57.やりすぎじゅけんせい
「なんか......思ってたのと違うな!?」
冒頭から何だとお思いだろうが、今日は受験当日。そしてこれは俺が通うことになるであろう高校の校舎を見た感想だ。
俺も前世では健全な高校生だったからさ、高校のイメージって結構しっかり残ってるわけよ。まあコンクリートなり木造なりは置いといて、四角くて積み木で作れそうな形の校舎を想像するじゃん?
でも実際着いてみたらさ、天井が丸くできててバカでかいんだけど何これ?
ていうかどう見ても東○ドームです。本当にありがとうございました。
「あら、高校を見るのは初めてですの?」
「初めてだけど何だよこれ!デカすぎるだろ!野球かライブでもしないと割に合わないだろ!」
「これでも大谷○平には小さいですわよ?」
「なんで野球知ってんだよ!いやそんなことはどうでもいいんだけどさ、本当になんでこんなにでかいんだ?」
「以前も言いましたが、高校では武術も教えるんですの。超大型の擬似魔獣も相手に出来るよう大きく作られてるのですわ」
「そんなに本格的なのか......てことは超大型魔獣を倒すような生徒もいるってことか?」
「高校生で1人で倒せる人はいないですわね。何人かで倒すパーティーならいるみたいですわよ?」
アリスの言葉にほっとする俺。1人で超大型を倒せるようなのはいないのか。なら少なくとも武術に関しては小学校と同じくトップでいられそうだ。
てかそもそも俺がもし今騎士団に入ったとしてもトップクラスなんだけどな。武術1級はうちの家族と1等貴族ぐらいしかいないからな。
「ルーシャス様?そろそろ行きますわよ?」
おっと、もう本番だ。この日の為に夏休み明けから色んな本を読んできたんだ。絶対に合格してみせる!あわよくば首席で行きたいな。前世ではそんな経験なかったからな。
贅沢な野望を胸に潜めながら、アリスと共に校舎へ向かう。なんかよく見たら校舎の周りにホテルやら遊園地やらヒーローショーが見られる劇場みたいなのがあるんだけど。どんな学校なんだよ。
少し入る時に風が吹く入口から中へ入ると、木目調の廊下に古びた教室が並んでいる。案外中は普通のようだ。
席に着いて少しすると試験監督らしい先生がやってきて用紙が配られ、人生2度目の高校受験が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
国語と算数の試験を終え、場所は訓練場。次は戦闘試験だ。
基本教科の試験を終えたばかりだからか、周りの受験生達も少し浮き足立っている様子だ。
「ルーシャス様、試験の感触はどうですの?」
「引っかかるところは特になかったから大丈夫なんじゃないかな?アリスはどう?」
「私も完璧ですの!2人で首席だと良いですわね!」
もし俺がアリスと2人で首席を取ったら、他の生徒より1歳下の2人が首席を取ったことになる。そうなったら快挙だな。戦闘試験でも全力を出して挑もう。
「これより戦闘試験を開始する!!級認定試験と同じように擬似魔獣を倒してもらう!それでは始め!」
武田信玄のような見た目の厳つい試験官の合図で戦闘試験が始まった。
訓練場が広いだけあり、何人も散らばって同時に試験を行うようだ。
俺の目の前にも擬似魔獣が現れる。まずは小型魔獣が5体。本当に級認定試験と同じなんだなー。何級相当かで成績が決まる感じか。
呑気に考えながら小型魔獣を大剣の一振りで葬る。
次に出てきた中型魔獣3体を得意の鎌鼬で切り裂き、間髪入れず後ろから出てきた大型魔獣の首を大剣で刎ねる。
もはやお馴染みとなった超大型魔獣は、目線まで行くのがめんどくさいので最初に風魔法で足元を狙い体勢を崩す。倒れてきた魔獣を頭から一刀両断し、俺の試験はあっさりと終わった。
と思ったらもう1体超大型魔獣が後ろに出現。今度はサイの魔獣だ。あら、級認定試験より厳しい試験なのね。
そんなことを考えながらまずは巨大サイの角を強風で粉砕する。
魔獣が怯んだところで顔面から尻尾まで綺麗に切り裂き、今度こそ試験終了。
まあこんなもんか。しかしサイの魔獣は初めて見たな。擬似超大型魔獣は熊じゃなかったのか?そう思いながら振り向くと、鮮血を吹き散らしながら倒れていくサイの魔獣の姿があった。
......は?これ、本物の魔獣?
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「本っ当にすまなかった!!」
「あの、もう良いんで顔を上げてください」
「あらそう?よいしょっと」
「あっさりしてんな!そんで首から先に上げんなよ!」
「冗談だよ冗談。少しは気分がほぐれたかい?」
「まあ別に最初から何とも思ってないですけどね」
「そうかい?なら良いんだけど」
ふふっと笑うのはこの高校の校長、サイモン先生。
どうやら試験の最中に本物の超大型魔獣が紛れ込んで来て先生で対応しようとしたが止められず、試験会場の訓練場まで入ってきたところを俺が倒してしまったらしい。
「しかしたまたま魔獣が君のところへ向かってくれて良かったよ。あのルイスさんとフィエナさんの息子だからね、噂には聞いてたけど本当に実力者なんだね」
「まあ小さい頃から訓練を積んで来ましたから......倒したのは擬似魔獣と勘違いしてたからですけどね」
「またまた、そんなこと言って君なら他の受験生に被害が及ばないようどうせ倒していたんだろう?」
「それはまあ......そうかもですね」
「ならこちらからはただ感謝するしかないね。この学校を救ってくれて本当にありがとう。合否に影響は微塵もしないけど心から感謝するよ」
「微塵はしてくれ!?」
この世界の人にしては珍しく真面目でぶっ飛んだ冗談は言わないサイモン先生に困惑しつつ、俺は予想外に学校を救った英雄となってしまったのだった。
ルーシャス「これで受験は終わりか。そういえばアリスの戦闘描写がなかったけどどうだったの?」
アリス「私は大型までは倒しましたわ!今級認定試験を受ければ2級に上がれるかもしれないですわね」
ルーシャス「流石アリス!たまにはアリスの活躍も描写して欲しいね!」
善処します......。




