仕方がない、帰るか……
あああ~ついにラツィオの家からまで追い出されてしまった。他に行くあてもなくて、俺はとぼとぼと森の中を歩いていく。
「クゥゥゥ~ン……」
明らかにテンションが下がった俺を心配してか、仔ウルフが心配げに俺を見上げてくるのが切ない。
なんだよもう、魔物のくせに可愛いじゃないか。
腕の中の毛玉をモフモフと撫でれば、仔ウルフは気持ちよさそうに目を閉じた。
可愛い……癒やされる。
腕の中の暖かさになんとなく勇気をもらって、俺はついに家に帰る決心をした。こんな効果を予測していたとしたら、ラツィオってすげえな。
扉の前で深呼吸。たぶんゆずだってもう、とっくに帰り着いている頃だろう。よし、開けるぞ!
震える手でドアノブをつかもうとした瞬間、ドアが勢いよく開いた。
「おっかえりー、陸!」
「ぐはっ」
「ギャン!」
突然開いたドアがガツンとぶつかってきて、俺も仔ウルフも吹っ飛ばされた。
「いってええ~~~」
「ゴメン! 大丈夫!?」
「馬鹿力なんだから加減して……っていうか、大丈夫か!?」
俺の腕である程度は守られていたはずだが、仔ウルフだけに鼻先とかにドアが当たったかも知れない。慌てて腕の中を確認したら、仔ウルフがピスピスと鼻を鳴らしていた。
ああ、怖かったな、可哀想に。
でも、別にドアが当たったりはしていなかったみたいだ。良かった。
「ええ!? なにこの子、かわいい~!!!」
まだ地面に尻餅をついたままの俺の腕から仔ウルフを取り上げて、高く持ち上げたまま、ゆずはくるくると回る。たいそう仔ウルフがお気に召したらしい。
そのままほっぺをすりすりと仔ウルフにすりつけている姿は、仔ウルフこみでなんとも平和だ。
「そいつ、ラツィオから。お前が飼うことになってるって聞いたんだけど」
「うわぁ、じゃあ躾が終わったんだね。お座りできるようになったの!?」
「ばう!」
誇らしげに胸を張る仔ウルフは、すでに思いっきり尻尾を振っている。なんだよ、魔物のくせに誰にでも愛想のいいヤツだな。
「なんだよ、知ってたのか」
「うん、ラツィオが仔ウルフを訓練してるってのは聞いてたんだ。こんなに可愛い子だったんだね」
やれやれ、でもおかげでなんてことなくゆずと話せた。どんな顔して会ったらいいのか……なんて心配してたけど、ラツィオのおかげでごく自然に家に入れそうだ。感謝だな。
内心ほっとしつつ、俺は地味に立ち上がってケツについた土をはらう。
「ほらゆず、もう家に入るぞ」
仔ウルフと戯れるゆずを促して、俺はあれほど帰りづらかった家にやっと足を踏み入れた。




