48.おみまいのきせつ
流石のルーシャスくんも風邪には勝てないようで...他にも勝てないものがあるかも?
ジリジリと照りつける太陽が部屋の窓から差し込んでくる。
あまりの暑さに目覚めた俺は、自分が大量の汗をかいていることに気づいた。
「随分暑いな...まあこの時期なら当然っちゃ当然か」
季節は4月半ば。日本での7月くらいに当たる。夏も本番に近づいてきて、このくらい暑いのは仕方のないことだろう。
にしても本当に暑いな。なんだか暑すぎて寒い気もしてきたぞ。意味がわからん。
いや待てよ...この感覚、前世で味わったことがあるような...
「ルーシャス様〜、朝ですよ〜」
ミーナちゃんが声をかける。部屋に入ってくるなりミーナちゃんは俺を見て目をまん丸にした。
「ルーシャス様、顔真っ赤ですよ〜!?どうされたんですか〜!?」
「ああ、多分大丈夫。今起きr...うわっ!」
起きようとして顔から倒れてしまう。
「ル、ルーシャス様〜!?」
ミーナちゃんが飛んでくる。俺のおでこに手を当てるとすぐに手を離した。
「すごい熱です〜...!今日は学校お休みですね〜」
のんびりとした声に心配が混じる。ああ、やっぱり気のせいじゃなかった。これは、風邪だ。
自覚すると同時に俺は意識を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
ここは...どこだ?真っ白な天井に同じく白い蛍光灯が光っている。見覚えがない空間。
口の辺りに何か付けられているような感覚がある。
チラッと横を見ると、点滴があるのが見えた。
つまりここは、病院...?それはおかしい。この世界の病院はあくまで治癒魔法を施す場所で、点滴なんて科学的なものは無いはずだ。
それに蛍光灯。この世界では魔力灯しか使われていないのに、蛍光灯がここにあるということは...
「ーーー!!!ーーーーー!!ー!!」
何か声が聞こえてくる。かなり騒ぎになっているようだ。
「ーーー!ーーー!ーーーーーーー!!!」
多数の声が聞こえる中、ひときわ甲高い声が俺に近づいてくる。うっすらと目を開けると、女の子の姿が見えた。その顔には黒っぽい靄がかかっていて見えなくなっている。だがその首筋に流れるものを見て、彼女がどんな表情で俺を見ているのかがわかった。声に応えようとして口を開こうとした瞬間、再び俺は意識を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
コンコン、とドアをノックする音で俺は目覚めた。なんだか変な夢を見ていたような...
「はーい、どうぞ」
返事をしてから改めて自分の様子に気づいた。体は汗でびっしょりで、ベッドまで濡れてしまっている。あまりの気持ち悪さに上体を起こし、入ってくる人を待った。
「失礼しますわ!ルーシャス様、大丈夫ですの!?」
「え、アリス!?どうしてここに!?」
勢いよくドアを開けて入ってきたのはなんとアリスだった。
「ようルーシャス、随分と弱ってるな。塩をかけられたナメクジのモノマネでもしてるのか?」
「ジェームズも!?いやナメクジの例えは失礼すぎるだろ!」
「アニキー!!顔からぶっ倒れたって聞いてかけつけたでやんすよ!顔から倒れたって!顔から!」
「コーディ!?いやちょっとイジってるだろお前!」
「はあー、天下の天才様も体調不良には勝てないのね。所詮人間だったってことね」
「ハンナ!?いや別に俺神様でもなんでもないからね!?ただの人間だからね!?」
「ルーシャス、具合、悪そう。今なら、勝てる、かも」
「メイヴィス!?いや今このタイミングで襲いかかるのはやめてまじで。うんほんと切実に」
「ルーシャスくんだいじょぶ?なんか冷たい岩とか出そうか?」
「シルヴィア!?いや君の岩は高速で射出されるからやめてね!?病気とかじゃなくシンプルに物理でノックアウトされちゃうからね!?」
アリスに続いてぞろぞろと小学生たちが入ってくる。アリス以外全員ボケてくるのは何?風邪の俺にどんだけツッコませれば気がすむの?
「今日はみんなでお見舞いに来たのですわ!みんなそれぞれフルーツを持ってきましたの!食べて早く元気になって欲しいのですわ...」
なんかほんとずっとだけど純粋な俺の味方はアリスだけだな。なんか悲しくなってきた。
アリスの言葉を合図に、みんなは一斉にフルーツを取り出した。
それぞれ何を持ってきたのか見てみると...
「私はメロンを持ってきましたわ!」
「流石アリス!お見舞いといえばだよね」
「俺はランブータンだ ありがたく食えよ」
「珍しすぎるだろ!!せめてライチにしとけよ!」
「あっしは干し柿でやんす いっぱい食べたら元気になるでっしゃろ」
「もう加工されてんじゃねえか!フルーツの域出ちゃってるよ!」
「あたしはバナナチップスよ 甘いの選んできたんだから」
「加工パート2かよ!油で揚げたらむしろ体には悪そう!」
「私は、ラムレーズン、持ってきた。サラダに、入れたらいい」
「うんじゃあサラダ本体をくれよ!なんでみんな加工されてんだよ!」
「私は岩塩だよー!しょっぱいよ!」
「もうそれはフルーツに関連してもねえよ!岩しか持って来れないのか君は!」
やはりアリス以外は俺の味方ではないようだ。全員ボケてきてんじゃねえか!俺風邪だって言ってんだろ!
大量に並べられた謎のお見舞いの品と、ついでに持ってこられた今日の宿題が既に俺の手によって終わらされているのを見て、みんなが帰った後に入ってきたミーナちゃんは首を傾げるのだった。
ルーシャス「みんな割とひどくね?容赦ないんだけど」
アリス「私はちゃんとしましたわ!私は!」
ルーシャス「わかってるよアリス...俺の味方は君だけだよ...でも私はを強調してることで君が仕組んだようにも思えてくるよ...」
アリス「そ、そんなことはありませんわ!これはルーシャス様が少しでも楽しんでもらえるようにと!」
ルーシャス「やっぱりじゃねえか!まあちょっと楽しかったけど」
素直じゃないルーシャスくんでした




