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捨てられる予定の皇妃ですが、皇帝が前世の推しだと気づいたのでこの状況を楽しみます! 関連話  作者: 池中織奈


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「プレゼントに出来るなら張り切って作らないと」―皇太子視察編⑦―

「ああ。初めて来た」

「そうか。ここの食事は美味しいぞ!」




 その相席の男性は満面の笑みでそういう。本当にこの食堂の食事が好きなのだろう。

 ヴィダディはこんな風になれなれしく話しかけられることはあまりない。だから新鮮な気持ちになっている。

 下手に権力を振りかざしている王侯貴族ならばこういう風に話しかけられれば逆上するだろう。まぁ、まずそういう人間性だったならばヴィダディはこんな場所には来ないだろう。

 食事を運んできたのは若い給仕の女性だった。

 魔法具を身に着けているとはいえ、ヴィダディは目立つのでぽーっとした顔で見られている。





「坊ちゃん、見惚れられてるぞ。いいなぁ。どうするんだ? ナンパでもするか?」

「いや、するわけないだろう」

「かーっ! もてる男の余裕ってやつか?? 羨ましいなぁ」




 そんなことを言いながら、その男性は酔っぱらった様子でがしっとヴィダディの肩に手を置く。

 ひっそりと控えている皇族の影や騎士たちが動こうとしていたが、悪意がないのは分かっているのでヴィダディが視線で止めていた。




「おっさん、ヴィダディはおっさんの想像が出来ないぐらいもてもてだぜ」

「は! おっさん言うな! それにしてもこの坊ちゃんヴィダディっていうのか、ファドス帝国の皇太子と同じ名前じゃねぇか。名前も縁起がいいなぁ」





 ジャダッドが男性に声をかければ、その男性は楽しそうにがはははと笑っている。



 ヴィダディの名は、広まっている。その大国の皇太子にあやかって名前をつけるものは多いのだ。その男性はまさかこの場にいるのがその張本人とは思っていないだろうけれど。



 ヴィダディは届いた食事をとった。

 ふかふかのパン、美味しいスープ、焼き立ての魚。

 それを食べながら、相席の男性と会話を交わしていく。




 その男性はヴィダディが女性から熱い視線を向けられているのは気に食わないというか、うらやましいらしく女性陣が入ってこれないようにヴィダディに絡んでいた。

 まぁ、ヴィダディはそういう男性と会話を交わすことが珍しいことなので特にそれで問題はなかった。



 その相席の男性もヴィダディと話しているうちにヴィダディがよっぽど箱入り息子だと分かったのだろう。楽しそうにこの街のおすすめスポットを教えてくれた。

 食事を取った後、ヴィダディとジャダッドは大衆食堂を後にする。

 朝食を食べ、お腹をいっぱいになった後は街を歩いて回ることにする。





「この街は近くに鉱山があって、装飾品も結構有名なんだ。その加工の工房は見学も出来るらしいから見に行こうぜ。体験とかもできるらしいし」

「ああ」




 先ほど相席をしていた男性も言っていたことなのだが、この街の近くには鉱山がある。その鉱石のとれる鉱山で働く鉱夫も多い。また帝国から国境を越えてすぐにある街なので訪れた人々を楽しませるためにも工房の見学ができるようにしているのだろう。

 皇太子としてヴィダディが工房に向かった場合は、普通の対応はまずされない。皇太子としてかしこまられるので、こういうお忍びの時だからこそ出来ることをさせたいとジャダッドはそれを提案したのだろう。





「装飾品の製作体験で作ったものって持ち帰れるらしいからプレゼントに出来るぞ」



 街中なので、皇妃様という単語はジャダッドは出さなかった。




「プレゼントに出来るなら張り切って作らないと。ジャダッドは誰かにあげるのか?」

「んー、特に予定はねぇな」



 ジャダッドは特に装飾品をあげる相手はいない。作ってとりあえず持ち帰るかとしか考えていない。




 そういう会話をしながらヴィダディとジャダッドは工房に向かった。




 特に混雑していたわけではないので、その工房の見学はすぐに開始できた。

 ヴィダディはこういう工房に訪れるのは初めてのことなので、興味深そうに見ている。

 どんなふうに鉱石を加工し、装飾品にしているのかというのをヴィダディとジャダッドは他の数名の見学者と一緒に見ている。




 そのうちの一人は帝国から用事があってこの国にやってきた者らしい。

 帝国民は皇帝を崇拝し畏怖するものが多いので、その者も例にももれず皇帝信者だったらしい。

 雲の上の人間である皇帝のことを神様か何かという認識のようで、同行者にそのことを語っていた。

 ヴィダディは父親のことがこうして話で聞けるのは楽しかったので聞き耳を立てていた。




 見学を終えた後は、製作体験を行う。

 基本的に何でもそつなくこなすヴィダディは初めての作業だったが、なんなくそれをこなしていた。

 家族へのプレゼントと自分への分ということで、七つ作っていた。




「沢山作るなぁ。誰かにあげるのか?」

「家族に」

「家族思いなのは良いことだな!」




 製作体験の監修をしている工房の職人の一人はそう言って笑った。

 まさかその体験をしているのが帝国の皇太子で、その作られたものが皇帝一家に渡されるとは彼は知らない。



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