現実に戻れると思うか?
だろうな、そもそもコイツがゲームしてるとこなんか、ここ数年見た事もないしな。
最初は教えてもみたんだけど、堪え性のないコイツは格闘ゲームでは技が出せないと怒り、RPGでは道に迷って「二度とやらねー!」とふて腐れ、カーレースではわずか三十分でコントローラーを壊して俺からしばらく出禁をくらったレベルでゲームとは相性が悪い。
多分ゲームには嫌な思い出しかないだろう。
意味不明な状況に気持ちがついていかないんだろう譲は、「マジか」「クソッ」「冗談じゃねーぞ!」なんてブツブツと呟きながら、イライラと肩を怒らせて足早に歩いていく。周りを見る余裕もなさそうだ。
ただ、ひとこと言わせてほしい。
めっちゃ恥ずかしいんですけど。
これが素の状態の譲のガタイなら、多分道行く人たちを恐怖で震え上がらせたところだったんだろうけどさ、今の見た目は150cmそこそこの小柄で華奢な女の子なワケよ。
怒りをあらわに歩くその後ろを、俺が困った様子でついて行っているせいもあって、すれ違う人たちに「あらまあケンカでもしたの?」「兄ちゃん、ご機嫌とっとけよ?」的な生あったかい目でめっちゃ目配せされるんだって。
気まずくて若干距離を取ろうとしたら、譲が急に、真剣な顔で振り返った。
「なぁ陸、これ、寝て起きたら現実に戻れると思うか?」
「うーん、どうかな。そうだとしたらむしろ、この世界をちょっと楽しみたいくらいだけど……クリアしないと帰れない、とかだとさすがに凹むよな」
譲が不安そうだからあんまり怖がらせる事は言いたくないが、それでも何の根拠もなく楽観的な事は言えない。なんせ、なんでこんな事になってるんだか、俺だって分かんないわけだし。
「クリアってどれくらいかかるんだ?」
「開拓もウリのゲームだったからな……一定のレベルまで村がでかくなって、隣の国への街道ができるのがクリア条件なんだよな。だいたい3年でひと区切り、最長10年トライ出来た」
「じ、10年……!」
頼むからその愛らしい顔で、白目は止めてくれ。
「おい、何とかなんねーのか! 10年も女のままなんて、ヤダぞオレ!」
「ちょっと待ってろ、今考えてる」
確かに普通はそれくらいかかる。でも、主人公が二人なら?
調合も、材料の調達も倍出来る。男主人公専用、女主人公専用に用意された採取場所やイベントもどちらも確保出来るかもしれない。
時間の経過でしか開かなかったイベントもあるけど、もしかしたら、専用イベントを同時に発生させたりすれば、裏技みたいにもっと早くエンディングが訪れたりしないだろうか?
俺一人ならこの世界を楽しむのもありだろうが、譲はさすがに可哀想すぎる。
俺が、なんとかしなきゃ。
仁王立ちの癖に不安そうに俺を見つめている譲を見ながら、俺は全力を尽くそうと誓った。




