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【完結】からふるわーるど  作者: 仮面大将G
小学生編

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51/101

51.ばーすでー・あくしでんと

「「「お誕生日おめでとうー!!」」」



「「おめでとうございます、旦那様!」」



「みんな、ありがとう!」



 今日は父さんの誕生日。一家の大黒柱の誕生日なのでテーブルに並ぶ料理も気合いが入っている。ミーナちゃんが作った七面鳥の丸焼きは豚の形をしてるけど。いやなんでだよ!丸焼きにしただけで切ったりしてないだろ!どうやって焼く過程で他の生物に変わるんだよ!



「毎年盛大に祝ってもらって、なんだか申し訳ないな」



「何言ってるのあなた!うちの大黒柱なんだからみんなで盛大に祝うのは当然よ!」



「そうだよパパ!私も騎士団に入って、パパの大変さを実感してるんだから!見習い隊員でも疲れるのに隊長なんて凄すぎ!」



「はは、みんなありがとうな」



 妻と娘からの賛辞に照れくさそうに頬をかく父さん。以前は子どものように誕生日を喜んでいたのに、随分と落ち着いたものだ。誰目線だよって感じだが。


 まあ確かにジュリアお姉ちゃんの言っていることには頷ける。俺も最近はダスティンさんに直接雇用される形で騎士団でバイトをしているが、毎日毎日擬似魔獣を相手にして戦う訓練をしているのは相当大変だろう。俺も何度か戦っているが、やはり擬似とはいえ魔獣を相手にするのは一戦でも消耗する。ましてや本物の魔獣相手だと擬似魔獣と違って倒しても死骸が消えるわけじゃないから、倒せば倒すほど戦いにくくなってくる。そんな状況で常に剣術隊の指揮を取り、最前線で戦っているのは尊敬されて当然のことだ。



「ん?どうしたルーシャス?俺の顔に何かついてるか?」



「うん、目と鼻と口が」



「そりゃそうだろう!?」



 尊敬の眼差しを向けていると父さんに気づかれた。なんか恥ずかしいな。適当に誤魔化したけどああ見えて父さんは人の心情に敏感だからバレていることだろう。俺が生まれた時にも俺のアイコンタクトに気づいてたしな。それに関しては気づく方も気づく方だが。



「みんな、そろそろプレゼントを渡すわよ!」



「「「「はーい」」」」



 母さんの声を合図に、みんながプレゼントを取り出す。母さんのプレゼントは剣の形をしたキーホルダーのようなものだ。うわ、なんかあれ前世でめっちゃ見覚えあるやつだわ。小学校の修学旅行で買ったやつに似てる。男の子なら買っちゃうよねー。でも成人女性が成人男性にするプレゼントとしてはどうなの?



「これは魔法のお守り。あなたに何かあった時、1度だけ守ってくれるわ」



「俺のことをそんなに考えてくれて...俺は幸せ者だ!」


 ああ、ちゃんと意味があるやつだった。なんかごめん修学旅行の黒歴史とか言って。まあ木刀とかじゃなくて良かった。


 イーナさんとミーナちゃんは2人一緒に買ってきたようで、皮のブーツだ。



「私たち2人で選びました!」



「気に入っていただけると良いのですが〜」



「ありがとう!めっちゃかっこいいなこれ!大切に使うよ!」



 父さんの言葉に2人は目を輝かせる。プレゼントに子どもみたいに喜ぶところは変わってないんだが、こういうところが人を惹きつけるんだろうな。この人たらしめ。



「ルーシャスのは...」



 ギギギ...と引き攣った顔がこちらを向き、俺が持っているのが絵でないことにほっとした表情を浮かべる。そんなに絵は嫌かい?



「僕は皮の手袋だよ。ダスティンさんのお手伝いをしてお金を貯めて買ったんだ。ちゃんと良いの選んで来たから使ってよ?」



「おおありがとう!手袋は使い捨てが良いと思ってたけど、魔獣が増えて来た時のために良いの買わないとなって考えてたんだ!助かるよ!」



 やっぱ純粋に喜んで貰えると嬉しいな。お手伝いを受け入れてくれたダスティンさんにも感謝だ。



「私はねー、今から作るよ!」



 そう言うとジュリアお姉ちゃんは小さい箱のようなものを取り出した。



「これは魔力を流すと私たちの姿を写してくれる魔道具!1回しか使えないから、みんなちゃんと笑顔で写るんだよ?」



 この世界にもカメラみたいなものがあるのか。魔術と科学で文明は違っても、発明されるものは同じなんだな。頭の良い人が考えることは最終的に同じところにたどり着くってことか。



