22.しっぷーどとー
なんとかシュートさんに魔術師協会に登録してもらい、俺達は練習場に来た。
ミーナちゃんが選んだ練習場は屋根付きのグラウンドで、協会が管理する50の練習場のうちの最も小さいところだ。
この選択から考えると、ミーナちゃんは俺の魔力量が把握できてないようだな。
息子と相撲をとって容赦なく投げる父親みたいに「思いっきりやっちゃってください〜♪」とか言っちゃってるし。
実は俺の魔力量は5歳児の小さな体に対してやたらと大きく成長している。
今まで庭で練習していた時は、なるべく力を抑えて微風を吹かせる、といったことをやっていたが、増え続ける魔力量に俺の精神は限界を突破する寸前だった。
もうちょっと大人になればそこんところもうまくできるようになると思うんだけどな。
「ルーシャス様〜、まずは私を浮かせてみてください〜」
…舐めてやがるな?このネコ耳ちゃんは俺を舐めてやがるな?
よーし、望み通り浮かせてやろうじゃあないか!
俺は指先に全魔力量の1/5くらいを集める。
お星様になられると困るので少なめだが、これでも結構な威力はある。
「いっっけえええ!!」
俺はミーナちゃんに向かって魔術を放出した。
「え?きゃああああ〜!」
俺が起こしたのはつむじ風。昔見たアメリカのつむじ風をイメージしたんだけど…うん、確かにつむじ風だね。何か思ってたよりも随分デカいけど気にしない。
思いっきり吹っ飛んでいったミーナちゃんは、屋根にぶつかる前に逆風を吹かせてキャッチ。風マジ便利。
「ふにゃああ〜…」
ペタンと座りこんでしまうミーナちゃん。
吹っ飛んでも風でキャッチすりゃいいか、と気が大きくなった俺は追撃を仕掛ける。
お疲れのところ悪いんだが、俺の魔力量を舐めてた分の報いは受けてもらうぜ?
俺はかなりの魔力を手のひらに集中させる。
ミーナちゃんが俺の動きに気づいたがもう遅い。
「オッラああああ!!!」
俺が起こしたのは巨大な竜巻。
今度は意図的に大きくした。
「きゃああああああ〜!!!!」
竜巻は砂を濛々と巻き上げながら、物凄いスピードでミーナちゃんに向かう。
そしてミーナちゃんを巻き込んだ竜巻は、あらぬ方向に去っていった。
……どうしましょう?
「もう、本当に死ぬかと思いましたよ〜⁉︎」
「ご、ごめん…」
あれからミーナちゃんは無傷で帰ってきた。
咄嗟に真下に水魔法を撃って水圧で上空に逃れたらしく、エクストリームスポーツみたいに帰ってきた。
俺はミーナちゃんの生還を泣いて喜んで誤魔化そうとしたけど、生まれた時から一緒にいるこのメイドさんには通じないわけで…。
「これからはちゃんと魔力調整しないと、本気で犯罪者になりますよ〜⁉︎」
「はい…」
家に着くまでお説教は続きました。




