・
グレイステネス。訳あってこの森に調査をしに来ました。危険だということですが俺たちなら本当に大j......ッ!」
突如耳をつんざくような咆哮が響き、森の中がざわつきだす。思わず振り返ると、物凄いスピードでこちらに飛んでくる物体があった。鳥の魔獣だ。それもかなり大きい。コンドルか何かが元になっているのだろう。
「ああほら魔獣が出てきてしまった!早く逃げましょう!」
焦る青年を横目に、俺はアリスに声をかける。
「アリス、俺が風を吹かせて動きを遅らせる。頭を狙える?」
「任せてくださいですわ!あんなに大きければ楽勝ですの!」
頼もしい返事に微笑んで答え、俺は魔獣の飛ぶ方向に対して逆風を吹かせた。
後ろにいるアリスはさっと狙いを定め、正確に頭を撃ち抜く。おおすげえな。流石弓術2級なだけある。
「2人ともぼーっとするな!俺の筋肉が知らせている!まだ来るぞ!」
「何が知らせてんだ!って本当に来た!!」
先生にツッコミを入れていると、筋肉の言う通り何体か魔獣が森から走り出てくる。
俺は側で固まっている青年を風魔法で森から少し離れたところへと運ぶ。
「あなたはそこに居てください!ここは俺たちがなんとかします!」
「へ?......あ、ああ!わかりました!」
まだ状況を把握できていない青年を置いて、俺たちは駆け出した。
「先生!俺たちは大型魔獣を狙いましょう!アリスは中型をお願い!」
「「了解だ(ですわ)!!」」
2人に指示を出しながら、俺はさっと魔獣の数を数える。大型が4体、中型が5体ってとこだな。これぐらいなら楽勝だ。
まずは得意の鎌鼬を出して全魔獣の足を刈り取る。
それでも尚闘争本能だけで向かってくる魔獣を大剣で一刀両断していく作業。もう擬似魔獣でなんどやったことか。
「GO!GO!マッソー!!」
ブラウン先生は独特の掛け声を上げながら魔獣に攻撃している。ていうかそれキ○肉マンのOPだな!?どこまで筋肉キャラ貫くんだよ!
一方アリスは少し小さめの中型魔獣を矢で撃ち抜いていく。全て目や頭に命中しているところを見ると、彼女が弓術1級になる日もそう遠くはなさそうだ。凄い技術だな!俺のせいで霞んでしまっているが、アリスも相当優秀な戦士に成長しているようだ。
そんなことを考えているうちに最後の大型魔獣を切り裂いて戦闘が終わる。
あんまり派手に暴れるつもりじゃなかったんだけど、つい倒しちゃったな。もしかしたら例の暁の剣士が出てきてくれたかもしれなかったのに。やっちゃったかー。
「あ、あなたたちは一体......?」
遠くから見ていた青年は目をまん丸にして俺たちを見る。そして彼はあろうことかこう叫んだ。
「き、救世主だ......!救世主が来たぞー!!」
え、俺たち調査に来ただけなんですけど?
アリス「やっと!私の!戦闘描写が来ましたの!」
ルーシャス「すごい雑な感じだったけどな。あれで良かったの?」
アリス「まあ書いてくれただけマシですわ。最近もはや私ただのボケ役になってましたもの」
ルーシャス「確かに......次回以降も戦闘描写ありそうだから、作者の成長に期待するかー」
成長......できると良いですが......。




