こっちが泣きたい
今、ゆずのヤツ二人って言ったよな。
そういえば今日はミリーちゃんとルーフェルミちゃんを誘って、近くの湖まで行ってピクニックがてら素材採集してくるって言ってたし、十中八九、その二人からの入れ知恵に違いない。
泣ける。
酒場に行けばほぼ村中のおっさん達が集まってんじゃないかってな中でゴリッゴリに説教され、そのうえ女性陣までもがゆずの味方だとは。
四面楚歌感が圧倒的すぎない?
なんかもう怒る気にもならなくて、俺は力なくゆずに尋ねる。
「ミリーちゃん達から、なんかアドバイスでも貰ったのか?」
「うん! 陸は鈍感だから、ことあるごとに好き好き、一緒に居たいって言……」
ほぼほぼ白状してから、ハッとした顔されても。
「なるほどー。お前はホント、人の言うこと素直に聞くようになったよなぁ」
むしろ感動するわ。あの荒くれ者がここまで進化するとは。
妙な感動で若干冷静さを取り戻したオレとは逆に、ゆずはもう面白いようにテンパっている。真っ赤になったり青くなったりしてるけど、別にそんなに慌てなくても、もうおおかた状況は読めたから。
「大丈夫、別に怒ってない」
「ち、違うの! あの……ごめん。でもミリーに言えっていわれたから言ったんじゃなくて」
「分かってる分かってる」
「ミリーは私が相談したから、アドバイスしてくれただけで」
まさかの篤い友情。ミリーが悪く思われないように必死にかばおうとしてたのか。ちくしょう、なんだかこっちまで優しい気持ちになるじゃないか。
「だって……だって私、分かんなかったから……」
「うん? え、なにが?」
幼なじみの成長にまたまたジーンとしていたというのに、ゆずはまだ何事かを震える声で言いつのっている。
「い、今まで、誰か好きになったことなんかなかったし」
待って、なんか恥ずかしいこと言い出した!
「もともと男なんだし!」
「ちょ、ちょっと待った」
「自然に女の子らしいアプローチとかできないし!」
「いやいや充分だから!」
「嘘ばっかり! 昨日までこれっぽっちも気づかなかったくせに」
ぐ……それを言われると弱い。思わず口ごもったら、ゆずも悲しそうに目を伏せた。
「考えたけど……なんて言えば陸がときめいてくれるのかなんて、想像がつかなかったんだもん……」
もんとか言うな! とか言ったら本格的に泣きそうで言えない! ゆずのヤツ既に爆発しそうなくらい赤いし。空も心配そうに「クウ~ン……」とか鼻鳴らしてるじゃねえか。
「と、ときめいてって……そういうの考えなくていいから! お願いだから自然体で!」
「それじゃだめなんだもん……」
「泣くなって~~~!!!」
こっちが泣きたい。なんでだよもう……乙女力、強すぎない?




