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「えへへ、ヴィー様、だいすきぃ」

第一子妊娠前ぐらい。

「では、飲みます!」

「……そんなに気合を入れて飲むものか?」

「気合入ります。だって、初のお酒! この世界では十五歳から飲めるって不思議ですよねー。私前世を思い出す前から引きずられていたのか全然飲んでなかったんですよね。はぁ、記念すべき初アルコールをヴィー様と一緒に飲めるなんて幸せ」



 そんな会話を交わすヴィツィオとマドロールの前には、二つのグラスといくつものワインなどのお酒が並んでいる。



 どうしてこんなことになったかといえば、マドロールがそういう類を一切飲んだことがなかったからである。前世の記憶に引きずられていたのか、まったく祖国にいた頃から飲んでいなかったマドロール。

 飲めないよりも飲めたほうがいいし、何より飲んでみたい! そんなことを言ったマドロール。そういうわけで、ヴィツィオと二人で初お酒を飲んでみることにしたわけである。

 マドロールは前世ではお酒の強さは普通であった。しかし今世では身体も違うしどのくらい強いのかまったくわからなかった。




「ヴィー様はお酒強いんですか?」

「酔わない」

「わぁ、いくら飲んでも酔わないタイプとか解釈一致! いや、まぁ、酔いやすいヴィー様も素敵だって思いますけどねー」



 ちなみに漫画の世界ではヴィツィオがお酒を飲む描写はなかったので、こうして転生して初めてマドロールは推しの酒の強さを知ったのである。



(ヴィー様がお酒に強いのはなんかぴったり。それにしてもヴィー様と一緒に寝室でお酒を飲めるなんて幸せ!)



 マドロールは毎日のようにヴィツィオと過ごす日々が幸せすぎてそのように思っている。



「ヴィー様、酔っぱらうとその人の本性とかそういうのが出てくるっていいますからね。私ももしかしたらヴィー様の前ではしたない感じとか、ヴィー様が引く感じになってしまうかも……しれないけど、嫌わないでもらえると嬉しいです!」

「俺がマドロールを嫌うわけがないだろう。どんなマドロールでも問題ない」

「あああぁあああ」



 マドロールは推しの発言にまた奇声を発していた。すっかりマドロールの奇声になれきっているヴィツィオは面白そうにマドロールを見ているだけである。




(ヴィー様がかっこいい。ヴィー様がどんな私でも嫌わないって言ってくれた。ヴィー様、素敵。もう素敵すぎて好みすぎる顔で、そして私のことを特別だっていう声で言ってくれるなんて、ああ、もうやばい)



 マドロールは毎日のようにヴィツィオにときめいて、ヴィツィオが自分を愛してくれていることが幸せでたまらなかった。



 一人ヴィツィオがかっこよすぎて悶えているマドロール。

 そんなマドロールにヴィツィオは声をかける。



「マドロール、飲まないのか?」

「飲みます!!」



 そしてマドロールの選んだ桃のワインをついでくれるヴィツィオ。推しに注いでもらうワインなんてっとマドロールはそれだけで大興奮である。

 グラスに口をつける。



「おいしい!」

「気に入ったか」

「うん。思ったよりも飲みやすいし、おいしいかも。ヴィー様も一緒に飲みましょう。ヴィー様は何が好きです?」

「どれでもいい」

「んー。じゃあ私がヴィー様にぴったりなものを選びますね」



 そう言いながらマドロールはヴィツィオに似合いそうなお酒を何種類かピックアップして飲んでもらう。二人でお酒を飲みながら会話を交わすことが楽しくてマドロールの飲む量も増えていった。ちなみに倍以上飲んでいるヴィツィオは顔色一つ変えてない。

 しかしマドロールはそうやってお酒をどんどん飲んでいたからか、急に酔っぱらっていた。




「ヴィー様だぁ。かっこいいー。肌すべすべー」




 呂律が回らなくなってきたマドロールはそんなことを言いながら暴君皇帝の顔をぺたぺた触っている。ほかの者にこんなことをされたら即座に切り捨てるだろうが、相手がマドロールなのでヴィツィオはされるがままである。

 酔っぱらったまま、じーっとヴィツィオを見るマドロール。




「ヴィー様の、黄色い瞳、すきー。すごく、きれい」

「マドロールの赤い瞳も綺麗だ」

「えへへ、ヴィー様に、ほめられちゃったー」



 マドロールはそう言いながら嬉しそうに笑う。



 そして何を思ったのか、またヴィツィオの顔をのぞき込んでそのまま自分からヴィツィオの唇をふさいだ。

 普段、自分からキスなどあまりしてこないマドロールなのでヴィツィオは驚いた。




「ヴィーさまに、キスしちゃったぁー」



 そう言いながらヴィツィオの身体に自分の身体を預けて、胸元で頭をすりすりする。




「えへへ、ヴィー様、だいすきぃ」



 そんなことを言ったかと思えば、いつのまにか寝息が聞こえてくる。



 酔っぱらってそのまま寝てしまったらしい。自分にぴったりとくっついたまま無防備にすやすや眠っているマドロールにヴィツィオは小さく笑う。

 そしてそのままマドロールをベッドへと運び寝かせるのだった。





 ちなみにだが、翌日のマドロールは酔っぱらった時の記憶があったので「自分からヴィー様にキスしてしまった!」と少しだけ挙動不審になっていた。




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