3/44
第1章・3節:薬学研究室と冷たい甘さ
完成した〈霜糖晶パルフェ〉をクラリスと共に研究室に運んだ。
白衣を着た助手たちは疲れ切った表情だったが、冷たいパルフェを口に運んだ瞬間、驚いた顔になった。
「これ……冷たくて、甘くて、頭がすっきりする!」
「なんだか、体の奥から力が湧いてくる感じ……」
魔法薬学の教師ミレイアが微笑んだ。
「ありがとう、リアム君。これで研究がまた進むよ」
「霜糖晶が効いたみたいで良かったです。でも……」
「ん?」
「最近、霜糖晶が採れなくなってきてるらしいです。研究材料、大丈夫ですか?」
「……それは初耳だね。霜糖晶は魔力回復薬の重要素材なのに」
ミレイア先生が険しい顔をする。
「学園長にも話してみるよ。何かおかしいね……」
魔力の枯渇、消えつつある霜糖晶、そしてガルドさんの“北部特別任務”。
厨房の仕事をこなしながら、頭の片隅でその言葉が引っかかっていた。
——何か、大きな変化が近づいている。
だが、その時はまだ、それが「学園を揺るがす事件」の始まりになるとは思いもしなかった。