34.ふつうとはなんぞや
「–––ということでーす。分かりましたかー」
ファーノン先生のやる気のない声が教室に響く。
今は算数の時間。
前世の小学校で既にマスターしている俺は、退屈で仕方ない。
いや、前世でも授業態度はこんなもんだったか……?
……忘れた。まあいいや。
「えーと、じゃあー、ルーシャス君」
「は、はいっ」
完全に油断していた。話も聞いてなかったぞ?今何やってんだ?
「14−8はー?」
「6です」
『おおー』
引き算だったー。うわー、楽勝ー。
即答したから皆に注目を浴びるものの、これできなかったら俺ってどうなの?
まあそんなこと誰も知るはずはないけどな。
「ルーシャス様、ステキ…」
若干一名おかしい人がいるがほっとこう。
っていうかこれぐらいはアリスだってできるだろう。1等貴族は小さい時から家庭教師が勉強を教えてるはずだ。アリスができないわけがない。
「この問題はー、アリスさん」
「はいですわ」
「18−11はー?」
「7ですわ」
『おおー』
こちらも即答。
いややっぱり出来てるじゃないですか。
物欲しそうな顔で俺を見るんじゃない。
いくら見ても俺は「ステキ…」とは言わんぞ?
「じゃあー、次はコーディ君」
「あっしの番でやすね」
何故まだ喋り方が戻っていない。
もうそれがデフォルトの認識でいいのか?
「20−5はー?」
「えーと、うーんと、大根がこうで…卵を入れて…あ、餅巾着も入れないと…15でやすね」
「はいよくできましたー」
「やったぜ☆」
いやおかしいだろう⁉︎途中計算何やってたんだ?
完全におでん作ってたよな⁉︎
どうやって15が出てきたんだ…?
もういいや。だってコーディだもの。 み◯を。
でもよく考えたら、入学して間もないのにもう二桁の引き算やってるんだな。
年齢だけで見れば日本よりかなり教育は進んでるよな。
まあ日本で9年間かかるところを6年間でやっちゃうんだからそんなもんか。
ん、ちょっと待てよ。
それで考えるとミーナちゃんって相当凄くないか?
確か小学校と高校で一回ずつ飛び級してるから……9歳で中学校レベルの教育を終えたことになるね。
……………天才児じゃねえか。
俺は前世で高校3年生だったから出来て当然の教育なんだけど、ミーナちゃんは小学校3年生で中学校レベルを制覇してるわけだ。
うん、とんでもないね。
さすがミーナちゃん。俺たちにできないことを以下略。
タタタタタターン タタタタターン♪
「はーい、今日はここまでー」
『ありがとうございましたー!』
授業が終わって、俺たちは解放される。
本当このチャイムの音なんとかならないかね?
気が抜けてどうしようもない。
ちなみに、小学校の授業は午前中だけだ。
早いペースで進めるはずなのに何故午前中だけかって?
説明しよう!
この世界には地球と違って難しい社会構造はない!単純な王国だ。
よって、社会という教科が消える。
また、この世界には科学は存在しない!
学者といえば魔法学者のことだ。
よって、理科という教科も消える。
さらに、魔法は生まれた時点で才能が出るから、魔法学も消える。
まとめると、この世界で教える教科は、国語、算数のみだ。
たまに戦闘訓練もやるが、貴族の学校なので基本的に生徒は武術の5級以上に受かっている。
それがないのは学者の家ぐらいだ。
5級に受かっていることは、小型魔獣くらいは撃退できることを意味する。
つまり、自分で身を守れる子が大半だということだ。
戦闘訓練とは名ばかりで、武術で級を取得していない生徒の為の補習のような位置づけだ。
級を持っている生徒は参加しなくていい。
剣術、魔術共に1級の俺は、当然参加しない。
弓術3級のアリス、剣術4級のジェームズも同様だ。
ちなみに後で聞いたところ、コーディは槍術5級、ハンナは体術4級、メイヴィスは魔術4級だそうだ。
皆結構凄いんだなー。
「ルーシャス様、一緒に帰りますの」
アリスが俺に声をかける。
「うん……ってセバスチャンさんは?」
この間はいたのに。
いないとマズイぞ。グレイステネス家ではミーナちゃんが強奪されてるし……。
「お父様がルーシャス様がいるのなら心配ないと言われましたわ♪」
「おう、あいしー……」
ダスティンさん、あんたって人は……。
俺だってまだ6歳なんだぜ?
ちと信用しすぎではござらぬか?
「?ルーシャス様?」
「ああごめん。行こうか」
「はいですのっ♪」
「はあ……」
ここで一句。
花弁と 溜息多し 春の帰路。
もうちょっと俺を子供として扱ってください。
自業自得ですって?
はいその通りですすいません。
溜息をつきながらアリスと並んで帰る道が、異常に長く思えた俺なのだった。
…なんか最近ストレスたまること多くないか?
短編でからふるわーるどのルーシャス転生前の話を投稿したので、良かったら読んでください!
http://ncode.syosetu.com/n0463cz/