「じゃあいくよー!3.2.1!」



 ボンっと魔道具が爆発し、煙の中から1枚の写真が出てくる。なんかジョ○フのスタ○ド(ハーミット○ープル)みたいだな。



「これは...!すごいな!一生大切にするよ!イーナ、なんか額みたいなの無いか?」



「お探しいたしますね、少々お待ちを」



 その後イーナさんが額を見つけてきてくれて、うちに初めての写真が飾られたのだった。



 料理を食べて無事プレゼントも渡し、幸せな気分で各々自分の部屋に戻る。



「ルーシャス様、今年のプレゼントは絵じゃなかったんですね〜」



「ああうん、なんか毎年引かれてたから...」



「それはそうですね〜、今年は皮手袋で安心しました〜」



「さらっと失礼だな君は!?」



 ミーナちゃんにも引かれてたのかよ...ちょっと凹むよ?確かに前世から絵の才能はなかったけどさ...美術も授業態度だけは良くしてなんとか3を貰ってたぐらいだからさ...。



「ではおやすみなさいませ〜」



「うん、おやすみ」



 ミーナちゃんが魔力灯を消して部屋から出ていく。暗くなって部屋に睡魔がやってきて、俺は目を閉じようとした。



「っ!誰だ!!」



 突然気配を感じ、一瞬で眠気が吹き飛ぶ。どうやらやってきたのは睡魔だけではなかったようだ。魔力灯に魔力をぶん投げて明かりを付ける。

 そこにいたのは、小さな鳥の魔獣だった。



「おや、もう気づかれてしまうとはねぇ。」



 人語を話す魔獣...!?そんなの聞いた事ないぞ!?



「私が何者か知りたいんだろう?なら着いてくるといい」



「悪いが良い子は寝る時間なんでな。お前に付き合ってる暇はない。なんで人語を話せるのか知らないけどここで始末させてもらうぞ」



「ふふ、やれるものなら...っ!!!」


 魔獣が話し終える前に、俺は小さな鎌鼬を起こして首を刈り取った。



「気味悪いんだよ。人間の言葉を話す魔獣なんて。さっさと消えて安眠させてくれよ」



「なかなかやるっ...!見くびっていた...!」



 最後の言葉を絞り出すと、魔獣は絶命した。

 余裕こいてた割にはあっさりだったな。念の為鎌鼬の風圧はめちゃくちゃ強くしておいたが、そのせいで部屋の壁に傷が付いてしまっている。とりあえず死骸をどっかに吹き飛ばしてさっさと寝るか。


 魔獣の死骸を片付けようと近づいた時、膨大な魔力を感じて飛び退いた。



「我が使徒を一撃とは...想像以上にやり手のようだな」



「誰だ...お前...?」


 魔力の中心に人の影のようなものが浮かび上がる。



「我は、魔力の根源を支配する者。近い将来対峙することになるであろう。明日の15時とかでいい?」



「バイトの面接か!その言い方ならもうちょっと遠めの将来であれよ!」



「いいツッコミだ...ではさらばだ...」



 魔力が消え、何事もなかったかのように魔獣の死骸が転がっている。

 なんだったんだ...?ツッコミ褒められたんだけど。誰に何を褒められてんだよ。こういうのって宿命の敵みたいなのが出てくるタイミングじゃないのかよ。もっと真面目なやつであれよ。


 とにかく、これは明日父さんと母さんに報告だ。今までもなんとなく擬似魔獣と戦ってきたが、魔獣というものそのものについてもっと知る必要がありそうだ。


 とりあえず今は考えても仕方ない。父さんと母さんも眠ってしまっている。俺も今は眠って、一旦頭を整理しよう。


 そう決めた俺は、不気味な魔獣の死骸を風魔法で吹き飛ばし、床に就くのだった。

ルーシャス「コメディ色強かったけど遂にシリアスになるのか?」


アリス「でも敵みたいなのもボケてましたわよ?」


ルーシャス「ある意味ボケてくるやつは敵みたいなもんだけどな。ツッコミ疲れるし」


アリス「でもルーシャス様、ツッコミの時いつも嬉しそうですわよ?」


ルーシャス「マジ?俺も実は楽しんでるのか...」


無自覚ルーシャスくんでした。

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