目の前の儚げ美少女は…?
「まったくもう、なんなんだよお前。たまにはケンカしないで帰って来てくれよ」
毎日手当てすんの面倒なんだよ、とグチりながら、俺は目の前のアホの、ゴツゴツとした傷だらけの拳に包帯を巻いていた。本当に面倒臭い。
コイツときたら、登下校という何の変哲もない行動しかしてないくせに、嘘みたいな頻度でからまれてはケンカを繰り返している。
おふくろさんには心配をかけたくないのか、ケガをするたびに「手当てしてくれ」と言わんばかりに俺の部屋に来るもんだから、幼馴染のよしみで世話をし続けて今日にいたるわけだが。
結果、包帯の巻き方なんかもはやプロだと自負している。ただ、消毒薬の減りが早すぎるのはいただけない。俺の少ない小遣いには結構なダメージだ。
自腹で手当てしてやっているというのに、このアホときたら反省の色もなく、速攻で反論してきやがるからタチが悪い。
「オレのせいじゃねぇだろ。目があったくらいで挑んでくるバカが多過ぎるのが悪い」
いや……それはしょうがないだろう……。
ふて腐れて唇をへの字に曲げている目の前のアホ……幼馴染の譲を、思わず呆れ加減のジト目で見上げてしまった。
身長190センチを越える厳つい巨体。ギラギラした三白眼。近視ゆえの深い眉間のシワ。漂う不機嫌な雰囲気。
そりゃあ血気盛んな不良・チンピラの皆さんが、目があって素通りさせてくれる訳がないだろうに。
「お前……自分の見た目を考えろよ」
「あ"あ"!!!?」
凄まれても怖くねぇし。
ガキの頃から一緒な上に、見た目はこうでも強さはソコソコだって知ってるしな。
手当してくれって言う割には尊大な態度のコイツに、ゲンコツくらわせたことも一度や二度じゃない。
「オレだって好きでこんなガタイと顔じゃねぇわ!」
目の前のアホ……譲が、鬼の形相で俺の腹に強烈なグーパンチを入れた瞬間。
轟音とともに世界が光で包まれた。
***
目を開けたら譲のヨレヨレのズボンが、イキナリ白くて華奢な生脚になっていた。
不審に思って目を上げると、ヒラヒラしたミニスカートから伸びた見事な脚線美。
キュッとしまった腰、視界を遮る立派な胸……全体的に細身な印象ながら、出る所はしっかりと出ているナイスボディが。
おっと。いやいや、別に注視した訳じゃない。
譲のアホに腹パン入れられたせいで、体をくの字に折ってたもんだから、視線が下から上にいっただけで他意はないぞ、断じて!
誰にだかわからない言い訳をしていたら、可愛いらしい声で詰問された。
「だ、誰だ、お前! 」
華奢で儚げな美少女が、大きな目をさらに見開いて、驚愕の表情で俺を見つめている。