おかしいと思った!
「わあ~なんて名前つけよう」
楽しそうにそんなことを言いながら、ゆずも弾んだ足取りで家に入ってくる。良かった、この調子なら昨日みたいな恋愛的な話にはならないだろう。
まだ心の準備ができてないからな、これなら普通にやりすごせそうだ。マジで助かる。
「うーん、じゃあ……空!」
「ソラね、はいはい。リョーカイ」
「なにその興味ない感じ。理由とか聞いてみようって気にならない?」
なんてこった、面倒くさいこと言いだしおった。ぶっちゃけ名前なんか、ちゃんとした名前がついてりゃどうでもいいんだが。ほら、仔ウルフだって全力でしっぽ振ってるし、別にいいんじゃね?
家に帰り着いた安心感で、疲労回復薬を無意識に取り出してあおり飲む。
ただ、ゆずがあまりにも聞いてほしそうな顔をしてるから、俺はとりあえず軽く話題に乗ってやった。
「別に、いい名前だと思ったけどな。ちなみになんでその名前?」
えへへ、とゆずは照れたように笑って、上を指さす。
「青い空、の空だよ。なんとなく陸と対っぽいでしょ」
「ふーん」
「もう、反応悪いなぁ。陸と空、揃って一緒に……私のそばにいて欲しいって願いを込めたのに」
「ガハッ!!!!!」
「りく!!!!?」
ゲホゴホ、ガハッっと盛大に咳き込みむせる俺の背を、「ご、ごめん! 大丈夫!?」とゆずは一生懸命にさすってくれるが、さすが疲労回復薬、気管に入ったときのダメージが半端ない。
「ちくしょう……カハッオエッ! さいあく……だ」
リストといい、コイツといい、なんか俺に恨みでもあんのか。……いや、あるのか、そういえば。
「ご、ごめん、ちょっとくらいドキッとしてくれないかな、と思って言ってみたんだけど」
くそう、わざとか。このやろう。そんな心配そうな顔するくらいなら、言うんじゃねえよ。心臓に悪いわ。
「俺の心臓が死ぬ。その攻撃は勘弁してくれ……」
力なくお願いしたら、ゆずはなぜか頬を染め、目をキラッキラに輝かせた。
「それって、ドキドキしてくれたってこと!?」
ひええ、なにこの子。怖い! なんで喜んでんの!?
「そっかー、ちゃんと陸も意識してくれてるんだ。嬉しい!」
空と名付けられた仔ウルフをきゅっと抱きしめながら、ゆずはめちゃめちゃ嬉しそうに跳ね回る。
「あー、やっぱり二人の言う通りだった! 良かったぁ!」
その言葉に、さすがの俺もピンときた。
やっぱり! おかしいと思ったんだ! ゆずのヤツ、今までに比べて急に攻めてきやがると思ったら、さては誰かに入れ知恵されたんだな!?




