18.ぼくのおともだち
ジェームズの家は俺の家から10分ぐらいのところにある。
母さんのママ友さん達は大体この辺に住んでいて、皆2等貴族か3等貴族だ。
俺の家も2等貴族だが、1つだけ少し離れているのは他ならぬ両親のせい。
父さんと母さんが非常に騒がしい人達なので、2人が結婚したときに少し離れた土地をやってほしいと要望が殺到して今の家になったらしい。情けない話だ。
でも俺にとってこの距離は決してマイナスにはならない。
赤ん坊の頃からパワーファイターを目指して筋トレを始めたのはいいが、腕力ばっかりついて脚力の成長は人並みなので、少しでも歩くことができるのはありがたい。
それに、ミーナちゃんやイーナさんとおしゃべりしながら歩くのは何だか散歩のようで楽しい。
俺にとってはプラスのことばかりなのだ。
今日も早足で歩いていく学生を横目で見ながらミーナちゃんに話しかける。
「そういえばミーナちゃんって10歳でもうメイドやってたよね」
「はい〜、それがどうかされましたか〜?」
「いや、高校は出てないんだなーと思って」
「いいえ〜、高校も出てますよ〜?」
「えっ?でも年齢が…」
「私、小学校と高校で1回ずつ飛び級してるんです〜♪」
「飛び級⁉︎」
「はい〜、簡単でしたので〜」
「……なんてこった」
相変わらずのんびりとえげつないことを言う子だ。
知らないうちに誰かに恨まれてそうでおにーさん心配だぞ。
その後もいろいろと喋りながらジェームズの家に向かった。
ちなみにイーナさんは普通に小学校も高校も出たらしい。いつまでもキャラがつかめない人だ。
そうこうしてるうちにジェームズの家に着いた。
「こんにちは〜」
ミーナちゃんが気の抜けた挨拶をして玄関扉をノックする。
「はーいただいま」
女性にしては少し低めの声で返事が帰ってくる。数秒後扉が開き、綺麗な茶髪のメイドさんが出てくる。この家のメイド、セシリアさんだ。身長が150cmあるかどうかの小柄なミーナちゃんとは対照的に167、8cmはあるモデルさんのような人で、スカートから覗くスラッと伸びた白い足が眩しい。
「ルーシャス様、ミーナちゃん、ようこそオルグレン家へ!どうぞお入りください」
赤い目を細めながら言うセシリアさん。
非常にしっかりしたメイドさんながら愛想も良く、端正な顔立ちに浮かぶ笑顔は魔法の如く魅力的だ。こんな人の適正が槍術だなんてあまり信じたくない。
オルグレンというのはジェームズの家の姓だ。
もちろんこの家のメイドであるセシリアさんもこの姓を名乗っている。
「お邪魔しまーす」
「失礼いたしま〜す♪」
俺達はセシリアさんに続いて中へ入る。
白とベージュのシックな雰囲気の家は少し狭く、その代わりに庭がかなり広い。
その庭では既に短い銀髪に鋭い青い目をした少年が素振りをしていた。ジェームズだ。
「ようジェームズ」
後ろからジェームズに話しかけると、汗を拭いながら振り返った。
「ルーシャスか。よくぞここまで登ってきたな。」
「登ってねえよ!上り坂すら1回もなかったわ」
カ○ン様のようなセリフを言うジェームズ。すかさず俺もツッコミを入れる。俺とジェームズ流の挨拶だ。
ただし、ジェームズのボケは毎回違うけどな。当然それに応じて俺のツッコミも変化する。
「で、ルーシャス、今日はどうしたんだ?」
「分かってるだろ?」
「ああ、かくれんぼだろ」
「しねえよ!俺がお前ん家でかくれんぼしたことあったか?」
「……………………無いな」
「なんでちょっと考えたんだよ⁉︎稽古しかしにきたことねえd「そうだな」
「早えよ!何で遅いか早いかなんだよ⁉︎間をとれ間を」
「よし始めるかジョニー」
「聞けよ!あとジョニーって誰だ⁉︎」
「………………」
「無言で俺を指差すな!さっきまでちゃんとルーシャスって呼んでただろ⁉︎」
俺が一方的に疲れる、というのはこういうことだ。突拍子もないボケを矢継ぎ早に繰り出してくる為、自分を見失ってしまうのだ。
「さあこい」
「聞けって!そして何故お前は箒を持っている?」
はあ…今日も疲れそうだ。