ゆずの気持ちは
「あのさ、ゆず」
「なに?」
「俺、最初は最短でこのゲーム、クリアしようと思ってたんだ」
「うん……そうだよね」
「でもさ、クリアしても元に戻れるっていう根拠もないじゃん?」
「うん。逆に、ここでの一生を全うしても、あの日あの時あの場所に戻れる可能性もあるって、前に陸、言ってたよね」
「ああ、そうだ。だから、ここは割りきって、ゲームだの何だの考えずに普通にここで一生を終えるつもりで生きていいんじゃねぇかって、今思った」
「……」
「ゆずもこの世界が嫌いじゃないなら、もう全力でこの世界で生きようぜ? ゆずはしっかり女の子になって、好きな男と結婚してもいいんじゃね? 子供産んで、育ててさ。まぁ別に冒険に明け暮れたいならそれでもいいし」
ゆずの顔がクシャッとゆがんだ。泣きそうな、困ったような顔。
「気持ち……悪くない?」
「ない」
ごめん、ちょっと前までは気持ち悪いと思ってた。それに……多分俺、譲がいなくなるみたいで、本当はちょっと淋しかったんだと思う。
「好きなヤツとか……いるのか?」
ズバリと、切り込んでみる。
かつてないほどドキドキした。
まさかゆずとコイバナ的話をすることになるとは、こいつが身長190センチだった頃ですら考えた事がない。まったく、人生何が起こるか分からないよな。
まあ、二人してゲームの世界に入り込んで、譲に至っては美少女になっちまってるわけだから、そう考えりゃ何が起こったっておかしくはないか。
そう色々と考える暇があるくらいには、ゆずの返事はゆっくりとしたものだった。俯いて、細い肩をさらに小さくすぼめた頼りない姿は、やっぱり昔の……譲だった頃の面影は微塵もない。
逡巡したあと、ゆずは、絞り出すようにこう言った。
「……わ、からない……」
さんざん待たせて、結果それか。
……と思わんでもないが、ゆずなりに真剣に考えた結果なんだろうと納得する。まあまだ一年も経ってないしな、そこまで一気に進まれたら俺だってビビるわ。
「そうか」
「うん……まだ、恋愛の『好き』じゃないと思う。ただ、怖くて」
「怖い? 何が?」
「自分でも、日に日に女らしくなってくの感じてて……甘い物、好きになったし、リボンとかフリルとか……可愛いって思うんだ」
頭をハンマーで殴られた気がした。
「最初は女の子のちょっとした仕草にドキっとしたのに、この前……」
「ちょ、ちょっと待って」
何? ついにヤローのジェントルメェンな振るまいにトキメイタとでも言いだすつもり!?
何これ、いたたまれない。




