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冒険のお供は

「あら酷い。格安でついてきてあげてるのに」



噛み付くようにキャンキャン吠える譲にも、もちろんミランダ姐さんは動じない。軽~くあしらいながらどんどん湖に向かって歩を進めて行っている。


序盤からかなり強いミランダ姐さんは、出てくるモンスターも瞬殺だ。


踊るようにひらりと動いたと思ったら、もう戦闘が終わっちゃってるんだよな。


身に纏ったヴェールが武器というなんとも優雅な戦い方で、俺たちが存在に気付いた時にはモンスターは殺られていて、俺たちの経験値もなんだか上がっているという素敵仕様。


ミランダ姐さんマジで凄い。



「こんなセクハラ女がいたら、水浴びなんか落ち着いて出来るはずねぇじゃねぇか!」


「まぁまぁ、水辺は特にスライムが出やすいんだよ。お前はそれでも見た目は女の子だからな、俺がついとく訳にはいかないだろ」



っていうのは建前で、実際はミランダ姐さんが冒険先で新しい採取ポイントを教えてくれるイベント狙いなんだけどな。


そんな事とはつゆ知らず「スライム」の単語にぐっと詰まった譲を見て、ミランダ姐さんはとっても妖艶な笑みを浮かべた。



「スライムが怖いの? 可愛い」



さすがに恥ずかしいのか、譲は真っ赤になって黙ってしまった。まぁな、今の可愛い姿ならなんとなく許されるが、男としちゃ恥ずかしいポイントだよなぁ。


でもこればっかりは仕方ない。



「ほらゆず、ちゃんとお願いしとけ」


「………」



人にお願いなんてし慣れていない譲は、口を開けたり閉めたりしながら言葉を探し……結果、



「その……よろしく、頼む」



なんとも残念な頼み方になってしまった。ほら、ミランダ姐さんも苦笑してるじゃないか。



「ええ、もちろん守ってあげるけど、ゆずちゃんはちょっと言葉遣いがなっていないわ。元気なのも可愛いけれど、もうちょっと女の子らしい話し方を、私がみっちりと教えてあげる」



ミランダ姐さんの軽いウインクに譲が蒼白になっているが、ここは諦めてもらおう。


俺もちょっと、譲の乱暴すぎる言葉遣いが気になってたし。顔と言葉遣いのギャップがあり過ぎるもんな。行動も含め、改善は必要だと思ってたんだ。


ただ幼馴染としては、姿が変わったからって急にバリバリに女言葉を使う譲も気持ち悪いわけで、もうちょい譲がこの世界に慣れてからでもいいかと思ってたからさ。


しかしその後のミランダ姐さんの手腕は見事だった。


雑な言い方や荒い言い方をすればすかさずお仕置きという名のセクハラにさらされる。



採取と水浴びを終えて街に辿りつく頃には、女性らしい物言いだけでなく、ミランダ姐さんの指令があれば、ぎこちないながらも『はにかんだ笑顔』が出せるまでに譲は成長していた。


今だ女に手をあげられずに逃げ惑う譲が可哀想になるくらいのスパルタだった事は言うまでもない。


ミランダ姐さんについてはその矜恃、捨ててもいいんじゃねぇかな。

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