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「お忍びデートに行きたいです」―お忍びデート①―

短編直後ぐらい

 マドロールは今日も楽しそうにヴィツィオのことを見つめている。皇妃としてそれなりに忙しく動いているものの、空き時間でヴィツィオのことを見に来るのがマドロールの日課である。

 ヴィツィオ本人からは飽きないのか? などと問いかけられることもあるが、推しを思う存分見ることができる環境に飽きなどくるはずがなかった。



 いつも暇さえあればヴィツィオの傍にいるマドロールを見て城の者たちはほほえまし気に見ている。



(はぁ、ヴィー様は本当に今日も素敵で、尊くて、かっこよくて、やばいわ)



 今日もヴィツィオがかっこよくて、じーっと凝視してしまうマドロールである。ヴィツィオは剣も振るうので、時々鍛錬をしていたりする。本人は身体を鈍らせないためにと言っているが、その様子が本当にかっこよすぎてマドロールはいつも興奮気味である。



「マドロール様は陛下を毎日見ているのに全然飽きる様子ないですよね。いくらかっこよくても飽きたりしないんですか?」

「するはずないわよ! だってヴィー様が生きているってだけでも奇跡なのに。目の前でヴィー様が呼吸をして動いている。それだけでも見ている価値があるもの。それに毎日が同じヴィー様じゃなくて、その時その時でヴィー様は違うのよ。私はそんなヴィー様を永遠にずっと見つめ続けていたいのだもの」



 毎日毎日、ヴィツィオのことを追いかけまわすマドロールに侍女たちも付き合っている。

 すっかりマドロールと侍女たちは仲良くなっている。

 マドロールにとってみれば、ヴィツィオが生きているだけで問題がないらしい。その言動を見ていると侍女たちは「陛下はこれだけマドロール様に愛されていて幸せ者だな」と思ってならない。





「ヴィー様、お疲れ様です! ヴィー様、今日もすごくかっこよかった! 本当に絵画とかにしておきたいレベルです!」



 ヴィツィオが一旦、鍛錬を終えたのを見るとマドロールは真っ先にヴィツィオに駆け寄る。

 ちなみにヴィツィオにしごかれてすっかり伸びきっている騎士たちもいるわけだがマドロールはヴィツィオのことばかり見つめてしまっている。



「マドロール」

「ふふ、ヴィー様、汗かいてますよー」



 そう言いながら汗を拭くマドロール。ちなみにマドロールは推しから流れ出る汗を拭けるとか、役得と思っている。

 にこにことしているマドロールを、ヴィツィオは優しい目で見つめていた。




 その後は、ヴィツィオは汗を流すために風呂へと向かっていった。マドロールはヴィツィオが帰ってくるのを執務室で待ちながら皇妃としての仕事もこなしている。



 帝国の決定権はもちろん皇帝であるヴィツィオが一番上だが、皇妃であるマドロールも二番目に決定権を持つ。マドロールが印を押しても問題がないものは進めたりなど、マドロールもそれなりに忙しくしていた。



(それにしてもああやって汗を流すヴィー様も本当に素敵よね。漫画でもマリアナがヴィー様が鍛錬をしている様子のところに顔を出して……ヴィー様は邪険にしなくて。ヴィー様は嫌だったら完全拒否する人だから、私が汗を拭うのを許してくれているだけでもやばいよね。はぁああ、好き)




 ちなみに大真面目な顔をして仕事をしながら内心はそんな感じである。マドロールは推しと近づけば近づくほどヴィツィオへの愛を募らせていた。



(マリアナが現れてもヴィー様は私のことを愛してくれてそう……。うん、ヴィー様の態度がそれを物語っているもん。まぁ、ヴィー様が心変わりしたとしても今の幸せな思い出だけで私は生きていけるから全然いいけどね! ヴィー様が私を愛してくれているって事実だけでこうなんか無敵感! 私は猛烈に幸せだから何が起こっても絶対不幸にならないって思えるもん)




 マドロールはいつもそんなことばかり考えているのであった。



(というか、漫画のことで思い出したけれどヴィー様って漫画でマリアナとお忍びデートしていたよね? それで距離が縮むのが本当によくて、あのヴィー様が誰かとお忍びデートしているってだけでもすごくよくて……、私はもう興奮してならなかったもん。……私もヴィー様とお忍びデートしたいなぁ)




 思えばヴィツィオとマドロールは政略結婚で、出会ったときにはもう夫婦であった。なんというか、そういう付き合っている状況のデートとかそういうのは当然記憶にない。



(私もヴィー様とお忍びデートしたい! でも皇帝夫妻がお忍びデートってなかなか無茶ぶり? ヴィー様がいるこの場所にずっといるのは幸せだけど、ヴィー様がおさめている国をもっと見て回ったりとかもしてみたい気もする。でも私皇妃だしなぁ。皇妃様が自由に歩き回るなんて当然できないし……)



 お忍びデートしてみたいと思いつつ、護衛たちが大変じゃないかなどと思考しているマドロール。ただし顔は真面目そうな顔をしている。マドロールは仮にも王族として教育を受けてきたので、普段の様子からはわかりにくいが表情を取り繕うことも当然できるのであった。



 そんなことをマドロールが考えていると、風呂上りのヴィツィオがやってきた。



「マドロール、どうかしたのか?」



 ヴィツィオはマドロールのことをよく見ているからか、マドロールが取り繕っていても割と見抜いていたりもするのであった。



「んー、ちょっと色々考えていただけです」

「何を考えていたんだ?」

「……ちょっと、えっと、だいぶ無理かもしれないんですけど」

「マドロールは俺の嫁だから無理なことはないだろ」

「……警備上無理だとかなら全然、断ってくれていいんですけど。私、お忍びデートに行きたいです」



 マドロールはじーっと見つめてくるヴィツィオに観念してそう告げる。

 




 当然、その願望を口にした後すぐにヴィツィオとマドロールがお忍びデートをする準備が早急に進められたのだった。



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