表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Vivid World〜彩られた世界〜  作者: 竜音(ノンイン)
鎌斬士の少女・サクヤ編
2/30

1.始まりの町



《Stand_By──》

《The_Player_Name:■■■■──》

《The_Distinction_Of_Sex:■■■──》

《An_Occupation:■■■■──》

《A_Decision_An_Individual_Information──》

《──Starting》



──────────



────────



──────



────



────???



──チチチチ、チュンチュン……


 のどかな町並み。

 そこは周囲を広い草原に囲まれた町。

 突如、町の中心に光が現れ、中から1人の少女が現れた。

 その格好は少しばかりみすぼらしく、大鎌を背負っている。

 年齢は17、8と言ったところか。



「ここは……」

「『ガレリア』へようこそ。ここは冒険者になりたての人が冒険の基礎準備をする町だよ」



 辺りを見回す少女の近くに立っていたらしい男性が答える。

 いきなり話しかけられたことに驚きつつも少女は男性を見た。



「えっと……」

「ああ、いきなりごめんね? 俺の名前はユウ。見ての通り『剣士』さ」

「あ、私はサクヤです。職業は『鎌斬士』です」



 困惑している少女──サクヤに、男性──ユウは腰に差していた剣を見せながら職業を明かす。

 その動作にサクヤはようやくユウが『町民(NPC)』ではなく冒険者プレイヤーだと言うことに気がついた。



「ユウさんはどうしてここに?」

「ん〜……まぁ、趣味のようなものかな。初心者の戦闘サポートなんかをやっているんだ。ここ、ガレリアは初期ログイン地点だからね」



 サクヤの問いにユウは笑みを浮かべながら答える。

 ユウの答えを聞いて納得したのかサクヤはしきりに頷いていた。



「ちなみに俺。あの有名な『花の戦姫(ブルーヴァルキュルム)』の弟子なんだ」

「本当ですか?!」



 ユウが言うとサクヤは再び驚き、詰め寄った。

 〝花の戦姫(ブルーヴァルキュルム)〟、この(Vivid_)世界(World)にいる冒険者ならば知らないものはいないと称される冒険者の1人だ。

 戦う姿は美しく、戦闘中は花弁が舞うことからこの通り名が付いたらしい。

 そんな大物の弟子となれば反応しない人間はいないだろう。



「本当だよ。そうだな、まずは草原に出て戦い方に慣れてみない?」

「分かりました。お願いします!」



 そして2人は町の外に向かって歩き出した。

 その後を追う1人の人影に気づかずに……



「〝花の戦姫〟の弟子? ……ふむ、ついでに見ておくか」



   ‡   †   ‡



────草原



 2人が草原に着くと、何やら半透明でゼリー状の物体がゆっくりと徘徊していた。

 よく見ればその物体の中心には青色の球体がある。



「なんですかあれ?」

「ああ、あれは『スライム』だよ。まぁ、RPGではテンプレだね。弱点はあの中心にある球体なんだ」



 ゼリー状の物体──スライムを指差しながらサクヤが尋ねると、ユウは剣を抜いて答えた。

 そしてユウは素早くスライムに近づき剣を振り下ろす。

 剣は真っ直ぐにスライムの中心にある球体を斬り裂き地面に突き刺さる。

 するとスライムは一瞬だけビクリと揺れ、氷が溶けるように消滅していった。



「簡単だろ? たまにアイテムを落とすこともあるからやってみなよ」

「はい!」



 頷いてサクヤは背負っていた大鎌を手に取りスライムへと向かっていった。



「ふ〜ん、あっちは初心者か。カモだな」



 そんな光景を離れた位置で見ていた人影は、スライムを足で踏み潰しながら呟いていた。



──────────



────────



──────



────



────1時間後・草原



「さて、だいぶ戦いには慣れたかな?」

「はい! それにアイテムもこんなに!」



 言いながらサクヤはいくつもアイテムを取り出す。

 それは全て瓶に入った青い液体だった。

 液体の名は『ブルーポーション』。

 飲むか被るかをすればHPを50回復できるアイテムで、LV1の人間であれば最大HPの半分は回復できる。

 この1時間で2人が狩ったスライムの数はおおよそ70。

 1時間でこれだけのスライムを狩れたのはひとえにサクヤが〝鎌斬士〟だったことがあげられる。

 〝鎌斬士〟の武器は身の丈もあるその大鎌。

 故に攻撃の速度は少し遅いが、広い攻撃範囲を持っているのだ。

 ちなみに、その間にサクヤはLVが3上がっており、LV4になっていた。

 それに合わせて〝鎌斬士〟の習熟LVもLV1からLV3になって新しい『武技アーツ』も習得している。



「それじゃあ近くにある洞窟に行ってみようか。スライムの他にもモンスターが色々と出てくるからLV上げにはちょうど良いはずだよ」

「分かりました!」



 そして2人は武器を納めて歩き始めた。

 向かうのはガレリアの近くにある洞窟だ。



   ‡   †   ‡



────洞窟



「ここが、洞窟ですか」

「ああ。特に名前もついてない最下級のダンジョンだよ。階層は3でボスもなし。だから初心者にはうってつけなんだ」



