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このケンカっぱやさは間違いない

なんというか、せっかく可愛いのに、見た目に反して言葉が荒いな。しかも何故かファイティングポーズとってるし。



「いや、誰って……君こそ誰? ていうか、ここドコ?」



明らかに俺の部屋じゃねぇわ。どうなってんだ一体。


俺の言葉に、美少女はキョロキョロと辺りを見回し……一瞬で青ざめた。どうやら彼女も俺と同じくらい、今のこの状況が理解出来ていないらしい。


ここはひとつ、男の俺がしっかりしなくては。



「とりあえず落ち着いて……」


「なんだよここ! 陸は? てめえ、陸をドコにやった!」



俺の言葉を思いっきり遮って、ぐいぐいと詰め寄ってくる美少女。怒ってても可愛い………ん?



「いま君、陸って言った?」



俺の名前だ。


なんでこの子が、俺の名前知ってるんだ? 俺は恐る恐る尋ねた。



「あのさ、俺も何がなんだか分からないんだけど……君、名前は?」


「うるせぇ! 陸は何処だ!」



怒鳴ると同時に、小さな拳で俺の胸ぐらを掴んでぐいぐいと締め上げてくる美少女。


その眼は殺気すら孕んで、剣呑な光を放っている。


このアホさ加減丸出しの受け答え。


イキナリ人の胸ぐらを掴む堪え性の無さ。


容赦なく殺気をぶつけてくるケンカっぱやさ。


めちゃめちゃ既視感がある。


ちょっと待て、なんだか嫌な予感がする。イヤでもまさか、そんなはず……。



「とっとと吐け! 一発入れられてーのか!」



あああ……なんて乱暴な言いっぷり。


声も姿もまるっきり違うのに確信出来るとは、幼馴染ってのも伊達じゃなかったらしい。



「お前、もしかして譲?」


「なんでオレの名前を知ってる!? 誰だてめえは!!!」



俺は心の中で号泣した。


せっかくの美少女が中身のせいで台無しだ。美少女が嫌いになったらどうしてくれるんだ。


腹パンで一瞬目をつぶった隙に目の前の大男が美少女に変わり、自室までもが見覚えのない部屋に変わっているという信じられない出来事を前に、いっそ気絶したいところだが、このアホを放っとくわけにもいかない。


闘争心むき出しで俺の胸ぐらをグイグイと前後に揺らしている見た目美少女の華奢な腕を、がっちりと掴んでみた。



「……っ!」



痛そうに顔を歪める美少女。どうやら力は俺の方が上らしい。


悔しそうに俺を見上げて睨む顔すら可愛いのは、けっこう反則だと思うんだが。中身は譲の癖に。



「てめえ、離しやがれ!」



うん、セリフと顔のギャップがスゴイ。


涙目で、それでもけんか腰な態度は変わらないあたりが、譲らしくてちょっと笑える。


思わず口元が緩むのを感じながら、俺はできるだけ冷静に話しかけた。



「まったく、ちょっとは落ち着けよ。俺が陸だよ、譲」



案の定、美少女が一気に剣呑な空気を増した。

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