第7章・1節:学園食堂 大掃除の日
収穫祭と焔牛調達という怒涛の日々が過ぎ、ようやく学園食堂にも平穏が戻ってきた。
——そう、「平穏」が戻ってきたはずなのだが。
「おい、そろそろやるぞ」
ガルドさんが腕を組み、厨房をぐるりと見回した。
俺たちが全力で駆け抜けた数週間の名残として、厨房の隅々に「頑張った証」が散らばっている。
「棚の奥に食材が詰まりすぎてるぞ!」
「まな板の裏に、なんか乾燥したソースが……」
「えっ、こ、これは……!? いつのジャガイモ!?」
クラリスとリーナの叫び声が厨房に響く。
「やるなら、徹底的にやるぞ!」
こうして、学食の「大掃除作戦」が始まった——。
■ 厨房掃除のカオスな戦場
「ちょっとリアムさん! その鍋、いつ使いました!?」
「うーん……焔牛のスープを作ったとき……だから、たぶん三日前?」
「ダメですよ! ちゃんと洗いきれてません!」
リーナが半泣きで鍋をゴシゴシこする。
一方、クラリスは巨大な収納棚を整理中。
「ええっと、このスパイスは——うわっ!? 何この粉!」
「クラリス、それ魔導香辛料だから、雑に扱うと——」
ボフッ!!!
粉が宙に舞い、周囲にスパイシーな香りが炸裂する。
「ひぃぃ! 目がぁぁ!!」
「お前なぁ……!」
カオスな状態の厨房を見渡しながら、ガルドさんは「な?」という顔で頷いた。
「だから言っただろ? たまには徹底的にやらねぇと」
「……おっしゃる通りです……」
■ 発掘された謎の箱
厨房の奥を片付けていると、クラリスが埃まみれの木箱を発見した。
「これ……何ですか?」
「ん? 俺も見覚えがないな」
木箱には古い文字で「特別保管」と書かれている。
ガルドさんが箱を開けると、中から出てきたのは——
「……カ、カボチャ?」
「えっ、なんでこんなとこに!?」
しかも、箱の中には形状の異なる複数のカボチャが入っていた。
「これ……全部、宵闇カボチャじゃないですか!?」
リーナが驚いた声を上げた。
「宵闇カボチャ……?」
俺は聞き覚えのない名前に首をかしげると、リーナが説明してくれた。
「ええっと、宵闇カボチャは、夜の魔力を蓄積する特殊な品種なんです。
通常のカボチャよりも甘みが強く、加熱すると黒蜜のような香りがするって聞いたことがあります」
「……それは、スイーツに最適じゃねぇか?」
「ええ。でも、普通は手に入らないはず……これ、いつのものなんでしょう?」
「それが問題だな」
俺たちは箱の中身を改めて確認した。
箱の中に入っていた宵闇カボチャの種類と数
・五芒星型が2個
・六芒星型が1個
・果皮に渦巻き模様の通常型が3個
「こんなに種類があるなんて……!」
クラリスが感嘆の声を漏らす。
「てか、これ、いつ仕入れたんですか?」
「わからん……記録にもないし、俺が知る限りでは使った覚えもねぇ」
「そんなのアリなんですか!?」
「……でも、箱には“特別保管”って書かれてましたよね?」
「うむ。となると、誰かが“後で使うつもりで”ここに置いたんだろうな」
「でも、こんな珍しいカボチャが忘れ去られるなんて……」
俺たちは顔を見合わせた。
「……専門家に確認するか」
ガルドさんの言葉に、全員が頷く。
「なら、植物研究室の先生に相談してみましょう!」
「それがいいな。このカボチャ、本当に食べられるのかも含めて、しっかり調べてもらおう」
こうして、突如発掘された「謎の宵闇カボチャ」が、新たな研究対象として植物研究室へと運ばれることになった——。




