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第2章・3節:鐘の音の記憶
「霧の中で鐘の音を聞いた——」
リーナの言葉が頭の中で何度も反響する。
氷晶山脈の霧、霜糖晶の異常、そして鐘の音。これは偶然ではない。
「リアムさん、どうします?」
クラリスが不安そうに尋ねる。
「まずは情報を集めよう。霧の塔の噂も含めてな」
「じゃあ、私は図書館で資料を探してみます!」
「頼む。俺はギルドに顔を出してみる」
「私も手伝いますよ!」
リーナがスプーンを置いて立ち上がった。
「氷晶山脈方面の患者はまだ増えてるし、医務室でも何か聞き込みしてみます」
「助かる。何かあったら教えてくれ」
それぞれが動き出す中、俺の胸にひとつの記憶が蘇っていた。
——4年前、氷晶山脈で迷った夜。
濃い霧の中、仲間たちと肩を寄せ合っていた時、確かに聞いたあの音——。
カァァン……カァァン……
「鐘の音……あれも、ただの幻覚じゃなかったのか」