47.みーなちゃんのしけん
暴走気味のミーナちゃん、今回でようやく暴走が終わるのでしょうか。
俺は今、走っている。
別に体を鍛えてるんじゃない。
急用がある、なんてこともない。
ただ前を走るミーナちゃんに手を引かれて走っている。
勘のいい方はお気づきだろうが、そう、目的地は魔術師協会である。
もちろん俺の魔術の練習の為ではない。
では何なのかと。
真実はネコ耳にあり。
協会に着いてから聞かされたが、遂に今日はミーナちゃんの魔術1級認定試験の日なんだそうだ。前と同じく学校から帰ってきた瞬間に「ルーシャス様、行きましょう〜」と手を引かれて連れ出されたから何にも知らなかったよ俺。
まあでも確かに最近ずっと魔術の練習に明け暮れてたからようやくこの日が来たなって感じだな。
ちなみに先日ミーナちゃんが水柱で俺とアリスを迎えに来たことを覚えているだろうか。
実はあれも魔術の練習の一環としてああやって移動していたらしい。だとしても災害レベルの水柱はやめて欲しかったが。見事なお花畑の中をのんびり歩いてたのに、ミーナちゃんが通った後はもうでっかい水路みたいになってて花なんか1つもなかったよ。
ミーナちゃん曰く、
「水をやったんだからお花はむしろ元気になったと思います〜」
とのことだがそんなかわいいもんじゃなかったぞ?だって水圧で地面抉れてんだもん。花如きが耐えられる水圧じゃなかったよ。水は圧力次第で兵器になるんだからな?
ということで俺とミーナちゃんは魔術師協会に到着し、試験の手続きをしている。
「我が協会の超大型魔獣は、世界一イイイイイ!!!!適うものはいないイイイイイ!!!!」
「おう!?!?」
いきなりのシュートさん登場につい面食らってしまう俺。なんか超久々に見た気がするな。8年くらい会ってないような気がするよ。
「ミーナちゃん、遂にこの日が来たな!」
「はい〜、なんとしても1級を取れるように頑張ります〜」
本当に合格する気があるのかという気の抜けた話し方だが、ミーナちゃんの目はメラメラと燃えている。
心做しかなんか熱い気がするぞ。あれ、ミーナちゃんの適正属性は水のはずなんだけど...。
あ、シュートさんの背中になんか紫外線照射装置的なのが付いてるわ。あれが原因か。
「では1番大きい練習場に移動するぞ!!付いて来るのだアアアアア!!」
相変わらずやかましいシュートさんに付いて、俺たちは馴染みの1番大きい練習場に向かった。
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「ミーナちゃん、準備はいいか?」
「はい〜、いつでも大丈夫です〜」
「ミーナちゃん、頑張って!!」
ミーナちゃんは俺の声にひらひらと手を振って応える。どうも気合いが入らないんだよなあ。
ミーナちゃんのゆるさに苦笑する俺を横目に、シュートさんはバーチャル超大型魔獣を準備する。
そういえば今まで説明が無かったが、魔獣というのは動物が魔法に当てられて魔力を持ったモンスターと化してしまったものだ。
その強さや大きさは元になった動物のそれに起因することが多い。まあ基本的に魔法に当てられるとサイズも大きくなるんだけどな。だから超大型魔獣なんてのもいる。これはわかりやすく言うとウル○ラマンくらいの大きさで、大体体長は40mくらい。普通は1人で対応する相手ではなく、複数人でモン○ンみたいに狩るものだ。
ということでそれを1人で倒せる者は世界に数人しかいない。俺もその1人な訳だが。
ちなみにうちのメイドさんを除いた家族は全員このバーチャル超大型魔獣を1人で倒している。2等貴族の中でもトップクラスの強さを誇る騎士の家系だ。1等貴族は騎士団団長であるダスティンさんが家長のマクロフリン家のみなので、実は多くの貴族が2等、3等貴族だ。だからマクロフリン家の一人娘であるアリスと結婚させようと色んな貴族が挨拶に行くわけだが...うん、なんかそれはもう申し訳ないくらいに俺一択になってしまっているのでとりあえずアリスの世代では他の貴族が1等貴族になることはないだろう。なんかすまん。
話が大分脱線してしまったが、魔獣は動物が元になっているのでその動物の見た目を残している場合が多い。超大型ともなると元々大きい動物が魔力に当てられているので、その種類は限られてくる。因みにバーチャル超大型魔獣は共通して熊の魔獣だ。俺がマクロフリン家で倒したのも熊の魔獣だった。
ということで練習場に約40mの熊の魔獣が出現した。
実際戦ってる時は必死だったからあんまなんも考えずに倒したけど、傍から見るとすごい迫力だな。パワ○ロなら威圧感が付いていることだろう。まあ前の打者とかいないから効果があるのかわからないが。
「では始めえええええい!!!!」
シュートさんのバカでかい声が響くと同時に巨大熊とネコ耳が動き出す。
どデカい図体に反して素早い動きで襲いかかる魔獣に対し、ミーナちゃんはとんでもない圧力の水弾を2つ発射。どちらも見事に左右の目に命中し、魔獣は視界を失った。
するとミーナちゃんは例の水柱を作り出し、魔獣に向かって手を突き出す。
水柱は魔獣を巻き込んで遥か上空へと伸びた。こちらにまで水しぶきがかかる中で目を凝らすと、上から巨大な熊が降ってくる。
ドシーーーーーーーーン!!!!!
一瞬震度5くらいの揺れが来て、水柱が消える。練習場の真ん中には大穴があき、ピクリとも動かなくなった魔獣の姿がその中心にあった。一瞬の出来事だった。
「そ、そこまでええええええ!!!!」
あまりの制圧具合にドン引きのシュートさんが試験終了を告げる。
ミーナちゃんがこちらに向かってピースサインを送って来たのでこちらも手を振って返した。
いや俺は引かないよ?だって散々実力があるのは見せられてきたからさ。今更一瞬で超大型魔獣倒したからって引きはしないよ?まあ最初に目潰しから入ったのは引いたというより怖かったけどね。悪寒がすごいよ。
こうしてミーナちゃんは無事魔術1級に合格し、グレイステネス家に多額の練習場の修復代が請求されたのだった。
ルーシャス「これでやっとミーナちゃんとの魔術練習から解放されるのかー、長かったな...」
アリス「お疲れ様ですの、ルーシャス様。これからは私との時間も増えますわねっ!」
ルーシャス「そうだな。作者がサボんなきゃの話だけどな。」
アリス「まぢで頼みますわよ!?」
すみません、頑張ります...




