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1.ぷろろーぐ

 何も見えない。目が開けられないが、何か真っ暗な場所にいるようだ。ここはどこだ?狭いし暗くて何もわからない。でも、とても温かい。何故かこの温かさに身を任すとこの上ない安心感に包まれた。


 突然頭の上が明るくなって、少しずつ押し出されるのを感じた。光の方へと押し出され、頭が外に少し出た。

 外に出なければならないという思いが知らず知らずのうちに生じて、光に向かってもがいた。


 いきなり明るくなって、全身が外に出たことを悟った。

 外に出たことにほっとして俺は口を開いた。



「おぎゃあ〜〜‼︎」



 俺の口から出たのはどんな言葉でもなく、大きな泣き声だった。そう、それはまさに…産声だった…。











 俺はとある高校の3年生だった。あの日もいつもと同じように授業を終えて帰路についていた。


 あいにくの大雨だった。頻繁に雷が鳴り響き、黒雲で覆われた暗い景色を幾度も照らした。

 早く帰ろうと歩調を早めた。前からライトをつけたトラックが走ってきて、俺は道の端に寄った。


 今思えばあのトラックが来なければ俺はまだ高校生として普通の生活を送っていたかもしれない。不運なことに、俺がトラックを避けた少し先はごみ捨て場で、その日は大量に空き缶や鉄屑が捨てられていた。ちょうど俺がそこを通った時に無情にも雷は俺の足元の金属の群れを目掛けて落ちた。


 俺は…死んだ。








 あの日、俺は確かに死んだ。だが今赤ん坊として白いベッドの上にいる。何故か前世の記憶を持って。隣では俺の母親であろう女性が眠っている。綺麗な金髪の美人だ。顔立ちは日本人とヨーロッパ人を足して2で割ったような感じだ。

 純日本人の平凡な高校生だった俺は、当然前世にこんな知り合いはいなかった。


 そして俺はいくつか嫌なことに気がついていた。

 まず俺がいるのは病院ではない。ベッドの横に座っている中学生くらいの女の子はメイド服を着ている。まだこれだけなら前世でもあり得なくはないが、メイド服の女の子は本来人間にあるはずのないそれをピクピクと動かしながら、穏やかな微笑を浮かべて俺達を見ている。それは俺が生まれたこの場所が、前世とは全く違う世界であることを示していた。

 さらによく見ると、女の子の後ろでゆっくりと揺れている長いものがあった。



 そう、ネコ耳と尻尾だった。


 普通の人間の耳とは別にネコ耳がついていた。

 ネコ耳メイドちゃんだった。

 オレンジ色のツインテールの髪の上にネコ耳だった。

 少し茶色がかった白のネコ耳だった。…しつこいか。



 もちろんこんなネコ耳メイドちゃんなんて前世にはいなかったし、部屋の中にある本棚の本には見たこともない文字が書いてある。







 どうやら俺が前世の記憶を持って転生したのは、異世界らしい。




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