12.おねえちゃんといっしょ
朝ー。
小鳥がさえずり、カーテンの隙間から金色の光が差し込む。
俺は薄く目を開けて僅かな時間朝の爽やかなひと時を楽しむーー。
あの日から囚われの身となった俺は朝早くにここを訪れる看守と共に過ごす毎日を送っている。看守がいない目覚めた直後の時間が俺の唯一の自由時間だ。
「ルーシャスくぅ〜ん♪おっはよおおぉぉぉぉおお!」
あれま、もうおいでなすった。あゝ無情。
ドタドタとやかましい足音を立ててやってきましたよ看守さん。今日はいつにもましてお早いご出勤で。
ここで看守さんのことをよく知らない人のために紹介しておこう。ていうか説明してないから誰も知らないですねすいません。
ジュリア・グレイステネス 9歳
俺の姉で変態。
俺の誕生日にビックリ箱の如く現れて以降、牢獄の看守に就任。毎日俺が逃げ出さないように見張っている、大平原の持ち主。
やってくる大きな足音に戦慄しながら、俺ことルーシャス一等兵とくまさん二等兵は体を寄せ合う。誕生日以降は俺の味方になってくれるのが二等兵だけなので、俺は最近いつも二等兵と一緒にいる。た、頼りになるんだからねっ!?
ドタドタド…キキーッ……タドタドタドタドタ
やかましい足音が俺の部屋の前を1度通り過ぎて急ブレーキをかけて戻ってくる。漫画みたいなことすんなよ。
「ルーシャスくぅ〜ん!!」
バターン!と乱暴にドアが開かれ、もの凄い勢いで看守が飛びついてくる。
俺は咄嗟に二等兵を間に挟んで衝撃を緩和する。な?頼りになるって言ったろ?
「はあ〜ルーシャスくぅ〜ん♪」
「あ、あのージュリアお姉ちゃん?」
「何?」
「毎日抱きついてくるのやめてくれない?」
「い☆や♪」
「はあ…なんで?」
「そこにルーシャスくんがいるから」
登山家か!山を前にしてワクワクすんじゃねえよ!脅威に晒されてるのは俺の方だけどな…。ああ、今日こそはめちゃくちゃに撫で回されませんように…。
セリフの割に山とは無縁そうな胸に閉じ込められた俺と二等兵は今日も身の安全を祈願するのだった。