 目の前にポッカリと口を開く洞窟を見ながら2人は会話をする。

 ちなみにここに来るまでにさらにスライムを狩っていたりもする。

 そして2人は松明を手に持ち洞窟へと入っていった。



「薄暗いですね……」

「まぁ、洞窟だからね。……来たよ」



 ユウを先頭に2人は洞窟内を探索する。

 不意にユウが歩みを止めて前方を指差した。

 すると、前方の曲がり角から棍棒を持った緑色の体皮のモンスターが現れた。



「あれは『ゴブリン』だよ。1匹いたら30匹はいると考えた方がいいね」

「ちょ?!」



 笑いながら言うユウの言葉を聞き、サクヤは慌てて大鎌に手を伸ばした。

 すると緑色の体皮のモンスター──ゴブリンは2人に気がついたのか棍棒を振り上げ声を上げた。



「ギャギャギャギャ!」

「き、来ましたよ?!」

「大丈夫だよ。この程度なら……」


────ザンッ!


「ギャインッ……」

「……一撃だからさ」



 いつの間に剣を抜いていたのか……

 いつの間にゴブリンの首を斬り飛ばしていたのか……

 サクヤがその事実に気づいたときにはすでにゴブリンは光の粒子となって消滅していた。



「み、見えなかった……」

「そりゃあLVに差があるからさ。それに俺は素早さが高いからね」



 ユウの早さにサクヤは唖然とする。

 ちなみにこの世界の冒険者のステータスは体力(HP)魔力(MP)攻撃力(ATK)防御力(DEF)素早さ(SPD)(LUK)の6つからなっている。

 そしてユウはこの5つのステータスの中で素早さが最も高いらしい。



「さ、危なくなったら手を貸すから次に行こう」

「お、お願いします!」



 そして2人は洞窟の奥へと向かって進んでいった。



   ‡   †   ‡



────洞窟・B3F



「ここが最後の階層だね」

「なん……で、平然と……して……るんですか……」



 平然と言うユウにサクヤは息も絶え絶えで尋ねた。

 なぜサクヤの息が絶え絶えなのかと言うと、この階層に降りる直前の部屋がゴブリンの巣で、戦いながら逃げて来たからである。



「まぁ、あれくらいは日常茶飯事だからね」

「嫌な……日常……ですね……。ふぅ」



 会話をしながらも落ち着いてきたのかサクヤは一息をついた。

 そんなサクヤの様子にユウは苦笑を浮かべる。



「さて、それじゃあこの階層をちゃちゃっと探索しちゃおうか!」

「そうですね」



 そう言ってサクヤは手を上げ、歩き始めた。

 それを見て笑みを浮かべながらユウは後を追った。







・Vivid World

ヘッドギア型のゲームを頭に着けることによって遊ぶ「VRMMORPG」仮想現実多人数同時参加型オンラインRPG。

世界中にプレイヤーが存在している。

ゲーム1台につきプレイヤーは1人となり、他人がゲームを起動することはできない。



・ガレリア

〝Vivid World〟に始めてログインしたときに着く町。

初心者用に手軽な武器屋や防具屋、道具屋などが存在している。

建っている家の形式は木造建築でいわゆるロッジ。

また駄菓子屋というものも存在しているがあまり知られていない。



町民(NPC)

Non_Player_Characterの略称。

そのままの意味で操作する人間のいないキャラクター。

それぞれが独立して動くように設定されているため話した程度では分かり難い。

基本的に武器屋、防具屋、道具屋、宿屋の店員などはNPC。

またクエストやイベントのヒントを出すためのNPCも存在している。



・剣士

〝Vivid World〟での職業の1つ。

文字通り剣を扱う職業。

盾を装備する者もいる。

ステータスのバランスが良いのも良いのも特徴。



・鎌斬士

〝Vivid World〟での職業の1つ。

文字通り大鎌を扱う職業。

攻撃の速度は少し遅いが、広い攻撃範囲を持っている。

また全職業の中でもっとも即死系攻撃を覚えるのも特徴。



武技アーツ

それぞれの職業が修得していく物理系の技の総称。

職業によって技は様々。

職業を変更した場合、〝武技〟はなくなる。

ただし、もとの職業に戻った場合は修得していた〝武技〟まで戻る。



花の戦姫(ブルーヴァルキュルム)

〝Vivid World〟の冒険者で知らない者はいないと称される冒険者の1人。

戦う姿が美しく、戦闘中は花弁が舞うことからこの通り名が付いた。



・スライム

モンスターの1匹。

RPG系のゲームではもはや雑魚の代名詞。

半透明な青色のゼリーのような身体をしており移動スピードは遅い。

中心にある青い球体が弱点。

攻撃パターンは体当たりのみ。

倒すと〝ブルーポーション〟を落とすことがある。



・ゴブリン

モンスターの1匹。

棍棒を持った緑色の体皮もしており移動スピードはスライムより速い程度。

弱点は人間と同じく心臓。

攻撃パターンは棍棒を使っての攻撃のみ。

素早く倒さなければどんどん仲間を呼ぶ。



・ブルーポーション

瓶に入った青い液体。

飲むか被るかをすればHPを50回復できるアイテム。

LV1の冒険者であれば最大HPの半分は回復できるので序盤は重宝される。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