チョコレートアンサンブル
高層ビルの屋上に音楽を聞きながら街を見下ろすのは14歳の少女パルだった。その側にはデジタル無線機が置いてあり、その無線機から音が入る。
『……ザッ……、こちらランド60………、ターゲットを発見した………、指示があるまで………、待機しろ……ガッチャ……』
パルは耳につけているヘッドホンを外し、遠くの空にいる鳥の群れを眺めていた。
するとまた無線機から音が入る。
『……ザッ……、こちらランド60……、ターゲットがまもなくそちらを通過する………、パル……幸運を祈る………』
そして耳をすませば聞こえてくる車のエンジン音。砂ぼこりを舞い上げながら車は段々と加速し、高層ビルに近寄る手前でパルは飛び降りた。
助手席の人狼が前のめりになり、落ちてくるパルを鼻息を上げながら指を刺し悲鳴をあげていた。
運転席の人狼のリーダーは、さらにアクセル全開にしてスピードメーターをMAXにさせた。
それに負けじとパルは腕に装着してある加速装置を起動させてスピードを上げた。
お互いの意地と意地のぶつかり合いのまま、パルは車のボンネットと目掛けて拳を振り下ろした、拳は車のボンネットに衝撃を与えた影響で車は跳ね上がり、車のトランクにぎっしりと詰め込まれていたカカオ豆が外に飛び出で地面に散らばる。
運転席の人狼は目を回す中、そこに遅れてやって来た無線機の声の60 で、どこかに行こうとするパルを60が呼び止める。
パルは60の方を向くと、口元にはチョコレートが咥えられていた。