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Vivid World〜彩られた世界〜  作者: 竜音(ノンイン)
鎌斬士の少女・サクヤ編
3/30

2.裏切り



 ガレリア近くの洞窟、この洞窟のB3Fは複雑な構造ではない。

 いや、もはや構造と言うよりはただの一直線の穴と言った方が正しいだろう。

 そして穴の奥は少し広い部屋になっているのだ。



「あれ?」

「どうかしたのかい?」



 部屋に入りサクヤは首をかしげる。

 そんなサクヤの姿にユウは部屋の中を覗き尋ねた。



「えっと……冒険者がたくさんいます」

「みたいだね。何かおかしいかい?」



 部屋の中にはおおよそ30人ほどの冒険者がいた。

 あまりにも冒険者の人数が多かったのでサクヤは疑問を抱いている。

 確かに、この洞窟は初心者の町、ガレリアの近くにあるもの。

 故に冒険者が何人かいてもおかしくはない。

 しかし、この人数は異常だ。



「あ、リーダー。ちーっす」



 部屋に入ってきた2人に気がついたのか、中にいた冒険者の1人がユウに向かって声をかけてきた。

 言葉の内容からしてユウは何かのグループのリーダーでかなり親しいらしい。



「お? そいつが今回のターゲットですかい?」

「ああ、丁寧にもてなしてやってくれ」

「え、ユウ……さん?」



 ユウが頷くと冒険者たちは一斉にサクヤを見てニヤニヤと笑みを浮かべ始めた。

 その光景に薄気味悪さを感じサクヤは後ずさる。

 しかし、いつの間にか後ろに立っていたユウによってそれ以上下がることはできない。



「知ってるかな? この世界でも性交はできるんだよ」

「え……、きゃあぁあぁぁあ?!」



──ビリィイッ!


 サクヤの耳元で呟きながらユウはサクヤの衣服を破り捨てた。

 突然のユウの豹変にサクヤは唖然とし、一瞬呆けてから悲鳴をあげる。

 慌ててあらわになってしまった胸を隠そうとするがユウに腕を掴まれてしまい隠すことができない。



「いや、いやいやぁ……」

「へへへ、良いねぇその反応」



 涙を浮かべながら逃れようとするサクヤの姿に冒険者たちは醜い笑みを浮かべる。

 中には衣服を脱ぎ捨てて裸になっている者さえいた。

 一歩、また一歩と冒険者たちはサクヤに近づいていく。



「ムダムダ、ここは初心者向けの洞窟。ここに来る冒険者なんて俺たちよりも圧倒的に弱い」

「いや……いやぁああぁあぁぁああ!!」



 ユウの言葉にサクヤの表情は絶望に染まる。

 助けが期待できないこと。

 仮に冒険者が来ても勝てる可能性が薄いこと。

 その事がさらにサクヤの絶望に拍車をかけている。


──コツコツコツ……



「ああん?」

「足音? ちっ、おい、見てこい」



 不意に洞窟内に足音が響き、ユウは舌打ちをする。

 冒険者の1人はユウの命令にしたがって部屋の外に向かった。



「さて、それじゃあ続きをしますか」

「ひぃ!」



 そう言ってユウはサクヤの残りの衣服に手をかけ、一気に破り捨てようと……


──ツンツン


 ……する直前に肩をつつかれユウは動きを止めた。



「あ? んだよ、いいとこなんだから邪魔するんじゃねえよ」



 肩をつつかれユウは後ろを見ずに答える。

 そして改めて衣服を破り捨てようとするが……


──ツンツン



「聞こえてねえのか! 邪魔するんじゃねえよ!」



 再び肩をつつかれユウは怒鳴りながら振り返る。

 ユウが振り返った先には、黒の衣服に身を包んだ男性が立っていた。

 年齢は18、9あたりか。



「んだよ、ガキじゃねえか。さっさと帰りやがれ」

「い、いや……、助けて……」

「…………」



 睨み付けながら男性にユウは言うが、男性はまったく気にした様子もない。



「聞いてやがるのか? ああ、俺は寛大だから教えてやるよ。俺は〝花の戦姫〟の弟子なんだ。(PK)されたくなかったら帰れ」

「………………はぁ、くだらねぇ」



 ユウの言葉に男性は短く溜め息を吐き呟く。

 男性の表情は果てしなくめんどくさそうである。



「はあ? なにこいつ。〝花の戦姫〟を知らねえのか? まぁ良い、さっさと終わらせてお楽しみといきま……」



──ドスゥッ……


 何かが突き刺さる音と共にユウの言葉が途切れた。

 いきなりユウの言葉が途切れたことを不思議に思い、冒険者たちの視線がユウに集まる。

 見ると、ユウの胸部に穴が開いており、血が噴き出していた。

 さらに見れば男性の右腕からは血が垂れており、その手には何か(●●)が握られていた。



「あ──? なん……で、穴が……」

「これで、2人目(●●●)



──グシャアッ!


 そう呟きながら男性は右手に握られたものを握り潰した。

 潰されたソレ(●●)おびただしい量の血を周囲に飛び散らせる。

 ソレ(●●)は人が生きる上で最も大切なもの。

 全身へと血液を送り出し汚れた血液を回収する部位。

 ソレを──心臓を握り潰されたユウの身体はグラリと倒れ、数字の0と1になって消えることになった。



「「「え……?」」」



 絶命し消えたユウの身体を見て冒険者たちは呆ける。

 それもそうだろう自分達のリーダーが気づかぬ内に一撃のもとで(PK)されていたのだから。



「『楔架せつか』……。ん、まぁこの程度の防御力なら容易たやすいか」



 そう言いながら男性は腕を振るって血を払う。

 〝楔架〟、それは単純な突きの技。

 しかし、相手の防御力が自身の攻撃力よりも低い場合、一撃で相手を殺すことができると言う効果も兼ね備えている。

 故にLV差がある敵や、防御力が極端に低い敵にはかなり有効な技なのだ。

 まぁ、ある事情で男性はこの技を滅多に使うことはないが。



「さて、次にいくか」

「くっ、まだ数ならこちらが上だ! 全員でかかるぞ!」



 言いながら男性は周囲の冒険者を見た。

 冒険者たちは一瞬だけ怯むも武器を構えて男性を囲んでいく。

 それを見ながら男性は何も言わずに防具を取り出しサクヤの肩にかけた。



「え──」

「邪魔だから後ろにいろ」



 驚き尋ねようとするサクヤの言葉を遮り男性は一歩前に出た。



「ただのPKなら相手にしなかったんだがなぁ……」



 そう言いながら男性は構える。

 直後、男性の身体から黒色の湯気のようなものが立ち上がっていった。










・楔架

〝格闘士〟の〝武技〟。

相手に向けて突きを放つ。

自分の攻撃力より相手の防御力が低い場合は即死攻撃になる。




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