11.魔法の妖精姫
────アステア
「ユウヤ、久しぶりだね」
「ん? おお、葵か」
ウィザード・グレイヴから町に戻ってきたユウヤに1人の冒険者が話しかけてきた。
冒険者の容姿は、全体的に細く、どこかか弱そうで、腰の辺りまでの長さの長い髪が特徴的だ。
どうやらこの冒険者の名前は葵と言うらしく、ユウヤの知り合いらしい。
──ガキィィイイインッ!
突如、破砕音が起こり、周囲に氷の破片が飛び散った。
見れば、ユウヤが何かを振り抜いた体勢で油断なく葵を見ている。
どうやら葵がユウヤに向けて何かをしたらしい。
いきなりの音にルリ、リル、クロセルの3人は眼をパチクリさせている。
「相変わらず早いね。流石は僕の相棒」
「〝元〟相棒だろ。いきなり〝フリズ〟を撃ち出すな」
「それでもユウヤなら対応できると信じてたからね」
「ったく。お前も相変わらずだな」
どうやら先ほどの破砕音は葵が放った〝フリズ〟をユウヤが砕いた音らしい。
言うだけならば簡単なことかもしれないが、葵は〝魔法〟を無詠唱で、ユウヤはその無詠唱の〝魔法〟に対して反応したのだ。
どちらも普通のレベルではないと認識するには充分すぎるだろう。
「そう言えば〝格闘士〟なのにソレ使えるんだね?」
「まあな。〝魔法〟を使えるようになる装備が手に入ったからな。やっぱ手に馴染むよ」
「ユウヤはいつもソレで戦ってたからね」
ユウヤの右手を見ながら葵は不思議そうに問う。
それに対してユウヤは頷き、何かを振る動作をした。
しかし、ユウヤの右手には何も握られているようには見られず、ただユウヤが右手を動かしているだけのように思える。
「〝魔法の妖精姫〟、どうしてここにいる……」
「ああ、リル、おかえり。ユウヤが一緒にいるとはいえ心配だったからね。お迎えだよ」
どうやら疑問が限界に来たらしくリルが葵に話しかけた。
リルの口から〝魔法の妖精姫〟の名が出たことから分かるように、葵は通り名持ちである。
そのことから考えれば、先ほどの無詠唱での〝魔法〟も不思議ではない。
「のう、ユウヤ。疑問であったのじゃが、そちの〝魔法〟を武器にするのはどういったことなのじゃ? 拙は聞いたことがないのじゃが」
「ああ、説明してなかったか。あれは俺の『希少技能』だ。名称は『魔装神器』。自身の発動した〝魔法〟に触れながら〝マテリアライズ〟と言うと武器になって、〝バースト〟と言うと〝魔法〟に戻るんだ」
「なるほどのう。……んむ? しかし〝魔法〟が使えるのは〝魔導師〟か『治療師』のみではなかったかの?」
ユウヤの説明にクロセルは腕を組みながらしきりに頷く。
〝希少技能〟は希少とついているだけあって特定の条件をクリアしなくては習得できない。
その条件は様々で〝ダメージを一切受けずに同じLVのモンスターを10体倒す〟や〝同じエリアで回復をせずにLVを10上げる〟等々、難しいものから容易なものもある。
「その2つに限定されているわけではないがな。他にも〝魔法〟を扱う職業は少ないながらもある」
「そういえば私は冒険者が巨大なモンスターみたいな姿に変わるのを見たって噂を聞いたことがあるよ?」
「ん、アレのことか」
「知ってるの?」
ヒョコと現れたルリの言葉にユウヤは少し考えるような表情を浮かべて呟いた。
どうやらルリの言う、冒険者が巨大なモンスターみたいな姿に変わると言う噂について何かを知っているらしい。
そんなユウヤの呟きにルリは首をかしげた。
「まあな。『限定』のことだろ」
「〝限定〟?」
「なんじゃそれは?」
「〝限定〟はLV150以上の冒険者があるモンスターを倒すことで習得できる技のことだ。ただし、そのモンスターは1人で戦って倒さなくちゃならない。しかも基本的にはボスよりも強いから並大抵のLVなら負けるだろうな」
「へ〜」
説明を聞きルリは頷く。
と、不意にクロセルが不満そうにユウヤの腕にしがみついた。
「拙の質問に答えておらぬぞ。何故に〝魔法〟を扱えぬ職業の〝格闘士〟のそちが〝魔法〟を武器とする〝希少技能〟を習得しているのじゃ」
「…………はぁ。答えなきゃ、ダメか?」
「うむ」
ユウヤの腕を逃がすまいと抱き締めながらクロセルは頷く。
そんなクロセルにユウヤは短く息を吐き、諦めたように口を開いた。
「俺が……、元々は〝魔導師〟だったからだ」
「なんじゃ、そうじゃったのか。どうやらあまり良い思い出がないようじゃの?」
「ああ、まあな」
「そうか。なら拙はもう聞かぬよ」
ユウヤの様子からクロセルは察し、ユウヤを優しく抱き締める。
そんなクロセルの頭をユウヤは撫でていた。
「さて、依頼も終わったし。俺はもう行くぞ」
「うん。今回は2人のことを守ってくれてありがとう。また何かあったら依頼するからよろしく」
「世話になった……」
「ユウヤ、ありがとう♪」
クロセルの頭を撫でるのを止め、ユウヤはそう言って歩き出す。
そんな彼の背に向けて3人はそれぞれ言葉を投げ掛ける。
3人の言葉にユウヤは振り返らずに手を振って答え、歩いていく。
「ついてくるのか」
「当たり前じゃ。拙はそちを婿にするのじゃからな」
隣を歩くクロセルにユウヤは尋ねる。
それに対してクロセルはユウヤを見上げながら答えた。
そしてクロセルはユウヤの前に移動して歩みを止める。
「ユウヤ、言っておくが、拙は一途でしつこいのじゃ。覚悟することよの♪」
「……そうかい。なら、頑張りな」
ユウヤは、笑顔で宣言するクロセルの頭に手を置き、クシャと軽く髪の毛を乱すように撫で、再び歩き出した。
その後をクロセルは楽しそうに追うのだった。
双子の魔導師・ルリ&リル編-Fin
・希少技能
特定の条件をクリアすると習得することができる〝技能〟。
習得条件は難しいものから容易なものまで様々。
・魔装神器
〝魔導師〟の〝希少技能〟。
発動した〝魔法〟に発動者が触れながら「マテリアライズ」と言うことで発動。
触れている〝魔法〟を武器の形状にする。
同じ属性の〝魔法〟を複数発動していた場合、集束させて武器の威力を上げることができる。
「バースト」と言うことで武器から〝魔法〟に戻る。
取得条件は〝魔導師〟が〝魔法〟を使わずに武器でモンスターを50体倒す。
〝魔導師〟自体の攻撃力が低いので使用者は少ない。
・治療師
〝Vivid World〟での職業の1つ。
文字通り回復を扱う職業。
HPを回復するほか、状態異常を治す〝魔法〟を得意とするのが特徴。
回復系統のアイテムを使用すると効果が上昇する。
・限定
〝色彩獣〟を1人で倒すことによって習得することができる技。
LV150以上の冒険者が習得できる。
〝色彩獣〟を倒すことによって〝色彩獣〟に似た姿の〝限定〟を習得する。
習得できる〝限定〟は1つだけで、個別にLVが存在する。
発動した場合、発動者の姿は巨大な生き物に変化する。
生き物の種類は様々。
LVが上がるほどに〝限定〟は強くなる。




