3話 再会
教室に戻って俺は自分の席に座ろうとすると、既に誰かが座っていた。
まるで自分の席のように机の上にお弁当を広げ、美味しそうにご飯を食べている。俺の存在に気付いてチラッとこちらを見て唇を尖らせた。
「食堂に行ってたの? お昼はもう食べた?」
「食べた……っていうか、何で俺の席に座ってんだよ」
若宮の席は俺の隣、しかも友達と食べているわけでもなく一人。わざわざ俺の席で食べなくてもいいはずだ。
「いいじゃん、別にどこで食べようと。それより色々と復讐方法を考えてきたんだけど、聞く?」
「聞かない」
俺はため息を吐きながら若宮の席に腰を下ろした。
図書室にでも行って時間潰すことも考えていると、若宮がお弁当をパクパクともの凄い勢いで食べ始めた。
「水崎くん、今時間あるでしょ」
そりゃ陰キャぼっちですから、学校の休み時間に予定など存在しない。しかしだ、若宮の提案に乗るのはなんだか嫌な予感がする。
「……ない。俺は忙しい」
「じゃあ私は水崎くんの元カノに会ってこようかな」
「は?」
「復讐相手の調査だよ。どんなやり方が一番効果的か、会ってみないとわからないからね」
「ちょっと待て、俺は復讐なんて別に」
確かに断ったはずだが、何を勝手にやろうとしやがる。
若宮の言葉を否定しようとすると、彼女は腰に手を当てて胸を張って答えた。
「任せて、私一人でも復讐してみせるから」
「お前一人はそれ、ただの八つ当たりになるぞ」
つーか、こいつ地味女のクセにパワープレイヤーが過ぎるぞ。もっと知性溢れる言動行動はとれないのか。
「ちなみに、何の話をするつもりなんだ」
「ふふん、内緒。……でも安心して、水崎くんが心配しているようなことは話すつもりないから」
全く信用ならねえ。
若宮が立ち上がって教室を出ようとする。
その行く手を阻むようにして俺は若宮の正面に回り込んで立ちふさがった。
「ちょっと待て、俺も後ろで様子を見る」
「……? 一緒に来てくれてもいいんだよ」
「アホか、あの女と会話するだけでも吐き気がする。お前が変なことを吹き込まないか監視するだけだ」
「わかった、いいよ」
俺は廊下の壁に背中を預けてじっと立って待っている。
若宮が教室の中を覗き込むようにして元カノを探しているが、教室に居なそうな気配。
ぼーっと待っていると目の前を歩いた女の子がポケットからスマホを落とした。俺の足元に転がり、それを拾って渡そうとする。
「……陽太?」
顔を見て俺は頭の中が真っ白になった。
少し嬉しそうなでもどこか悲し気な彼女の表情は何かを訴えているように見えた。
俺は何も言わずにスマホを手渡し、その場から離れようとする。
「ちょっと待って!」
ガッと手首を掴まれて振り返る。
「私、あのね!」
「あ、いました。夏希さーん」
その声が聞こえた瞬間、手首は軽くなり俺は彼女から顔を逸らした。
後ろで元カノと若宮が会話を始めたが、気にしないフリをして俺は教室に向かって足を動かす。
……ふざけんな、お前が裏切ったクセに。
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