39.とおいみちのり
休日に予定がないと何しようかって考えて結局一日中ゴロゴロしちゃいますよね。
で、それを月曜日の朝に後悔する。
でも––「ルーシャス様〜、お迎えの馬車が来られました〜」––今日から俺の休日はそんなのとは無縁だ。
「ルーシャス様〜?」
「はーい、今行くよー」
ちょっとだけおめかしした俺は、早足で玄関に向かった。
今日から俺は毎週末アリスの家に行くことになった。
昨日の晩ご飯のときに突然父さんが言い出した話なんだけど–––
「ルーシャス、お前将来はどうするんだ?」
「へ?どうしたの急に」
「いや、お前とアリスちゃんを会わせた時からダスティンさんとまめに連絡を取るようになってな。2人の、特にお前の将来についてよく話合ってるんだが……」
「僕の将来について?」
「ああ。単刀直入に言うとだな……ダスティンさんはお前に後を継いでほしいと考えてる」
「なるほど僕に…………………は?」
「あの人はルーシャスを王国騎士団の総司令官にするつもりだということだ」
「えええええ‼︎‼︎⁇⁇」
「既に実力は国でもトップクラスで剣と魔法の混合戦法だからなぁ。アリスちゃんにも気に入られてるし、お前ほど次の総司令官になるのに都合がいい奴はいないんだよ」
「そんなことn……いやそうかもしれないけど!」
否定しようと思ったが、ぶっちゃけ自分でも納得できてしまうからやめた。
っていうか納得しかできなかった。
「まあルーシャスには気の早い話だ。じっくり考えればいい。でも、今の感じだととりあえず騎士にはなるんだろう?」
「そうだね。今のところはそのつもり」
「アリスちゃんとはどうするんだ?」
「アリスさえ変わらなければ結婚しようと思ってる」
「そこはしっかり考えてるんだな……。ところで、お前ちょっと力の制御が苦手らしいな」
「……おっしゃる通りで」
何で父さんがそのことを……。
アリスがダスティンさんに喋ったのが父さんまで巡って来たのか。
恐るべしパパさんネット。
「立派な1等貴族の騎士は、突然暴風を吹かせたりしないよなー」
「うっ……」
痛いところを突いてくるなぁ……。
せっかく忘れかけてたのに。
「ルーシャスは確かに強力な戦士だ。でも騎士にはもっと細やかな技術やマナーが必要だ」
その通りだ。
別に思い上がっていたわけではないが、改めて言われて自分が目指す騎士と今の俺とがどれだけ遠いか思い知らされた。
「そこでだ!これから毎週末お前はマクロフリン家に行って、騎士として必要なことを学ぶことになった!」
「いやいやいや、どこからそんな発想が出て来たんだよ」
「話はそれだけだ。ルーシャス、頑張れよ!」
そう言うと父さんは爽やかにサムズアップして去っていった。夜勤だったっけ……?
––––という訳だ。
まあ見事にこの間のことを利用されたのだが、正直最近のミーナちゃんとの訓練で毎回死にかけてるから、ある意味ラッキーだ。
バーチャル超大型魔獣よりもマジカル☆暴走ネコちゃんのが怖い俺は、その後快く毎週末マクロフリン家に行くのを承諾した。やっぱり父さんは夜勤じゃなかったから、あの後すぐ帰ってきて、その時に伝えた。
ミーナちゃんはプク〜とほっぺたを膨らませていたが、メイヴィスの家を教えてあげたらボ◯トも真っ青のスピードで家を飛び出して行った。
後で外に出たとき、地面が抉られてそこに水が溜まっているのを見つけた。
どうやら彼女の移動手段は水圧のようだ。
どんだけ訓練したいんだよ。
イーナさん完全に1人で仕事してるぞ。
そういえば最近イーナさん疲れてるな。
突然88歳のおばあさんを連れてきて、時給7万で雇おうと母さんに話を持ちかけたり、どこで覚えたのか石焼ビビンバを朝ご飯に出したり、カレーのライスが酢飯だったり……。
なんかこのままだとイーナさんヤバい気がする。ミーナちゃん早く戻ってきてください。
俺を迎えに来た馬車がミーナちゃんの作った水溜りにはまって大騒ぎになったのはまた別の話。
イーナさんが疲れてるときの元ネタはこちら
http://ncode.syosetu.com/n5563cy/




