ミランダ姐さんに遭遇
振り返れば案の定、口元のホクロが婀娜っぽい、ミランダ姐さんがご登場あそばしていた。
150センチそこそこの、小柄な譲を後ろから抱き締めてるもんだから、譲の肩にはミランダ姐さんの麗しいお胸様が乗っかっているような状況だ。なんとも羨ましい。
そして譲は、かつてない状況にどうしていいか分からないらしく、真っ赤な顔でただただ狼狽えている。確かにあの状況じゃ、顔も動かせないよなぁ。
妖艶に微笑むゴージャス美女と、その腕の中で恥じらう儚げ美少女。何度見ても眼福だ。お気に入りのスチルを、生で見られる日が来ようとは!
「り、り、りく……! た、助け……」
おっと、ついつい見惚れてしまった。
可哀想に、譲がスライムにまとわりつかれたレベルに情けない声をあげている。
イカツイお兄さんには絡まれ慣れてても、妖艶美女に抱き締められる事なんか、これまでなかっただろうしなぁ。
いい想い出になったな、譲。
「な、何、微笑ましい顔してんだよ、助けろよバカっ!」
お、少し回復して来たか? ミランダ姐さんはスキンシップめっちゃ過剰で、特に女主人公には容赦がない。ハグなんか挨拶だ。役得だと思って慣れてくれ。
「うふふ、見た目よりも元気がいい娘なのね、気に入ったわ」
譲のほっぺにチュッと軽いリップ音を立ててから、優雅に体を離すミランダ姐さん。
ベリーダンスっぽい踊りも嗜む、渡りの商隊の踊り子兼用心棒なミランダ姐さんは、動きひとつとっても流れるように美しい。
一方の譲は、魂が抜けたような顔になってしまった。……頼むから白眼は止めろ。
すっかり気に入られた譲を生贄に、ミランダ姐さんに晩メシをおごって貰い、生活必需品を買って帰途につく頃には、既に外は真っ暗になっていた。
しかも譲がいるだけで、あっちでもこっちでもオマケして貰える。今日だけで美少女特典の凄まじさは充分過ぎるほど理解した。買い物には絶対に譲を連れて来よう。
「死ぬかと思った……!」
家に帰りつくなり疲労感が襲って来たらしい譲は「もうダメだ……なんなんだあの女……」と消え入りそうな声で呟きながら、気絶するように眠ってしまった。
よっぽどミランダ姐さんのセクハラが堪えたみたいだな。
ぴくりとも動かずに眠る譲を横目に見ながらデカいタライに水を張り、腰から下だけでも、と水に浸かる。気候はほどほどに暖かいが、さすがに井戸水は冷たかった。
中身が譲とはいえ、女の子の柔肌には可哀想かも知れねぇなぁ。
寝顔は天使のあどけなさなだけに、つい仏心が出てくる。
湖だったら全身浸かる事も出来るし、ここまで冷たくないかも知れない。今日採取作業をしたから、明日にはギルドで近場の湖の情報が手に入る筈だ。
譲を連れて、行ってみてもいいかも知れないな。




